漁業法QA②(許可漁業制度及び漁業権漁業)

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III許可漁業制度及び漁業権漁業について

漁業者が漁業を営むに当たっては、大きく分けて行政庁からの許可を受けて漁業を営む方法(大臣許可漁業、知事許可漁業)と、行政庁から与えられた一定の水面において漁業を営む権利に基づき漁業を営む方法(漁業権漁業)の二つがあります。

本校では許可漁業及び漁業権漁業の二つの制度について、その具体的内容をQA形式でご説明させて頂きます。

 

III-① 許可漁業制度について

Q22.大臣許可漁業の指定を受けるためには、どのような要件を満たす必要がありますか?

A. 船舶により行う漁業であって、農林水産省令で定める漁業を営もうとする場合には、船舶ごとに、農林水産大臣の許可を受けなければならない(法36条1項)とされており、これが大臣許可漁業と呼ばれる者です。そして、大臣許可漁業は、以下に該当するものが指定されます。

 

(i)漁業調整のため漁業者及びその使用する船舶について制限措置を講ずる必要があること。

(ii)政府間の取り決めが存在すること、漁場の区域が広域にわたることその他の政令で定める事由により当該制限措置を統一して講ずることが適当であると認められる漁業であること。

 

Q23.新たに大臣許可漁業の許可を受けようとする場合で、これから船舶の使用権を取得する予定です。船舶に多額の資本を投下したのちに、大臣許可漁業の許可を受けられず漁業を営めなくなるというリスクを回避したいのですが、どのような手段が考えられるでしょうか?

A. 船舶の使用権を有していない場合、船舶の建造着手や借受などの前に、船舶ごとにあらかじめ起業の認可を受けることができます(法第38条)。

そして、法第39条により、船舶の使用権がない状態の許可申請者にも、船舶の使用権を取得しさえすれば確実に許可を受けられる(法第39条)こととなります。

すなわち、38条、39条により、船舶の使用権が取得できれば許可するという保証が与えられることとなるため、条文上は認可とされていますが、その実質は条件付きの大臣許可漁業の許可ということになります。

 

Q24.どのような場合に大臣許可漁業の許可もしくは起業の認可が認められないことになるのでしょうか?

A. 法第40条1項に定める以下2つの場合には、上記の許可・認可は与えられません。

(i)申請者が適格性を有しない者である場合。

(ii)その申請に係る漁業と同種の漁業の許可の不当な集中に至る恐れがある場合。

そして、上記の適格性を有するものとは、次の(i)から(vi)のいずれにも該当しない者とされています(法第41条1項)。

(i)漁業、または労働に関する法令を遵守せず、かつ引き続き遵守することが見込まれない者。

(ii)暴力団員等であること。

(iii)法人であって、その役員、または政令で定める使用人のうち上記(i)、または(ii)のいずれかに該当する者が存在する場合。

(iv)暴力団員などがその事業活動を支配するものであること。

(v)大臣許可漁業の許可を受けようとする船舶が農林水産大臣の定める基準を満たさないこと。

(vi)その申請に係る要望を的確に営むに足りる生産性を有さず、または有することが見込まれない者であること。

 

Q25.許可に有効期間は定められていますか?

A. 原則5年と定められています(法第46条第1項、漁業の許可及び取り締まり等に関する省令第9条)。しかし、農林水産大臣は水産政策審議会の意見を聞いて、より短い期間を定めることができます(法第46条第2項)。

 

Q26.大臣許可漁業の許可を継続して受けるためには、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか?

A. 次の(i)~(iv)に該当する場合であり、その申請の内容が従前の許可又は起業の認可を受けた内容と同一であるときは、原則として、許可または起業の認可をしなければならないとされています(法第45条)。

(i) 許可を受けた者が、その許可の有効期間の満了日の到来のため、その許可を受けた船舶と同一の船舶について許可を申請した時(同条第1号)。

(ii) 許可を受けた者が、その許可の有効期間中に、その許可を受けた船舶を当該大臣許可漁業に使用することを廃止し、他の船舶について許可又は起業の認可を申請した時(同条第2号)。

