漁業法QA④(漁業調整措置、漁業調整委員会、内水面漁業)

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V漁業調整措置について

農林水産大臣、または都道府県知事は、漁業調整のため水産動植物の採捕に関する制限、または禁止などの命令(制限禁止命令)を定めることができるとされています。

また、改正漁業法では漁業者は、新たに農林水産大臣が告示する「資源管理基本方針」等に基づき、資源管理の目標などを定めた「資源管理協定」を締結し、農林水産大臣または都道府県知事の認定を受けて、目標の達成のため具体的な資源管理の取り組みを行なっていくこととなりました。

本項ではこのような資源管理の手段としての漁業調整措置についてQA形式でご説明します。

 

V-① 制限禁止命令について

Q78.農林水産大臣や都道府県知事による採捕に関する制限禁止命令の具体的内容について教えて下さい。

A. 制限禁止命令については法第119条に規定されています。具体的には、農林水産省令又は都道府県の規則で定める特定の種類の水産動植物の採捕を目的とし、又は特定の漁業の方法により営む漁業について、これらを営むことを禁止し、又は許可を受けなければならないこととすることができます(同条第1項)。また、農林水産大臣又は都道府県知事はその他の水産動植物の採捕等に関する制限又は禁止に関して必要な農林水産省令又は都道府県の規則も定めることができます。

 

Q79.制限禁止命令を定める場合の手続きについて教えて下さい。

A. 法第119条第1項、第2項の農林水産省令を定めようとするときは、農林水産大臣又は都道府県知事は、水産政策審議会の意見を聞かなければいけません(第6項)。また、都道府県知事が規則を定めようとするときは、農林水産大臣の許可を受けなければいけません(第7項)。さらに、関係海区漁業調整委員会の意見を聞く必要もあります(第8項)。

 

V-② 資源管理協定について

Q80.漁業者による協定の締結の具体的な手続きについて教えて下さい。

A. 法第124条に規定されています。漁業者は資源管理について協定を締結し、農林水産大臣又は都道府県知事に提出して、当該協定が適当であることを認定してもらえます。協定には、協定の対象となる水域並びに水産資源の種類及び漁業の種類(第2項第1号)、協定の対象となる種類の水産資源の保存及び管理方法(同項第2号)、協定の有効期間(同項第3号)、協定に違反した場合の措置(同項第4号)、その他農林水産省令で定める事項(同項第5号)を定めます。

 

Q81.協定の認定の基準はありますか

A. 認定の基準については法第125条に規定されています。

・資源管理基本方針又は都道府県資源管理方針に照らして適当なものであること(第1号)

・不当に差別的でないこと(第2号)

・この法律及びこの法律に基づく命令その他関係法令に違反するものでないこと(第3号)

・特定水産資源位を対象とする協定にあっては、当該特定水産資源に係る大臣管理漁獲可能量又は知事管理漁獲可能量を超えないように漁獲量の管理を行うために効果的なものであると認められるものであること(第4号)。

・特定水産資源以外の水産資源を対象とする協定にあっては、この法律及びこの法律に基づく命令その他関係法令により漁業者が遵守しなければならない措置以外に当該水産資源の保存及び管理に効果的と認められる措置が定められていること(第5号)

・その他農林水産省令で定める基準を満たしていること(第6号)。認定がなくても協定自体が無効になるわけでなく、当事者間では有効です。

 

Q82.協定に参加しない者がいる場合に漁業者が取れる措置はありますか?

A. 第124条第1項の認定を受けた協定については、当該認定をした農林水産大臣又は都道府県知事に対して、不参加の者の承諾を得るために必要な斡旋をすべきことを求めることができます(法第126条)。不参加者の参加が放題125条第1項の規定に照らして相当で、協定内容に照らし特に必要であるとき、あっせんをします。なお、斡旋とは参加強制を意味せず、交渉の場の設定等を意味します。

 

Q83.協定の目的達成のために農林水産大臣又は都道府県知事に対して求めることができる措置は法に規定されていますか?

A. 法126条第3項により、認定協定に参加しているもので同項の要件を充足する場合には、農林水産大臣又は都道府県知事に対し、認定協定の目的を達成するために必要な措置を講ずべきことを求めることができます。上記申し出があった場合、資源管理のために必要があると認めるときは、必要な措置を農林水産大臣又は都道府県知事は講じます。

 

Q84.公共の用に供しない水面についても漁業調整に関する命令の規定や罰則は適用されますか?

