漁業法QA①(総則規定、水産資源にかかる規程)
Contents
- 1 I 総則規定について
- 2 II 水産資源管理にかかる規程について
- 2.1 Q7.漁業法の目的に掲げられている「水産資源の保存及び管理」を達成するために、同法はどのような制度を用意していますか。
- 2.2 Q8.「①資源調査」とは具体的にどのような取組みですか?
- 2.3 Q9.「②資源評価」とは具体的にどのような取組みですか?
- 2.4 Q10.「①資源調査」や「②資源評価」において、国と都道府県はどのような関係に立つのでしょうか?
- 2.5 Q11.「③資源管理目標の設定」について具体的に教えてください
- 2.6 Q12.目標管理基準値及び限界管理基準値について具体的に教えてください。
- 2.7 Q13.「④資源管理措置の実施」について具体的に教えてください。
- 2.8 Q14.農林水産大臣はどのようにして漁獲可能量等の数量を定めますか?
- 2.9 Q15.漁獲割当割合はどのような基準に基づき定められますか?
- 2.10 Q16.漁獲割当てに有効期間はありますか?
- 2.11 Q17.漁獲割当割合の設定を受けるにあたり、資格制限はありますか?
- 2.12 Q18.漁獲割当割合の設定を行政庁が行わない場合はありますか。
- 2.13 Q19.漁業者が申請した漁獲割当割合の設定を行政庁が拒否する場合に、申請者の意見聴取等の手続き面の保障はなされていますか?
- 2.14 Q20.一度設定された漁獲割当割合は他者に移転することができますか?
- 2.15 Q21.漁獲割当割合の移転に当たってはどのような手続きを経る必要がありますか?
- 2.16 Q22.漁獲割当割合の設定を受けた者が死亡等した場合はどうなりますか?
- 2.17 Q23.年次漁獲割当量設定者でない者が採捕した場合の罰則規定は定められていますか?
- 2.18 Q24.年次漁獲割当量設定者が特定水産資源の採捕をした場合には、かかる採捕に関しての報告義務等は課せられていますか?
- 2.19 Q25.漁獲割当てによらず漁獲量等の総量の管理が行われる場合において、採捕者には漁獲量などの報告義務がありますか?
- 2.20 Q26.農林水産大臣又は都道府県知事は、資源管理の実効性を担保するために、いかなる措置をとり得ますか?
I 総則規定について
まず初めに、漁業法の目的および基本事項の定義などについての総則規定について、QA形式でご説明します。
Q1.漁業法の目的は何ですか?
A. 平成30年に改正された漁業法(以下、「法」)1条において、「この法律は、漁業が国民に対して水産物を供給する使命を有し、かつ、漁業者の秩序ある生産活動がその使命の実現に不可欠であることに鑑み、水産資源の保存及び管理のための措置並びに漁業の許可及び免許に関する制度その他の漁業生産に関する基本的制度を定めることにより、水産資源の持続的な利用を確保するとともに、水面の総合的な利用を図り、もつて漁業生産力を発展させることを目的とする。」と定められています。
水面の総合的な利用を図り、もって漁業生産力の発展を目指すことについては改正前にも同法の目的として掲げられていました。一方、「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」(TAC法)が1996年に制定されたことを受け、資源管理及び水産資源の持続的な利用に関しても、改正後の同法において目的として明記されています。
Q2.「漁業者」の定義を教えて下さい。
A. 法2条2項において、漁業者とは「漁業を営む者」と定義されています。そして、「漁業を営む」とは、営利の目的を持って漁業(水産動植物の採捕、または養殖の事業)を行うことをいいます。
すなわち、漁業者とは自己が漁業の営業の主体となり、営業によって得られる利益や営業上の責任が最終的に自己に帰属することとなる者をいい、単にその事業に出資するだけではなく、自らでその事業を運営する者をいいます。
例えば、民法上の組合における組合員は各自が「漁業者」となるのに対し、単に出資のみを行い、自ら経営に参与していない者は「漁業者」には該当しないこととなります。
なお、ここでいう「採捕」とは、自然的状態にある水産動植物を人の所持その他事実上の支配下に移す行為をいい、その行為の結果として水産動植物を所持していることは必ずしも必要とはされていません。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第二条(定義)
1 この法律において「漁業」とは、水産動植物の採捕又は養殖の事業をいう。
2 この法律において「漁業者」とは、漁業を営む者をいい、「漁業従事者」とは、漁業者のために水産動植物の採捕又は養殖に従事する者をいう。
3(略)
Q3.漁業法の適用範囲となる水面について教えて下さい。
A. 法3条及び4条に漁業法の適用範囲が定められています。
まず、原則として、同法は公共の用に供する水面(水産動植物の採捕に関し、一般の使用に供せられている水面)に適用される旨が法3条において定められています。
そして、法4条では、公共の用に供する水面でなくとも「公共の用に供する水面と連接して一体を成す」水面については例外的に漁業法を適用すると定められています。
ここでいう「連接して一体を成す」とは、公共の用に供しない水面の客観的状態が公共の用に供する水面と一体となっており、その分界がない状態をいうと考えられています。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第三条(適用範囲)
公共の用に供しない水面には、別段の規定がある場合を除き、この法律の規定を適用しない。
第四条
公共の用に供しない水面であつて公共の用に供する水面と連接して一体を成すものには、この法律を適用する。
Q4.「公共の用に供する水面」に該当するかどうかは、どのように判断すればよいですか?