(iii) 許可を受けた者が、その許可を受けた船舶が滅失し、又は沈没したため、滅失又は沈没の日から六月以内に他の船舶について許可又は起業の認可を申請した時(同条第3号)。

(iv) 許可を受けた者から、その許可の有効期間中に、許可を受けた船舶を譲り受け、借り受け、その返還を受け、その他相続又は法人の合併若しくは分割以外の事由により当該船舶を使用する権利を取得して等が大臣許可漁業を営もうとする者が、当該船舶について許可又は起業の認可を申請した時(同条第4号)。

 

Q27.許可を受けた者が死亡した場合の権利関係の帰趨について教えて下さい。

A. 法第48条第1項により、相続人が承継します。ただし、承継した相続人は、承継の日から二ヶ月以内に農林水産大臣に届け出る必要があります(同条第2項)。

 

Q28.許可が失効にかかる規定は法に定められていますか?

A. 法第49条に定められた以下の事由に該当する場合には、大臣許可漁業の許可、または起業の認可は効力を失うこととなります。

(i)許可を受けた船舶を当該大臣許可漁業に使用することを廃止したとき(同条第1項第1号)。

(ii)許可又は起業の認可を受けた船舶が滅失し、又は沈没した時(同項第2号)。

(iii)許可を受けた船舶を譲渡し、貸し付け、返還し、その他その船舶を使用する権利を失ったとき(同項第3号)。

 

Q29.大臣許可漁業の許可を受けたものが休業しようとする場合の行政庁への届出義務等は定められていますか?

A. 大臣許可漁業の許可を受けた者が、1漁業時期以上の長期にわたって休業しようとするときは、休業期間を定め、あらかじめ農林水産大臣に届け出なければならないと規定されています(法第50条)。農林水産大臣が、許可漁業の操業状況を把握するために定められた規定です。

 

Q30.休業をした場合でも大臣許可漁業の許可を有した状態が続くのでしょうか?

A. 農林水産大臣は、許可を受けた日から1年、または引き続き2年間、許可を受けた者が休業をした場合には許可を取り消すことができます(漁業法51条1項、漁業の許可及び取締まり等に関する省令第13条)。

 

Q31.行政庁により許可が取り消される場合はありますか?

A. 法第40条第1項第2号又は第41条第1項各号のいずれかに該当することとなった時は、農林水産大臣は許可又は認可を取り消さなければいけません(法第54条第1項)。また、漁業に関する法令違反(第2項第1号)、勧告違反(第2号)の場合は取消しや効力停止を命ずることができます(法第54条2項2号)。

また、法第55条には、漁業調整その他公益上必要があると認めるときは取り消し得ると規定されています。

 

Q32.知事許可漁業とはどのような制度ですか??

A. 法第57条第1項は、大臣許可漁業以外の漁業であって農林水産省令又は規則で定めるものを営もうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない旨規定しており、かかる許可を必要とする漁業を知事許可漁業と言います多くの大臣許可漁業の規定が知事許可漁業について準用されています(法第58条)。

 

III-② 漁業権漁業について

Q33.漁業権の定義を教えてください。

A. 「漁業権」の定義規定はありませんが、法第60条第2項、法第77条第1項など漁業権に関する諸規定を総合すると、行政行為たる免許により与られる、一定の水面で特定の漁業を一定期間排他的に営むことのできる権利、と定義することができます。

 そして、漁業権には、定置漁業権、区画漁業権、共同漁業権の3種類があります(法60条1項)。

 

Q34.漁業権者の責務はなんですか?

A. 法第74条に規定されています。第1項では、漁業権者は当該漁業権に係る漁場を適切かつ有効に活用するよう努めなければいけない旨規定されています。第2項では、団体漁業権を有する漁業協同組合又は漁業協同組合連合会は、当該団体漁業権に係る漁場における漁業生産力を発展させるため、農林水産省令で定めるところにより、組合員が相互に協力して行う生産の合理化、組合員による生産活動のための法人の設立その他の方法による経営の高度化の促進に関する計画を作成し、定期的に点検を行うとともに、その実現に努めるべきと規定されています。

 

Q35.漁業権には物権的請求権が認められますか?