A. 公共の用に供しない水面については、公共の用に供する水面と一体をなすものを除いて原則漁業法の適用がないですが、法第123条によって、これらの水面でも、公共の用に供する水面又はその水面に連接一体となる水面に「通ずる」水面については漁業調整に関する命令の規定や罰則は適用されます。「通ずる」とは連接一体よりも広い概念であり、水路を持って直接又は間接に通ずる場合を言います。

 

VI漁業調整委員会について

漁業調整委員会は、委員会指示(法120条、121条)により、漁業調整に関する具体的な指示を行うなど、漁業に関する行政にとって重要な役割を担う組織です。

本項ではかかる漁業調整委員会について、QA形式にてご説明します。

 

Q85.漁業調整委員会にはどのような種類がありますか?

A. 漁業調整委員会とは、海区または海域の区域内における漁業に関する事項を処理することを所管事項とする(法第135条)行政委員会であり、海区漁業調整委員会、連合海区漁業調整委員会、および広域漁業調整委員会の3種類のものがあります(法第134 条)。

 

Q86.海区漁業調整委員会の役割を教えてください。

A. 海区漁業調整委員会では、都道府県資源管理方針の作成(法第14条)、知事管理漁獲可能量の決定(法第16条)、知事許可漁業の決定(法5第7条)、海区漁場計画の作成(法第64条)、漁業権免許の的確性の判断(法第70条)、水産動植物の採捕の制限などを都道府県知事が定める漁業調整に関する命令(法第119条)についての事務などの漁業に関する広範な実務を行います。

 

Q87.委員の任期はどのように規定されていますか?

A.法第143条第1項に、4年と規定されています。任期が満了しても、後任の委員が就任するまでの間は、なおその職務を行います(同条第3項)。

 

Q88.海区漁業調整委員会の委員の罷免はどのようにしてなされますか?

A. 法第144条第1項に、都道府県知事が、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は職務上の義務に違反した場合その他委員たるに適しない非行があると認める場合は、議会の同意を得て罷免できると規定されています。

 

Q89.連合海区漁業調整委員会とはどのようなものですか?

A. 連合海区漁業調整委員会は特定の目的のため(海域間の漁業調整等)2つ以上の海区の区域を合わせた海区に置かれるものとされています(法第147条1項)これら海区が二つ以上の都道府県にまたがる場合には、それぞれの県の管轄区域内の事項を処理するために必要であればその限りにおいてその県の知事の監督権が及ぶこととなります。

 

Q90.広域漁業調整委員会とはどのようなものですか?

A. 広域漁業調整委員会とは2001年の漁業法改正により、新たに設置されることとなった漁業調整委員会で、多くの都道府県の水域にわたる漁業調整を行うために設置されるものです。 太平洋広域漁業調整委員会、日本海・九州西広域漁業調整委員会、および瀬戸内海広域漁業調整委員会の3つが置かれており(法第152条)、農林水産大臣の管理下にあります。

 

Q91.海区漁業調整委員会又は連合会区漁業調整委員会が法第120条に基づき発出する指示等について具体的に教えて下さい。

A. 法第120条において、漁業調整のため必要があると認めるときは、関係者に対し必要な指示をすることができます。農林水産省令や都道府県規則に比べて、随時的、局所的な対応が可能で、漁業に関する法令を補完します。

「漁業調整のために必要がある」として、水産動植物の繁殖保護を図ること、漁業権又は入漁権の行使を適切にすること、漁場の使用に関する紛争の防止又は解決を図ることなどが挙げれられていますが、これらは例示列挙で、これら以外でも該当する場合があります。「必要な指示」も例示列挙であり、列挙されたもの以外も認められます。委員会による指示の対象である「関係者」とは、漁業者等に限られず、指示の内容を適用すべき全ての者を含み、特定人か不特定人かを問いません。委員会の指示それ自体に強制力はなく、都道府県知事の裏付け命令によって初めて強制力を持ちます(同条第11項)。

 

Q92.法第121条に基づき発出される広域漁業調整委員会の指示について具体的に教えて下さい。

A. 広域漁業調整委員会は、都道府県の範囲を超えて広域に分布し、それを漁獲する漁業種類が大臣管理漁業と知事管理漁業とにまたがる資源の管理などについて広域的見解から水産動植物の繁殖保護等を図るためにあり、必要に応じて指示を出します。海区漁業調整委員会の指示が広域漁業調整委員会の指示に抵触するときは、海区漁業調整委員会の指示はその抵触する範囲内でその効力を失います(同条第2項)。

 

VI 土地および土地の定着物の使用について

本項では漁業を営むに当たっての土地利用について、漁業法がどのような調整を図っているかをQA形式にてご説明いたします。

 

Q93.漁業を営むには他人の土地に立ち入ったり、土地や土地定着物の使用が必要な場合がありますが、そのような場合の調整を漁業法はどのように図っていますか?