A. 当該水面が、漁業者や遊漁者に対して水産動植物の採捕を容認しており、一般の使用に開放されている場合には、当該水面は「公共の用に供する水面」に該当すると考えられています。
「公共の用に供する水面」に該当するか否かを判断する場合において、水面の敷地が私有であるか公有であるかは原則として問題とはなりません。ただし、水産庁は、県・市町村・水利組合などの公共法人が所有又は管理しているため池・溝渠などは、灌漑が主たる用途であっても漁業法上の公共用水面であると解する一方で、公法人以外の者が灌漑を主目的として所有又は管理するため池などは、公共用水面ではないと解する、と回答しています(昭和26年6月13日水産庁長官回答26水第3607号)。
Q5.漁業法の適用範囲について教えてください。
A. 漁業法の適用範囲については、これを正面から定めた規定は存しませんが、以下の通りに解釈・運用されています。
・属地的効力について
我が国の領域(領土・内水・領海・排他的経済水域)及び領域外における日本船舶内においては、法の一般的効力として、漁業法は全ての人に対して適用されます。
・属人的効力について
公海、外国の排他的経済水域及び領海においても、我が国の国民に対して、漁業法が適用されます。
判例は、属人的効力について争点となった事案において、以下の通りに述べています。
〇最判昭和46年4月22日刑集25巻3号492頁
「北海道地先海面に関しては、漁業法六六条一項(筆者注:現行法57条1項。以下同じ。)の規定は、本来、北海道地先海面であつて、漁業法およびこれに基づく規則の目的である漁業秩序の確立のための漁業取締りその他漁業調整を必要とし、かつ、主務大臣または北海道知事が漁業取締りを行なうことが可能である範囲における漁業、すなわち、以上の範囲の、わが国領海における漁業および公海における日本国民の漁業に適用があるものと解せられる」。
「漁業法一三八条六号(筆者注:現行法190条3号。以下同じ。)は、前記目的をもつ漁業法および規則の性質上、わが国領海内における同法六六条一項違反の行為のほか、前記範囲の公海およびこれらと連接して一体をなす外国の領海において日本国民がした同法六六条一項違反の行為(国外犯)をも処罰する趣旨を定めたものと解すべきである。」
「国後島に対しては、現在事実上わが国の統治権が及んでいない状況にあるため、同島の沿岸線から三海里以内の海面については、北海道知事が日本国民に対し漁業の免許もしくは許可を与え、または臨場検査を行なうことができないものであるとしても、本件操業海域は、前記範囲のわが国領海および公海と連接して一体をなす海面に属するものであるから、以上に述べたとおり、漁業法六六条一項によつて日本国民が本件操業海域において同項に掲げる漁業を営むことは禁止されこれに違反した者は同法一三八条六号による処罰を免れないものと解すべきである。」
Q6.我が国の領海や排他的経済水域において、外国人が行う漁業に関しては、いかなる法律が適用されますか?
A. 我が国の領海において外国人が行う漁業に関しては、「外国人漁業の規制に関する法律」(昭和42年7月14日法律第60号)が適用されます。
我が国の排他的経済水域において外国人が行う漁業に関しては、「排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律」(平成8年6月14日法律第76号)が適用されます。
II 水産資源管理にかかる規程について
前述の通り、平成30年の漁業法改正によって、同法の目的に「水産資源の保存及び管理」が新たに加えられることとなりました。
そこで、本項では、改正漁業法が用意している水産資源管理のための諸制度についてQA形式でご説明します。
Q7.漁業法の目的に掲げられている「水産資源の保存及び管理」を達成するために、同法はどのような制度を用意していますか。
A. 漁業法における水産資源管理については、漁業法2章(7条から35条)に規定されています。そして、かかる水産資源管理は①資源調査②資源評価③資源管理目標の設定④資源管理措置の実施⑤モニタリングという大きな枠組みに沿って進められることが、同法の制度における建付となっています。
Q8.「①資源調査」とは具体的にどのような取組みですか?
A. 水産資源管理を行うためには、その前提として水産資源の状況を把握することが必要です。そして、法はそのための資源調査の実施を農林水産大臣に義務付けました。具体的には、かかる調査において、海洋環境に関する情報、水産資源の生息・生育の状況に関する情報、採捕・漁ろうの実績に関する情報、その他、水産資源の資源量の水準など資源評価を行うために必要となる情報を収集することとされています(法9条1項)。
農林水産大臣は、資源調査を行うに当たり、人工衛星に搭載される観測用機器、船舶に搭載される魚群探知機その他の機器を用いて、情報を効率的に収集する努力義務が課せられています(法9条2項)。
なお、農林水産大臣は、国立研究開発法人水産研究・教育機構に、資源調査に関する業務を行わせることができます(法9条5項)。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第九条(資源調査及び資源評価)
1 農林水産大臣は、海洋環境に関する情報、水産資源の生息又は生育の状況に関する情報、採捕及び漁ろうの実績に関する情報その他の資源評価(水産資源の資源量の水準及びその動向に関する評価をいう。以下この章において同じ。)を行うために必要となる情報を収集するための調査(以下この条及び次条第三項において「資源調査」という。)を行うものとする。
2 農林水産大臣は、資源調査を行うに当たつては、人工衛星に搭載される観測用機器、船舶に搭載される魚群探知機その他の機器を用いて、情報を効率的に収集するよう努めるものとする。
3、4(略)
5 農林水産大臣は、国立研究開発法人水産研究・教育機構に、資源調査又は資源評価に関する業務を行わせることができる。
Q9.「②資源評価」とは具体的にどのような取組みですか?
A. 資源評価とは、資源調査の結果として得られたデータに基づき、魚種ごとに資源量、漁獲圧力などが持続可能な水準にあるのか否かを科学的な見地から評価することをいいます。法9条3項に基づき、農林水産大臣はかかる資源評価を行うことが義務付けられています。なお、農林水産大臣は、国立研究開発法人水産研究・教育機構に、資源評価に関する業務を行わせることができます(法9条5項)。
資源調査及び資源評価の結果は、資源管理の基礎となるものであり、その科学的妥当性及び透明性を確保することが極めて重要です。そこで、資源調査及び資源評価に当たっては、その独立性を確保する体制を整備するとともに、その科学的客観性、妥当性及び再現性を確認できるよう、外部有識者による検証を実施することとなっています。また、資源調査及び資源評価に関する情報は、漁業者をはじめとする国民全般に対して、理解しやすい形で積極的に公表することとなっています。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第九条(資源調査及び資源評価)
1、2(略)
3 農林水産大臣は、資源調査の結果に基づき、最新の科学的知見を踏まえて資源評価を実施するものとする。
4 農林水産大臣は、資源評価を行うに当たつては、全ての種類の水産資源について評価を行うよう努めるものとする。
5 農林水産大臣は、国立研究開発法人水産研究・教育機構に、資源調査又は資源評価に関する業務を行わせることができる。
Q10.「①資源調査」や「②資源評価」において、国と都道府県はどのような関係に立つのでしょうか?