A. 漁業権は法第77条第1項により物権とみなされます。よって、物権的請求権として妨害排除請求権及び妨害予防請求権が認められます。また、登記を対抗要件とすること、先取特権や抵当権の規定が適用されること、民事訴訟法での不動産物件と同様の扱いを受けることなども漁業権を物権とみなす効果です。

 

Q36.漁業権は物権とみなされるとのことですが、かかる漁業権及び漁業権を目的とした抵当権等を公示するする手段は定められていますか?

A. 漁業法では、登記簿への登記に相当する免許漁業原簿への登録制度が定められています(法第117条)。そして、漁業登録令が、漁業法17条4項に基づき、免許漁業原簿への登録事項、登録の効力、登録の手続きなどを定めています。

 

Q37.個別漁業権を目的とする抵当権を設定することはできますか?制約はどのようなものですか?

A. 個別漁業権には、民法の抵当権の規定が適用されるため、個別漁業権に抵当権を設定することができます(法77条2項)。また、漁業権を担保にして融資を受ける際に、漁業権の価値を充実させるため、漁場に定着している定置網などの工作物は、漁業権に付加して一体となっている物とみなし、それらに抵当権の効力が及ぶものと漁業法で規定されています(法78条2項)

 

Q38.漁業権の存続期間に関する規定は定められていますか?

A. 存続期間の定めが法第75条第1項にあり、後述の定置漁業権や区画漁業権については5年、真珠養殖業や築堤式養殖業又は網仕切り式養殖業を内容とする区画漁業権、共同漁業権については10年です。ただし、都道府県知事は漁業調整のため必要な限度において先述の期間より短い期間を定めることができます(第2項)。

 

Q39.漁業権を処分する際の制約はありますか?

A. 漁業権は財産権ですが、水産資源の持続的利用の確保や、水面の総合的利用をもって漁業生産力の発展を図る観点から、漁業権の移転(法第79条)、貸付け(法第82条)、担保設定(法第78条)の点で制約や禁止規定が設けられています(法第77条〜第82条)。

 

Q40.漁業権の免許がなされない場合はどのような場合でしょうか?

A. 法第71条第1項に都道府県知事が漁業権を免許しない場合が規定されています。

・申請者が第72条の適格性を有するものでないとき(同項第1号)。

・海区漁場計画又は内水面漁場計画の内容と異なる申請があったとき(同項第2号)。

・その申請に係る漁業と同種の漁業を内容とする漁業権の不当な集中に至る恐れがあるとき(同項第3号)。

・免許を受けようとする漁場の敷地が他人の所有に属する場合又は水面が他人の占有に係る場合において、その所有者または占有者の同意がないとき(同項第4号)

*なお、この同意に関して、裁判所の許可を持って同意に代える規定(第2項)や、正当な事由がなければ同意を拒むことができないとする規定(第4項)があります。「正当な事由」とは漁業権が設定されることにより、当該敷地又は水面の本来の利用に著しく支障がある場合をいいます。

 

Q41.漁業権申請者の適格性が無い場合とはどのようなものですか?

A. 法第72条第1項では、個別漁業権について以下の各号に該当しない者を適格性を有するものとしています。

・漁業又は労働に関する法令を遵守せず、かつ、引き続き遵守することが見込まれない者であること(同項第1号)。

・暴力団員等であること(同項第2号)。法人であって、その役員又は政令で定める使用人のうちに前2号のいずれかに該当する者がある者であること(第3号)。

・暴力団員等がその事業活動を支配する者であること(第4号)。

*団体漁業権については第2項において、団体漁業権の関係地区の全部又は一部をその地区内に含む漁業協同組合又は漁業協同組合連合会であって、以下の各号に該当する場合適格性を有します。

・現に損する区画漁業権の存続期間の満了に際し、漁場の位置及び区域並びに漁業の種類が当該現に存する区画漁業権と概ね等しいと認められるものとして設定される団体漁業権の場合、その組合員のうち関係地区関係地区内に住所を有し当該漁業を営む者の属する世帯の数が、関係地区内に住所を有し当該漁業を営む者の属する世帯の数の3分の2以上であるもの(第1号)。