A. 漁業者と漁業協同組合又は漁業協同組合連合会は、以下の各号の場合、都道府県知事の許可を受けて他人の土地を使用し、又は立木竹もしくは土石の除去を制限することができます(法第161条)。

・漁場の標識建設(同条第1号)

・魚見もしくは漁業に関する信号又はこれに必要な設備の建設(同条第2号)

・漁業に必要な目標の保存又は建設(同条第3号)。

また法第162条により、漁業者は必要がある時に都道府県知事の許可を受けて、特別の用途のない他人の土地に立ち入って漁業を営むことができるとされています。

 

Q94.漁業者等はどのような手続きを経て土地等の使用権の設定を受けますか?

A. 法第165条に規定されています。土地または土地の定着物が海草乾場、船揚場、漁舎その他漁業場の施設として利用することが必要かつ適当であって、他のものをもって替えることが著しく困難であるときは、都道府県知事の認可を得て、当該土地または当該定着物の所有者その他これに関して権利を有するものに対し、これを使用する権利の設定に関する協議を求めることができます(同条第1項)。認可が出た場合、土地等の権利者は協議が整うまで、都道府県知事の許可が出ない限り、土地等の形状変更や損壊除去ができません(同条第4項)。

 

Q95.使用権設定の協議が整わない場合はどうしますか?

A. 法第166条第1項では、先述の認可を受けた者は使用権の設定に関する海区漁業調整委員会の裁定を申請することができると規定しています。ただし認可から2ヶ月を超えてはいけません。使用権を設定すべき旨の裁定または買い取るべき旨の裁定においては、使用権を設定すべき土地もしくは土地の定着物並びに設定すべき使用権の内容及び存続期間または買い取るべき土地もしくは土地の定着物(第10項第1号)、対価並びにその支払いの方法及び時期(第2号)、土地または土地の定着物の引渡しの時期(第3号)、使用開始の時期(第4号)、移転料並びにその支払い方法及び時期(第5号)を定めます。

 

VII 内水面漁業について

内水面とは、河川・湖沼のことです。本項では漁業法にて定められた内水面漁業にかかる規制についてQA形式にてご説明します。

 

Q96.内水面漁業については漁業法にてどのような配慮がされていますか?

A. 内水面は海面に比して自然的豊度が高くなく、採捕が容易であり資源枯渇が生じやすいこと、生業とする漁業者が少なく兼業的に営むものが多く、組合員以外の採捕者も多いという公共的性格が強いという海面と違う性質を有します。

内水面における共同漁業については藻類、貝類、定着性の水産動植物を目的とする第1種共同漁業に該当する者以外は第5種共同漁業に統合されています。そしてこれらの第5種共同漁業については、漁業協同組合、または漁業協同組合連合会に免許し、その組合などに増殖義務を課すこととされています。これにより、内水面の漁場管理が適切に行われ、内水面の資源の維持・増大、および有効利用を図ることとされています。

 

Q97.内水面での第5種共同漁業の免許を受けた者が増殖を怠っている場合の制裁規定は法に定められていますか?

A. 法第169条第1項に規定されています。都道府県知事は上記場合に、内水面漁場管理委員会の意見を聞いて増殖計画を定め、計画に従って増殖することを命ずることができます。命令に従わない場合、漁業権を取り消さなければいけません。(第2項)。

 

Q98.内水面における第5種共同漁業の免許を受けた者が、当該漁場の区域においてその組合員以外の者の水産動植物の採捕を制限したいときはどうしますか?

A. 法第170条に従い、遊漁規則を定めます。遊漁規則は都道府県知事の認可を受ける必要があります(同条第1項)。遊漁規則には、遊漁についての制限の範囲(第2項第1号)、遊漁料の額及びその納付の方法(同項第2号)、遊漁承認証に関する事項(同項第3号)、遊漁に際し守るべき事項(同項第4号)、その他農林水産省令で定める事項(第5項)を定めます。規則が遊漁を不当に制限する場合は認可が受けられません。ここでいう不当に制限とは、水産資源の維持、漁業紛争の防止その他組合員の当該漁業に対する生活依存度等を考慮して行う必要最小限どの制限に収まっていない程度のものを言います。

 

Q99.内水面漁場管理委員会とはなんですか?

A. 内水面漁場管理委員会とは、都道府県に置かれる、都道府県知事の監督に属する、当該都道府県に存する内水面における水産動植物の採捕、養殖及び増殖に関する事項を処理する行政委員会です(法第171条)。

 

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