A. 多くの水産資源は、複数の都道府県が管轄する水面に分布し、回遊するため、単独の都道府県が水産資源の全体について資源調査や資源評価をすることは難しいとされています。そこで、法10条は、資源調査や資源評価における国と都道府県の協力について規定しました。
具体的には、特定又は複数の都道府県の管轄水域に分布する魚種について管理目標を設定し、水産資源管理を行うことができるよう、都道府県知事の要請に応じて、農林水産大臣が資源評価を行うこととされています(法10条1項)。この際、都道府県が蓄積した情報の提供によって資源評価の制度を高めることができるといえることから、国に資源評価を要請する都道府県知事は、資源評価に必要な情報を提供し、資源調査に協力するものとされています(同条2項・3項)。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第十条(都道府県知事の要請等)
1 都道府県知事は、農林水産大臣に対し、資源評価が行われていない水産資源について資源評価を行うよう要請をすることができる。
2 都道府県知事は、前項の規定により要請をするときは、当該要請に係る資源評価に必要な情報を農林水産大臣に提供しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の規定による場合のほか、農林水産大臣の求めに応じて、資源調査に協力するものとする。
Q11.「③資源管理目標の設定」について具体的に教えてください
A. 上述の資源評価結果に基づき、それぞれの水産資源ごとに、法12条1項1号に規定された「目標管理基準値」および同項2号の「限界管理基準値」、又はこれらの基準値を維持し、若しくは回復させるべき目標となる値を定めることが義務付けられています(同条2項)。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第十二条(資源管理の目標等)
1 前条第二項第二号の資源管理の目標は、資源評価が行われた水産資源について、水産資源ごとに次に掲げる資源量の水準(以下この条及び第十五条第二項において「資源水準」という。)の値を定めるものとする。
一 最大持続生産量(現在及び合理的に予測される将来の自然的条件の下で持続的に採捕することが可能な水産資源の数量の最大値をいう。次号において同じ。)を実現するために維持し、又は回復させるべき目標となる値(同号及び第十五条第二項において「目標管理基準値」という。)
二 資源水準の低下によつて最大持続生産量の実現が著しく困難になることを未然に防止するため、その値を下回つた場合には資源水準の値を目標管理基準値にまで回復させるための計画を定めることとする値(第十五条第二項第二号において「限界管理基準値」という。)
2 水産資源を構成する水産動植物の特性又は資源評価の精度に照らし前項各号に掲げる値を定めることができないときは、当該水産資源の漁獲量又は漁獲努力量の動向その他の情報を踏まえて資源水準を推定した上で、その維持し、又は回復させるべき目標となる値を定めるものとする。
3、4(略)
Q12.目標管理基準値及び限界管理基準値について具体的に教えてください。
A. 目標管理基準値とは、最大持続生産量を実現するために維持し、又は回復させるべき目標となる値をいいます。そして、最大持続生産量とは、現在及び合理的に予測される将来の自然的条件の下で持続的に採捕することが可能な水産資源の数量の最大値(=生産資源を減少させず、持続的に採捕可能な最大量)のことを言います。
また、限界管理基準値とは、最大持続生産量の実現が困難となることを未然に防ぐため、その値を下回れば、資源量を目標管理基準値にまで回復させるための厳しい資源管理措置の実施を内容とする資源再建計画を実施することとなる値のことをいいます。限界管理基準値については、対象魚種の生態と漁獲圧力からの回復力にのみ基づいて設定されなければならず、経済的要因を考慮してはならないとされています。
目標管理基準値及び限界管理基準値をあわせて「資源水準」という(法12条1項柱書)ところ、目標となる資源水準の値は、十分な情報に基づく客観的な根拠を有するものでなければならず、資源調査の結果に基づき、最新の科学的知見を踏まえて実施された資源評価に基づいて定めることとされています。
Q13.「④資源管理措置の実施」について具体的に教えてください。
A. 上述の資源管理目標の設定を踏まえて農林水産大臣は(i)漁獲可能量の設定及び(ii)漁船ごとの漁獲割当てを行います。
まず、漁獲可能量とは「水産資源の保存及び管理……のため、水産資源ごとに一年間に採捕することができる数量の最高限度として定められる数量をいう」(法7条1項)と定義されており、その具体的な値は法15条1項に基づき農林水産大臣が定めることとされています。
また、漁獲割当てとは、管理区分ごとに配分された漁獲可能量について、その範囲内で、さらに船舶、漁業施設等ごとに採捕可能な水産資源の数量を割当てることをいいます(法8条3項)。一般的には、IQ(Individual Quota)と呼ばれています。なお、特定水産資源を採捕するものによる過去の漁業実績に係るデータが整っていない場合や、船舶等ごとの漁獲量を迅速に把握するシステムが構築できていない場合には、漁獲量の総量を管理すると法同条4項で規定されています。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第七条(定義)
1 この章において「漁獲可能量」とは、水産資源の保存及び管理(以下「資源管理」という。)のため、水産資源ごとに一年間に採捕することができる数量の最高限度として定められる数量をいう。
2~4(略)
第八条(資源管理の基本原則)
1、2(略)
3 漁獲量の管理は、それぞれの管理区分において、水産資源を採捕しようとする者に対し、船舶等(船舶その他の漁業の生産活動を行う基本的な単位となる設備をいう。以下同じ。)ごとに当該管理区分に係る漁獲可能量の範囲内で水産資源の採捕をすることができる数量を割り当てること(以下この章及び第四十三条において「漁獲割当て」という。)により行うことを基本とする。
4 漁獲割当てを行う準備の整つていない管理区分における漁獲量の管理は、当該管理区分において水産資源を採捕する者による漁獲量の総量を管理することにより行うものとする。
5(略)
第十五条(農林水産大臣による漁獲可能量等の設定)
1 農林水産大臣は、資源管理基本方針に即して、特定水産資源ごと及びその管理年度ごとに、次に掲げる数量を定めるものとする。
一 漁獲可能量
二 漁獲可能量のうち各都道府県に配分する数量(以下この章において「都道府県別漁獲可能量」という。)
三 漁獲可能量のうち大臣管理区分に配分する数量(以下この節及び第百二十五条第一項第四号において「大臣管理漁獲可能量」という。)
2~6(略)
Q14.農林水産大臣はどのようにして漁獲可能量等の数量を定めますか?