・団体漁業権(前号に掲げるものを除く)の場合、その組合員のうち関係地区内に住所を有し1年に90日以上沿岸漁業を営む者の属する世帯の数が、関係地区内に住所を有し1年に90日以上沿岸漁業を営む者の属する世帯の数の3分の2以上であるもの(第2号)。

 

Q42.漁業権を分割、変更しようとする場合の手続きについて教えてください。

A. 法第76条に規定されています。都道府県知事に申請をして、その免許を受けます(第1項)。そして都道府県知事は、海区漁場計画又は内水面漁場計画に適合するものでなければ免許はできません(第2項)。

 

Q43.抵当権等が設定された漁業権を分割、変更、または放棄するにあたり、抵当権者等の同意を得る必要はありますか?

A. 法第83条第1項により、登録を受けた先取特権者等の同意を得なければ、分割、変更、放棄ができません。漁業権の分割により、担保価値が減少することとなる抵当権者等の利益を保護するための規定です。

 

Q44.漁業権を第三者に移転するにあたっての制限はあるのでしょうか?

A. 法第79条に規定があります。原則として漁業権は相続等を除き移転の目的とはなりませんが、個別漁業権については、滞納処分による場合、先取特権者若しくは抵当権者がその権利を実行する場合又は次条第2項の通知を受けた者が譲渡する場合において、都道府県知事の認可を受けたときは、この限りでないと規定されています(同条第1項)。上記許可は先述の適格性を有するものでなければしてはいけません(同条第2項)。又、許可をしようとするときは、都道府県知事は、海区漁業調整委員会の意見を聞かなければいけません(同条第3項)。

 

Q45.相続等の一般承継で個別漁業権を取得した場合の手続きについて教えてください。

A. 取得者は、取得の日から2ヶ月以内にその旨を都道府県知事に届け出なければいけません(法80条第1項)。この場合、海区漁業調整委員会の意見を聞いた上で、適格性を書くと認める場合都道府県知事は、一定の期間内に譲渡しなければその漁業権を取り消すべき旨を通知しなければいけません(同条第2項)。

 

 

Q46.漁業権を共有している場合、民法上の共有権者の規律と異なる点はありますか?

A. 民法上は持分処分が各共有者の自由とされていますが、漁業権の場合は特則である法第84条第1項により、他の共有者の3分の2以上の同意を得なければなりません。「処分」とは、譲渡、放棄、抵当権設定などをいいます。また、共同漁業権の変更行為には、民法251条により他の共有者の全員の同意を得る必要がありますが、住居不明等の事情によりそれが困難な場合には、裁判所による同意に代わる許可が認められます(法85条、71条2項)

 

Q47.個別漁業権を有している上で、その内容たる漁業を営まずに休業する場合の手続きについて教えてください?

A. 一漁業時期以上にわたって休業しようとする時は、休業期間を定め、あらかじめ都道府県知事に届け出なければいけません。「休業」とは、個別漁業権の内容たる漁業を全く営まないことをいいます。本条の違反は直ちに罰則につながるわけではありませんが、都道府県知事は法第92条第2項第1号により漁業権取り消し、停止命令が可能です。

 

Q48.休業の届出を出した後、休業中でも漁業を営むことができますか?

A. 法第88条により、都道府県知事の許可を得れば営むことが可能となります(第1項)。この場合、知事は海区漁業調整の意見を聞く必要があります(第2項)。また、知事は、漁業調整その他公益に支障を及ぼすと認める場合は、第1項の許可をしてはいけません(第3項)。

 

Q49.漁業権者にはその漁業の状況等の報告義務はありますか?

A. 法第90条に漁業権者がなすべき報告義務が規定されています。漁業権の内容たる漁業における資源管理の状況、漁場の活用の状況その他の農林水産省令で定める事項を都道府県知事に報告しなければいけません(第1項)。そして、農林水産省令で定める事項とは漁業権の種類及び免許番号、報告の対象となる期間、資源管理に関する取組の実施状況、操業日数、漁獲量その他の漁場の活用の状況、団体漁業権にあっては組合員行使権者の数及び組合員行使権の行使状況です(施行規則第28条)。

 

Q50.漁業権はどのような場合に取り消されますか?