A. 法15条2項において漁獲可能量の数量の決定にあたっての基準が定められています。
・資源水準の値が目標管理基準値を下回っている場合は、資源水準の値が目標管理基準値を上回るまで回復させること(同項1号)。
・資源水準の値が限界管理基準値を下回っている場合は、法12条1項2号の計画にしたがって、資源水準の値が目標管理基準値を上回るまで回復させること(同項2号)。
・資源水準の値が目標管理基準値を上回っている場合は、資源水準の値が目標管理基準値を上回る状態を維持すること(同項3号)。
・水産資源の特性または資源評価の精度に照らして別途の目標となる値を定めたときは、推定した資源水準の値が当該別途の目標となる値を上回るまで回復させ、又はそれを上回る状態を維持すること(同項4号)。
なお、漁業の経営等の事情については、漁獲可能量の数量の決定において配慮すべきではないとされています。漁獲可能量の数量は科学的に決定すべきであって、漁業の経営等の事情は、漁獲可能量を配分する際に、漁業の実績を勘案する中で配慮することとなる事情と位置付けられているからです。
農林水産大臣は、漁獲可能量、都道府県別漁獲可能量及び大臣管理漁獲可能量を定めようとするときは、水産政策審議会ないしは関係する都道府県知事の意見を聞かなければなりません(法15条3項・4項)。さらに、農林水産大臣は、漁獲可能量、都道府県別漁獲可能量及び大臣管理漁獲可能量を定めたときは、遅滞なく定めた数量を公表ないしは通知しなければなりません(同条4項・5項)。
漁獲可能量、都道府県別漁獲可能量及び大臣管理漁獲可能量を変更する場合も同様です(同条6項)
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第十二条(資源管理の目標等)
1(略)
2 水産資源を構成する水産動植物の特性又は資源評価の精度に照らし前項各号に掲げる値を定めることができないときは、当該水産資源の漁獲量又は漁獲努力量の動向その他の情報を踏まえて資源水準を推定した上で、その維持し、又は回復させるべき目標となる値を定めるものとする。
3、4(略)
第十五条(農林水産大臣による漁獲可能量等の設定)
1(略)
2 農林水産大臣は、次に掲げる基準に従い漁獲可能量を定めるものとする。
一 資源水準の値が目標管理基準値を下回つている場合(次号に規定する場合を除く。)は、資源水準の値が目標管理基準値を上回るまで回復させること。
二 資源水準の値が限界管理基準値を下回つている場合は、農林水産大臣が定める第十二条第一項第二号の計画に従つて、資源水準の値が目標管理基準値を上回るまで回復させること。
三 資源水準の値が目標管理基準値を上回つている場合は、資源水準の値が目標管理基準値を上回る状態を維持すること。
四 第十二条第二項の目標となる値を定めたときは、同項の規定により推定した資源水準の値が当該目標となる値を上回るまで回復させ、又は当該目標となる値を上回る状態を維持すること。
3 農林水産大臣は、第一項各号に掲げる数量を定めようとするときは、水産政策審議会の意見を聴かなければならない。
4 農林水産大臣は、都道府県別漁獲可能量を定めようとするときは、関係する都道府県知事の意見を聴くものとし、その数量を定めたときは、遅滞なく、これを当該都道府県知事に通知するものとする。
5 農林水産大臣は、第一項各号に掲げる数量を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 前三項の規定は、第一項各号に掲げる数量の変更について準用する。
Q15.漁獲割当割合はどのような基準に基づき定められますか?
A. 法17条3項及び漁業法施行規則5条各号に漁獲割当割合の設定の基準が定められています。具体的には、以下に掲げる事項が漁業割当割合の設定の基準を定める際の勘案事項とされています。
(i)船舶等ごとの漁獲実績(法17条第3項)
(ii)船舶の総数又は総トン数(施行規則5条1号)
(iii)採捕する者の数、その採捕の実態または将来の見通し(施行規則5条2号)
(iv)漁業に関する法令に違反する行為の違反の程度及び違反の回数(施行規則第5条第3号)
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第十七条(漁獲割当割合の設定)
1、2(略)
3 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁獲割当割合の設定をしようとするときは、あらかじめ、漁獲割当管理区分ごとに、船舶等ごとの漁獲実績その他農林水産省令で定める事項を勘案して設定の基準を定め、これに従つて設定を行わなければならない。
4(略)
漁業法施行規則(令和2年7月8日農林水産省令第47号)
第五条(漁獲割当割合の設定の基準を定める際の勘案事項)
法第十七条第三項の農林水産省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 船舶の総数又は総トン数
二 採捕する者の数、その採捕の実態又は将来の見通し
三 漁業に関する法令に違反する行為の違反の程度及び違反の回数
Q16.漁獲割当てに有効期間はありますか?
A. 法17条2項に規定されています。漁獲割当割合の有効期間は、1年を下らない範囲で農林水産省令で定めることとされています。そして、法施行規則4条によれば有効期間は原則として5年とされています。
ただし、特定水産資源の特性や採捕の実態によっては、より短い期間とすることが適当な場合が生じるため、このような場合には、その有効期間を5年よりも短縮することができるとされています(施行規則4条但書)。具体的には、例えば、国際条約などにより我が国の漁獲量の限度が毎年変動するミナミマグロなどについては、その年ごとに我が国に割り当てられた漁獲量を踏まえた上で漁獲割当割合の設定ができるよう、その有効期間が1年とされています。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第十七条(漁獲割当割合の設定)
1(略)
2 前項の漁獲割当割合の有効期間は、一年を下らない農林水産省令で定める期間とする。
3、4(略)
漁業法施行規則(令和2年7月8日農林水産省令第47号)
第四条(漁獲割当割合の有効期間)
法第十七条第二項の農林水産省令で定める期間は、五年とする。ただし、農林水産大臣又は都道府県知事は、特定水産資源の特性及びその採捕の実態を勘案し、これによることが適当でないと認める漁獲割当割合については、その有効期間を短縮することができる。
Q17.漁獲割当割合の設定を受けるにあたり、資格制限はありますか?