A. 以下の場合には漁業権が取り消される可能性があります。

・第72条第1項又は第2項の適格性を失った時(法92条第1項)。

・漁業に関する法令違反や勧告に従わない場合は漁業権の取り消しができます(同条第2項)。

・公益上の必要がある場合(法93条)。*「公益」とは、受益者が不特定多数に及ぶ利益であり、同条第1項に例示がある船舶航行、停泊係留、水底電線敷設のほか、土地収用法等により土地を収容し、又は使用ができる事業のように供することができる場合は「公益」にあたりますが、単に工場誘致の埋立てで、土地収容の対象でない事業に使う時は当たりません。「公益」にあたっても、「必要である」場合にのみ取消し可能という点も注意が必要です。

*なお、錯誤によって免許をした場合に撤回がなされることがありますが、その場合は知事は海区漁業調整委員会の意見を聞く必要があります(法第94条)。

 

Q51.漁業権の取消しからの先取特権者や抵当権者の保護はありますか?

A. 法第95条第1項には、漁業権を取り消したときに都道府県知事が直ちに登録先取特権者等にその旨通知すべきと規定されています。そして、登録先取特権者は通知を受けた日から30日以内に漁業権の競売を請求することができます(第2項)。ただし、公益上の必要及び錯誤を理由に取り消された場合は除外されます。上記期間内及び競売完結までの間は、競売の目的の範囲内において漁業権は存続するものとして扱います(第3項)。買受人が代金を納付したときは、漁業権の取り消しは、その効力を生じなかったものとみなします(第5項)。

 

Q52.休業により漁業権が取り消される場合はありますか?

A. 漁業権者がその有する漁業権の内容たる漁業の免許の日又は移転に係る認可の日から1年間又は引き続き2年間休業したときには漁業権が取り消される場合があるます(法89条第1項)。取消処分をなす場合には、知事は海区漁業調整委員会の意見を予め聞く必要があります(第3項)。そして委員会が取り消すべき旨の意見を述べようとする際は、当該漁業権者にその理由を文書により通知し、さらに公開の意見聴取を行う必要があります(第4項)。

 

Q53.漁場に工作物を設置してから漁業権が消滅しましたが、金銭を得ることはできますか?

A. 法第96条に、漁業権の価値を増大させる工作物を設置した場合に、漁業権消滅後に当該工作物利用により利益を受ける漁業免許取得者に対し、時価で買取を請求できる規定があります。これは形成権ですので、行使者の一方的意思表示で権利を実現できますが、価格が争われる余地は残ります。

 

Q54.定置漁業権とはどのようなものを指しますか?

A. 定置漁業とは、主に回遊性の魚類を採捕するための漁法で、一点の水域に漁具を定置して行う漁業のことです。漁業法ではそのうち、身網の設置される場所の最深部が最高潮時において水深27メートル(沖縄県にあっては、15メートル)以上であるもの(60条第3項第1号)、北海道においてサケを主たる漁獲物とする場合(同項第2号)を定置漁業と定義しており、このような漁業を営む権利を定地漁業権と言います。「最高潮時」とは、平年における春分または秋分の日の最大の高潮時を言います。また、瀬戸内海におけるます網漁業並びに陸奥湾における落とし網漁業及びます網漁業を除きます(第1号かっこ書)。

 

Q55.区画漁業権とはなんですか?

A. 区画漁業とは、一定の区域内において水産動植物の養殖業を営むことを言い、かかる漁業を営む権利を区画漁業権と言います。

そして、法は区画漁業について漁具・漁法を定め、3種類に区分しています(法60条第4項)。

 

・一定の区域内において、石、瓦、竹、木その他のも物を敷設して営む養殖業(同項第1号)。

・土、石、竹、木その他の物によって囲まれた一定の区域内において営む養殖業(同項第2号)。

・一定の区域内において営む養殖業であって前2号に掲げるもの以外のものを指します(同項第3号)。「一定の区域」とは、養殖に必要な程度において養殖の目的物たる水産動植物が散逸せず管理されている状態である場合、これにあたります。

 

Q56.共同漁業権とはなんですか?