A. 原則として、漁獲割当割合の設定を受けるにあたっての資格制限はありません。
しかしながら、漁業者間での紛争を回避する観点から、一定の場合には漁獲割当割合の設定を有資格者に限定することができる規定をおいています(法17条4項)。かかる有資格者に限定する措置をとることができるのは、以下の場合です。
(i)漁獲割当ての対象となる特定水産資源の再生産の阻害を防止するために、漁獲可能量による管理以外の手法による資源管理を行う必要があると認めるとき。
(ii)漁獲割当割合の設定を受けた者の間の紛争を防止する必要があると認めるとき。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第十七条(漁獲割当割合の設定)
1~3(略)
4 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁獲割当ての対象となる特定水産資源の再生産の阻害を防止するために漁業時期若しくは漁具の制限その他の漁獲可能量による管理以外の手法による資源管理を行う必要があると認めるとき、又は漁獲割当割合の設定を受けた者の間の紛争を防止する必要があると認めるときは、漁獲割当割合の設定を、当該漁獲割当ての対象となる特定水産資源の採捕に係る漁業に係る許可等(第三十六条第一項若しくは第五十七条第一項の許可又は第三十八条(第五十八条において準用する場合を含む。)の認可をいう。)を受け、又は当該採捕に係る個別漁業権(第六十二条第二項第一号ホに規定する個別漁業権をいう。)を有する者(第二十三条第二項第一号において「有資格者」という。)に限ることができる。
Q18.漁獲割当割合の設定を行政庁が行わない場合はありますか。
A. 法18条に漁獲割当割合の設定を行わない場合が規定されています。
(i)漁業又は労働に関する法令を遵守せず、かつ、引き続き遵守することが見込まれない者(同条1項1号)。
:ここでいう「漁業」に関する法令とは、法又は法に基づく政省令もしくは都道府県の規則のほか、水産資源保護法その他の漁業に関する定めを置いている法令をいいます。また、ここでいう「労働に関する法令」とは、労働基準法、船員法、船舶安全法等の労働に関する法令をいいます。
(ii)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(同項2号)。
(iii)法人であって、その役員又は政令で定める使用人のうち前二号のいずれかに該当する者があるもの(同項3号)。
:ここでいう「政令で定める使用人」とは、操船又は漁ろうを指揮監督する者をいい(法施行令2条)、具体的には、船長や漁ろう長等がこれに該当するとされています。
(iv)暴力団員等がその事業活動を支配する者(同項4号)。
(v)漁獲割当割合の設定の申請にかかる漁業を営むに足りる経理的基礎を有しないもの(同項5号)。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第十八条(漁獲割当割合の設定を行わない場合)
1 前条第一項の規定により申請した者が次の各号に掲げる者のいずれかに該当するときは、農林水産大臣又は都道府県知事は、漁獲割当割合の設定を行つてはならない。
一 漁業又は労働に関する法令を遵守せず、かつ、引き続き遵守することが見込まれない者
二 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
三 法人であつて、その役員又は政令で定める使用人のうちに前二号のいずれかに該当する者があるもの
四 暴力団員等がその事業活動を支配する者
五 その申請に係る漁業を営むに足りる経理的基礎を有しない者
2、3(略)
漁業法施行令(昭和25年3月13日政令第30号)
第二条(漁獲割当割合の設定の申請者の使用人)
法第十八条第一項第三号の政令で定める使用人は、法第十七条第一項の規定により申請した者の使用人であつて、操船又は漁ろうを指揮監督するものとする。
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年5月15日法律第77号)
第二条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一(略)
二 暴力団 その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。
三~五(略)
六 暴力団員 暴力団の構成員をいう。
七、八(略)
Q19.漁業者が申請した漁獲割当割合の設定を行政庁が拒否する場合に、申請者の意見聴取等の手続き面の保障はなされていますか?
A. 行政庁による申請拒否処分は、申請者にとっては対象となる特定水産資源の採捕ができないこととなるため、重大な不利益処分にあたります。そのため、農林水産大臣又は都道府県知事は、あらかじめ、その理由を文書をもって通知し、公開の意見聴取を行うことが義務付けられています(法18条2項・3項)。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第十八条(漁獲割当割合の設定を行わない場合)
1(略)
2 農林水産大臣又は都道府県知事は、前項の規定により漁獲割当割合の設定を行わないときは、あらかじめ、当該申請者にその理由を文書をもつて通知し、公開による意見の聴取を行わなければならない。
3 前項の意見の聴取に際しては、当該申請者又はその代理人は、当該事案について弁明し、かつ、証拠を提出することができる。
Q20.一度設定された漁獲割当割合は他者に移転することができますか?
A. 漁獲割当割合は、以下に掲げる移転事由に該当する場合であって、農林水産大臣又は都道府県知事の認可を受けたときに限り、移転することができます(法21条1項)。
(i)船舶等とともに当該船舶等ごとに設定された漁獲割当割合を譲り渡す場合(同条1項)。
(ii)複数の船舶等について漁獲割当割合の設定を受けている場合であって、当該船舶等の間で漁獲割当割合の移転をする場合(施行規則9条1号)。
(iii)漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を使用することを廃止し、当該漁獲割当割合設定者の使用する他の船舶等に当該漁獲割当割合の移転をする場合(施行規則9条2号)。
(iv)漁獲割当割合の設定を受けた船舶等が滅失し、又は沈没したため、当該漁獲割当割合設定者の使用する他の船舶等に当該漁獲割当割合の移転をする場合(施行規則9条3号)。
(v)漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を借り受け、またはその返還を受けることにより当該船舶等を使用する権利を取得する者に当該漁獲割当割合を譲り渡す場合(施行規則9条4号)。
ただし、農林水産大臣又は都道府県知事は、以下に掲げるもののいずれかに当たる場合には、認可をしてはならない旨が定められています(法21条2項)。
(i)漁業又は労働に関する法令を遵守せず、かつ、引き続き遵守することが見込まれない者(法18条1項1号)。
(ii)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(同項2号)。
(iii)法人であって、その役員又は政令で定める使用人のうち前二号のいずれかに該当する者があるもの(同項3号)。
(iv)暴力団員等がその事業活動を支配する者(同項4号)。
(v)漁獲割当割合の設定の申請にかかる漁業を営むに足りる経理的基礎を有しないもの(同項5号)。
(vi) 漁獲割当割合の設定を有資格者に限る場合(法17条4項)において、有資格者でない者に移転をする場合(施行規則11条)
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第二十一条(漁獲割当割合の移転)
1 漁獲割当割合は、船舶等とともに当該船舶等ごとに設定された漁獲割当割合を譲り渡す場合その他農林水産省令で定める場合に該当する場合であつて農林水産大臣又は都道府県知事の認可を受けたときに限り、移転をすることができる。この場合において、当該移転を受けた者は漁獲割当割合設定者と、当該移転をされた漁獲割当割合は第十七条第一項の規定により設定を受けた漁獲割当割合と、それぞれみなして、この款の規定を適用する。
2 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁獲割当割合の移転を受けようとする者が第十八条第一項各号に掲げる者のいずれかに該当する場合その他農林水産省令で定める場合は、前項の認可をしてはならない。
3、4(略)
漁業法施行規則(令和2年7月8日農林水産省令第47号)
第九条(漁獲割当割合の移転ができる場合)
法第二十一条第一項の農林水産省令で定める場合は、次のとおりとする。
一 複数の船舶等について漁獲割当割合の設定を受けている場合であって、当該船舶等の間で漁獲割当割合の移転をする場合
二 漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を使用することを廃止し、当該漁獲割当割合設定者の使用する他の船舶等に当該漁獲割当割合の移転をする場合
三 漁獲割当割合の設定を受けた船舶等が滅失し、又は沈没したため、当該漁獲割当割合設定者の使用する他の船舶等に当該漁獲割当割合の移転をする場合
四 漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を借り受け、又はその返還を受けることにより当該船舶等を使用する権利を取得する者に当該漁獲割当割合を譲り渡す場合
第十一条(漁獲割当割合の移転の認可をしてはならない場合)
法第二十一条第二項の農林水産省令で定める場合は、法第十七条第四項の規定により漁獲割当割合の設定を有資格者に限る場合において、有資格者でない者に移転をする場合とする。
Q21.漁獲割当割合の移転に当たってはどのような手続きを経る必要がありますか?
A. 移転を受けようとする者は、漁獲割当割合の設定を受ける船舶等ごとに、農林水産大臣又は都道府県知事に申請する必要があります(施行規則10条1項)。当該申請は移転をしようとするものと移転を受けようとする者が共同して行います(施行規則同条2項)。
漁業法施行規則(令和2年7月8日農林水産省令第47号)
第十条(漁獲割当割合の移転の認可の申請)
1 法第二十一条第一項の規定による漁獲割当割合の移転を受けようとする者は、漁獲割当割合の設定を受ける船舶等ごとに、農林水産大臣又は都道府県知事に申請しなければならない。
2 前項の申請は、漁獲割当割合の移転をしようとする者と共同して行うものとする。
3(略)
Q22.漁獲割当割合の設定を受けた者が死亡等した場合はどうなりますか?
A. 漁獲割当割合設定者が死亡した場合は、その相続人が当該漁獲割当割合設定者の地位を承継します(法21条3項)。漁獲割当割合設定者たる法人その他の団体が解散した場合は、合併後存続する法人又は合併によって成立した法人が当該漁獲割当割合設定者の地位を承継します。漁獲割当割合設定者たる法人その他の団体が分割をした場合は、分割によって漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を承継した法人が当該漁獲割当割合設定者の地位を承継します。
漁獲割当割合設定者の地位を承継した場合は、承継の日から2か月以内に、その旨をその事実を証する書面を添付して農林水産大臣又は都道府県知事に届け出る必要があります(同条4項、施行規則12条)。かかる届出を怠った場合は、10万円以下の過料に処されます(法198条)。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第二十一条(漁獲割当割合の移転)
1、2(略)
3 漁獲割当割合設定者が死亡し、解散し、又は分割(漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を承継させるものに限る。)をしたときは、その相続人(相続人が二人以上ある場合においてその協議により漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を承継すべき者を定めたときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併によつて成立した法人又は分割によつて漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を承継した法人は、当該漁獲割当割合設定者の地位(相続又は分割により漁獲割当割合の設定を受けた船舶等の一部を承継した者にあつては、当該一部の船舶等に係る部分に限る。)を承継する。
4 前項の規定により漁獲割当割合設定者の地位を承継した者は、承継の日から二月以内にその旨を農林水産大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
第百九十八条
第二十一条第四項、第二十二条第四項、第四十八条第二項、第四十九条第二項(第五十八条において準用する場合を含む。)又は第八十条第一項の規定による届出を怠つた者は、十万円以下の過料に処する。
漁業法施行規則(令和2年7月8日農林水産省令第47号)
第十二条(漁獲割当割合設定者の地位の承継の届出)
法第二十一条第三項の規定により漁獲割当割合設定者の地位を承継した者は、同条第四項の規定によりその旨を届け出るときは、その事実を証する書面を添付しなければならない。
Q23.年次漁獲割当量設定者でない者が採捕した場合の罰則規定は定められていますか?