A. 共同漁業権とは、一定の水面を共同で利用して漁業を営む権利を営む権利を言います(法60条)。そして、その性質上、地域の漁業者や漁業従事者などで構成される漁業協同組合に操業の管理を任せることが適切と考えられる漁業が共同漁業権の目的となります。すなわち、共同漁業権は、漁業協同組合が漁業権を持ち(法72条2項2号)、組合員が漁業権行使規則の定めるところに従って漁業を営む権利(法105条)を有することを特徴としています。

 

Q57.入漁権とはなんですか?

A. 他人の区画漁業権又は共同漁業権(両者を併せて団体漁業権と呼ばれます)に属する漁場において、当該団体漁業権の内容たる漁業の全部または一部を営む権利を言います(法60条7項)。

 

Q58.入漁権の性質はどのようなものとして扱われますか?

A. 法第98条第1項により、物権とみなされます。また、譲渡又は法人の合併若しくは分割による取得の目的となるほか、権利の目的となることができません(第2項)。譲渡の場合は漁業権者の同意が必要です(第3項)。

 

Q59.入漁権の設定、変更、消滅を漁業権者に拒まれた場合はどうすべきですか?

A. 個別の事案の状況にもよりますが、合意ができなければ、全く入漁権が設定できないという事態は、水面の総合的な利用を図る観点から望ましいものではありません。こうした場合に対処するため、海区調整委員会が裁定によって入漁権を設定することができることが漁業法で規定されています。

具体的には、漁業協同組合などが入漁権の設定を他の漁業協同組合などに求めたが、拒否された場合、海区漁業調整委員会に対して、入漁権の設定についての裁定を申請することができます(漁業法100条1項)。

 

Q60.入漁権の存続期間はどのように決まりますか?

A. 入漁権の存続期間は、本権である漁業権の存在を前提に、設定行為である契約によって定められます。よって、契約において期間が定められていない場合は、法第101条により、目的たる漁業権の存続期間中入漁権が存続するとみなします。

 

Q61.入漁権者が入漁料を支払わない場合は漁業権者はどう保護されますか?

A. 法第103条第1項は、入漁権者が入漁料を支払わない場合、漁業権者は、その入漁を拒めると規定しています。さらに第2項では、入漁者が引き続き2年以上支払いを怠り、又は破産手続開始決定を受けた時は、漁業権者は、入漁権の消滅を請求することができると規定しています。

 

Q62.組合員行使権とはなんですか?

A. 法第105条に規定されています。組合は漁業を自ら営むのでなく、自らは漁業権行使規則や入漁権行使規則(以下「行使規則」)に基づいて漁業権や入漁権管理を行います。そして組合が制定したこの行使規則で規定する資格に該当する者が、団体漁業権や入漁権の範囲内で漁業を営む権利を有することになり、実際に漁業を営みます。かかる権利が組合員行使権です。組合員行使権は、漁業権等そのものではないですが、妨害排除請求権等の物権的効力を持ちます。

 

Q63.行使規則に規定すべき事項にはどのようなものがありますか?

A. 法第106条第3項において、行使規則に規定すべき事項が定められています。

・組合員行使権者の資格(同項第1号)

・漁業権又は入漁権の内容たる漁業につき、漁業を営むべき区域又は期間、当該漁業の方法その他組合員行使権者当該漁業を営む場合において遵守すべき事項(同項第2号)

・組合員行使権者がその有する組合員行使権に基づいて漁業を営む場合において、当該漁業協同組合又は漁業協同組合連合会が当該組合員行使権者に金銭を賦課するときは、その額(同項第3号)

 

Q64.行使規則の制定するにあたっての具体的な手続きについて教えて下さい。

A. 組合は、行使規則の制定、変更、廃止を行うときは、総会の決議前に組合員のうち、当該漁業権に係る漁業の免許の際において当該漁業権の内容たる漁業を営む者であって当該漁業権の関係地区の区域内に住所を有するものの3分の2以上の書面による同意を得なければいけません(法第106条第4項)。そして、行使規則は、都道府県知事の認可がなければ、その効力を生じません(同条第7項)。都道府県知事は、申請に係る行使規則が不当に差別的であると認めるときは、これを許可してはいけません(同条第8項)。

 

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