A. 漁獲割当管理区分においては、年次漁獲量割当量(漁獲割当管理区分において管理年度中に特定水産資源を採捕することができる数量)設定者(年次漁獲割当量の設定を受けた者)以外は当該漁獲割当ての対象となる特定水産資源(漁獲可能量による管理を行う水産資源)の採捕を禁じられています(法25条1項)。また、年次漁獲割当量設定者であってもその設定量を超える採捕が禁じられます(同条2項)。これらの規定に違反した者は、法190条1号の規定により3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又はこれらの併科に処されます。
また、農林水産大臣又は都道府県知事は、年次漁獲割当量設定者が漁獲割当管理区分においてその設定を受けた年次漁獲割当量を超えて当該漁獲割当ての対象となる特定水産資源の採捕をし、かつ、当該採捕を引き続きするおそれがあるときは、当該年次漁獲割当量設定者に対し、停泊等命令や年次漁獲割当量からの超過数量の控除、漁獲割当割合を減ずる処分をすることができます(法27条、28条、29条1項)。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第二十五条(採捕の制限)
1 漁獲割当管理区分においては、当該漁獲割当管理区分に係る年次漁獲割当量設定者でなければ、当該漁獲割当ての対象となる特定水産資源の採捕を目的として当該特定水産資源の採捕をしてはならない。
2 年次漁獲割当量設定者は、漁獲割当管理区分においては、その設定を受けた年次漁獲割当量を超えて当該漁獲割当ての対象となる特定水産資源の採捕をしてはならない。
第二十七条(停泊命令等)
農林水産大臣又は都道府県知事は、年次漁獲割当量設定者が第二十五条第二項の規定に違反してその設定を受けた年次漁獲割当量を超えて特定水産資源の採捕をし、かつ、当該採捕を引き続きするおそれがあるときは、当該採捕をした者が使用する船舶について停泊港及び停泊期間を指定して停泊を命じ、又は当該採捕に使用した漁具その他特定水産資源の採捕の用に供される物について期間を指定してその使用の禁止若しくは陸揚げを命ずることができる。
第二十八条(年次漁獲割当量の控除)
農林水産大臣又は都道府県知事は、漁獲割当割合設定者である年次漁獲割当量設定者が第二十五条第二項の規定に違反してその設定を受けた年次漁獲割当量を超えて特定水産資源を採捕したときは、その超えた部分の数量を基準として農林水産省令で定めるところにより算出する数量を、次の管理年度以降において当該漁獲割当割合設定者に設定する年次漁獲割当量から控除することができる。
第二十九条(漁獲割当割合の削減)
1 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁獲割当割合設定者である年次漁獲割当量設定者が第二十五条第二項の規定に違反してその設定を受けた年次漁獲割当量を超えて特定水産資源を採捕し、又は第二十七条の規定による命令に違反したときは、農林水産省令で定めるところにより、その設定を受けた漁獲割当割合を減ずる処分をすることができる。
2、3(略)
第百九十条
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第二十五条の規定に違反して特定水産資源を採捕したとき。
二~八(略)
Q24.年次漁獲割当量設定者が特定水産資源の採捕をした場合には、かかる採捕に関しての報告義務等は課せられていますか?
A. 年次漁獲割当量設定者が特定水産資源の採捕をしたときは、氏名、住所、採捕した資源、漁獲割当管理区分、設定を受けた年次漁獲割当量、漁獲量、陸上げ日等を、原則として陸揚げした日から3日以内に電磁的方法によって、農林水産大臣又は都道府県知事に報告する必要があります(法26条、施行規則16条1項~3項)。
ただし、遠洋海域で採捕するもの等、採捕日から陸揚げ日までの期間が離れている場合など、陸揚げ日を起点とすることが適当とは認められない場合には、採捕した日の翌日を期限とするなどの対応をとることが適当である場合があり、このような場合には、例外的に資源管理基本方針又は都道府県資源管理方針に報告期限を定めることとされています。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第二十六条(漁獲量等の報告)
1 年次漁獲割当量設定者は、漁獲割当管理区分において、特定水産資源の採捕をしたときは、農林水産省令で定める期間内に、農林水産省令又は規則で定めるところにより、漁獲量その他漁獲の状況に関し農林水産省令で定める事項を、当該漁獲割当管理区分が大臣管理区分である場合には農林水産大臣、知事管理区分である場合には当該知事管理区分に係る都道府県知事に報告しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定により報告を受けたときは、農林水産省令で定めるところにより、速やかに、当該事項を農林水産大臣に報告するものとする。
漁業法施行規則(令和2年7月8日農林水産省令第47号)
第十六条(漁獲割当管理区分に係る漁獲量等の報告)
1 法第二十六条第一項の農林水産省令で定める期間は、採捕した特定水産資源ごとに陸揚げした日から三日以内とする。ただし、特定水産資源の特性及びその採捕の実態を勘案し、これによることが適当でないと認めるものについては、資源管理基本方針又は都道府県資源管理方針に定める期間とする。
2 法第二十六条第一項の農林水産省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 年次漁獲割当量設定者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
二 採捕した特定水産資源
三 漁獲割当管理区分
四 設定を受けた年次漁獲割当量
五 特定水産資源ごとの漁獲量
六 採捕に係る特定水産資源を陸揚げした日
七 その他参考となるべき事項
3 法第二十六条第一項の規定による報告は、送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるものにより行うものとする。ただし、電子情報処理組織の異常若しくは保守点検又は報告すべき事項が著しく急激に増加したことその他やむを得ない事由がある場合においては、書面により行うことができる。
4(略)
Q25.漁獲割当てによらず漁獲量等の総量の管理が行われる場合において、採捕者には漁獲量などの報告義務がありますか?
A. 漁獲割当管理区分以外の管理区分であっても、特定水産資源の採捕をした者は漁獲量又は漁獲努力量、氏名、住所、管理区分、陸上げ日等について、原則として陸揚げした日からその属する月の翌月の10日までの間に電磁的方法によって、農林水産大臣又は都道府県知事に対して報告する必要があります(法30条、施行規則19条1項~3項)。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第三十条(漁獲量等の報告)
1 漁獲割当管理区分以外の管理区分において特定水産資源の採捕(漁獲努力量の総量の管理を行う管理区分(以下この項及び次条において「漁獲努力量管理区分」という。)にあつては、当該漁獲努力量に係る漁ろう。以下この款において同じ。)をする者は、特定水産資源の採捕をしたときは、農林水産省令で定める期間内に、農林水産省令又は規則で定めるところにより、当該特定水産資源の漁獲量(漁獲努力量管理区分にあつては、当該特定水産資源に係る漁獲努力量。以下この款において同じ。)その他漁獲の状況に関し農林水産省令で定める事項を、当該管理区分が大臣管理区分(漁獲割当管理区分以外のものに限る。以下この款において同じ。)である場合には農林水産大臣、知事管理区分(漁獲割当管理区分以外のものに限る。以下この款において同じ。)である場合には当該知事管理区分に係る都道府県知事に報告しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定により報告を受けたときは、農林水産省令で定めるところにより、速やかに、当該事項を農林水産大臣に報告するものとする。
漁業法施行規則(令和2年7月8日農林水産省令第47号)
第十九条(非漁獲割当管理区分に係る漁獲量等の報告)
1 法第三十条第一項の農林水産省令で定める期間は、採捕した特定水産資源ごとに陸揚げした日からその属する月の翌月の十日までの間とする。ただし、特定水産資源の特性及びその採捕の実態を勘案し、これによることが適当でないと認められるものについては、資源管理基本方針又は都道府県資源管理方針に定める期間とする。
2 法第三十条第一項の農林水産省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 報告者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
二 管理区分
三 採捕に係る特定水産資源を陸揚げした日
四 その他参考となるべき事項
3 第十六条第三項の規定は法第三十条第一項の規定による報告について、第十六条第四項の規定は法第三十条第二項の規定による報告について、それぞれ準用する。
Q26.農林水産大臣又は都道府県知事は、資源管理の実効性を担保するために、いかなる措置をとり得ますか?
A. 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁獲量の総量(漁獲努力量の総量)が管理区分に配分された漁獲可能量(漁獲努力可能量)を超えるおそれが大きい場合には、当該管理区分においてその対象たる特定水産資源の採捕をする者に対し、助言、指導、又は勧告をすることができます(法32条)。助言、指導、勧告は、いずれも行政指導であり、助言、指導、勧告の順に効果が強くなるものとされています。
漁獲量の管理に関してその管理主体となる農林水産大臣又は都道府県知事は、各管理区分に配分された漁獲可能量を超えないように、必要に応じて公表(法31条)や助言、指導又は勧告を行いますが、これらの手法のみによっては漁獲量の超過を防ぐことができない場合には、対象となる特定水産資源の採捕の停止その他特定水産資源の採捕に関し必要な命令をすることができます(法33条)。ここでいう「採捕に関し必要な命令」については、例えば、採捕の停止と併せて当該資源を採捕するおそれのある漁具の使用を制限する命令や、当該資源を混獲するおそれの大きい海域における操業を制限する命令などが考えられます。
かかる採捕停止等の命令に違反した者は、停泊等命令の対象となります(法34条)。また、法190条2号の規定により、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又はこれらの併科に処されます。さらに、その所有し、又は所持する漁獲物、その製品、漁船又は漁具その他水産動植物の採捕若しくは養殖の用に供される物は没収され得、所有していたこれらの物件の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴され得ます(法192条)。
漁業法(昭和24年12月15日法律第267号)
第三十一条(漁獲量等の公表)
農林水産大臣又は都道府県知事は、大臣管理区分又は知事管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該管理区分に係る大臣管理漁獲可能量又は知事管理漁獲可能量(漁獲努力量管理区分にあつては、当該管理区分に係る漁獲努力可能量。次条及び第三十三条において同じ。)を超えるおそれがあると認めるときその他農林水産省令で定めるときは、当該漁獲量の総量その他農林水産省令で定める事項を公表するものとする。
第三十二条(助言、指導又は勧告)
1 農林水産大臣は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、それぞれ当該各号に定める者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
一 大臣管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該大臣管理区分に係る大臣管理漁獲可能量を超えるおそれが大きい場合 当該大臣管理区分において当該特定水産資源の採捕をする者
二 一の特定水産資源に係る全ての大臣管理区分における当該特定水産資源の漁獲量の総量が当該全ての大臣管理区分に係る大臣管理漁獲可能量の合計を超えるおそれが大きい場合 当該全ての大臣管理区分のいずれかにおいて当該特定水産資源の採捕をする者
三 特定水産資源の漁獲量の総量が当該特定水産資源の漁獲可能量を超えるおそれが大きい場合 当該特定水産資源の採捕をする者
2 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、それぞれ当該各号に定める者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
一 知事管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該知事管理区分に係る知事管理漁獲可能量を超えるおそれが大きい場合 当該知事管理区分において当該特定水産資源の採捕をする者
二 一の特定水産資源に係る全ての知事管理区分における当該特定水産資源の漁獲量の総量が当該都道府県の都道府県別漁獲可能量を超えるおそれが大きい場合 当該全ての知事管理区分のいずれかにおいて当該特定水産資源の採捕をする者
第三十三条(採捕の停止等)
1 農林水産大臣は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、それぞれ当該各号に定める者に対し、農林水産省令で定めるところにより、期間を定め、採捕の停止その他特定水産資源の採捕に関し必要な命令をすることができる。
一 大臣管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該大臣管理区分に係る大臣管理漁獲可能量を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合 当該大臣管理区分において当該特定水産資源の採捕をする者
二 一の特定水産資源に係る全ての大臣管理区分における当該特定水産資源の漁獲量の総量が当該全ての大臣管理区分に係る大臣管理漁獲可能量の合計を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合 当該全ての大臣管理区分のいずれかにおいて当該特定水産資源の採捕をする者
三 特定水産資源の漁獲量の総量が当該特定水産資源の漁獲可能量を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合 当該特定水産資源の採捕をする者
2 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、それぞれ当該各号に定める者に対し、規則で定めるところにより、期間を定め、採捕の停止その他特定水産資源の採捕に関し必要な命令をすることができる。
一 知事管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該知事管理区分に係る知事管理漁獲可能量を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合 当該知事管理区分において当該特定水産資源の採捕をする者
二 一の特定水産資源に係る全ての知事管理区分における当該特定水産資源の漁獲量の総量が当該都道府県の都道府県別漁獲可能量を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合 当該全ての知事管理区分のいずれかにおいて当該特定水産資源の採捕をする者
第三十四条(停泊命令等)
農林水産大臣又は都道府県知事は、前条の命令を受けた者が当該命令に違反する行為をし、かつ、当該行為を引き続きするおそれがあるときは、当該行為をした者が使用する船舶について停泊港及び停泊期間を指定して停泊を命じ、又は当該行為に使用した漁具その他特定水産資源の採捕の用に供される物について期間を指定してその使用の禁止若しくは陸揚げを命ずることができる。
第百九十条
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一(略)
二 第二十七条、第三十三条、第三十四条又は第百三十一条第一項の規定による命令に違反したとき。
三~八(略)
第百九十二条
前三条の場合においては、犯人が所有し、又は所持する漁獲物、その製品、漁船又は漁具その他水産動植物の採捕若しくは養殖の用に供される物は、没収することができる。ただし、犯人が所有していたこれらの物件の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。