漁業法QA③(漁場計画及び沿岸漁場管理)
Contents
- 1 IV海区漁場計画および沿岸漁場管理について
- 2 IV-① 海区漁場計画について
- 3 IV-② 沿岸漁場管理について
- 3.1 Q69.沿岸漁場管理団体とは具体的にはどのような団体ですか?
- 3.2 Q70.沿岸漁場管理団体の指定はどのようになされますか?
- 3.3 Q71.沿岸漁場管理団体の適格性について具体的に教えて下さい?
- 3.4 Q72.法第111条第1項により沿岸漁場管理団体は沿岸漁場管理規定を作成することとされていますが、かかる規定に記載すべき事項ついて具体的に教えて下さい。
- 3.5 Q73.沿岸漁場管理規定を作成するにあたり必要な手続きについて教えて下さい。
- 3.6 Q74.沿岸漁場管理団体はどのような活動をすることと規定されていますか??
- 3.7 Q75保全活動の実施にあたり、保全活動従事者以外で保全活動により利益を受けることが見込まれる者(受益者)の協力が得られないときはどうすれば良いでしょうか?
- 3.8 Q76.受益者が斡旋を受けたにもかかわらず、その協力が得られない場合はどうなりますか?
- 3.9 Q77.保全活動を休廃止する場合の手続きについて教えて下さい。
IV海区漁場計画および沿岸漁場管理について
本項では、漁業生産力の発展および環境保全を図るために漁業法で整備された諸制度について、QA形式でご説明します。
IV-① 海区漁場計画について
Q65.海区漁場計画とはなんですか?
A. 海区漁場計画とは、都道府県知事が5年ごとに管轄水域の海区ごとに、どの水域にどのような漁業権を設定するかなど海域の利用計画を定めるものであり、水面を最大限に活用して漁業生産力の向上を図ることを基本的な目的とするものです。具体的には、法62条2項により、海区漁場計画では設定する漁業権、および保全沿岸漁場について定めることとされています。
Q66.保全沿岸漁場について具体的に教えてください?
A. 保全沿岸漁場とは、漁業生産力の発展を図るために保全活動の円滑かつ計画的な実施を確保する必要がある沿岸漁場として都道府県知事が定めるものを言います法第60条第9項。また、保全活動とは、水産動植物の生育環境の保全又は改善その他沿岸漁場の保全のための活動であって農林水産省令で定めるものをいいます(法第60条第8項)。具体的には、施行規則第21条において、赤潮の発生状況の監視、水底の底質調査、漂流物除去、有害動植物駆除、法令違反行為抑止活動などが規定されています。
Q67.海区漁場計画では具体的にどのような要件を充足すべきとされていますか?
A. 海区漁場計画は、その地域の漁業関係者の利害関係に直接影響を及ぼし、漁業権漁業を実施するうえでの基本となる計画であるので、他の公益に支障を及ぼさないよう配慮する必要があるため、法第63条にて以下の要件が規定されています。
・それぞれの漁業権が、海区にかかり海面の総合的な利用を推進するとともに、漁業調整その他公益に支障を及ぼさないように設定されていること(同条第1号)。
*「海面の総合的な利用を推進」とは、その海面の自然条件が漁業権の内容たる漁業を営むのに適しており、かつ、漁業生産力の発展を図るという本来の目的を達成する上で漁業権の内容たる漁業を営むことが適当である場合を指します。
・海区漁場計画の作成の時において適切かつ有効に活用されている漁業権(活用漁業権)があるときは、第62条第2校第1号イからハまでに掲げる事項が当該漁業権と概ね等しいと認められる漁業権が設定されていること(同条第2号)。
・前号の場合おいて活用漁業権が団体漁業権であるときは、類似漁業権が団体漁業権として設定されていること(同条第3号)。
・前号の場合のほか、漁場の活用の現況及び次条第2項の検討の結果に照らし、団体漁業権として区画漁業権を設定することが、当該区画漁業権に係る漁場における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合には、団体漁業権として区画漁業権が設定されていること(同条第4号)。
・前条第2校第1号二について、第75条第1項の期間より短い期間を定めるに当たっては、漁業調整のため必要な範囲内であること(同条第5号)。
・それぞれの保全沿岸漁場が、海区に設定される漁業権の内容たる漁業に係る漁場の使用と調和しつつ、水産動植物の生育環境の保全及び改善が適切に実施されるように設定されていること(同条第6号)。
Q68.海区漁場計画を作成するに当たっての具体的な手続きについて教えて下さい。
A. 海区漁場計画は、漁業者にとっては利用する業業を決める重要なものであるので、透明性の高い手続きによって作成されなければならないため、そのための作成手続きが法第64条に規定されています。
①都道府県知事は、農林水産省令で定めるところにより、当該海区において漁業を営む者、漁業を営もうとする者その他の利害関係人の意見を聞きます(同条第1項)。
②上記の意見を踏まえて出した検討結果を公表します(同条第2項)。
③都道府県知事は上記の検討結果を踏まえて海区漁場計画の案を作成します(同条第3項)。
④上記作成をしたときは、海区漁業調整委員会の意見を聞きます(同条第4項)。
⑤海区漁業調整員会が意見を述べようとするときは、あらかじめ期日と場所を公示したうえで公聴会を開き、当該海区で漁業を営む者、営もうとする者その他の利害関係人の意見を聞かなければいけません(同条第5項)。
⑥都道府県知事は、海区漁場計画を作成したときは、当該かいく漁場計画の内容その他農林水産省令で定める事項を公表するととともに、漁業の免許予定日及び第109条の沿岸漁場管理団体の指定予定日並びにこれらの申請期間を工事しなければいけません(同条第6項)。
IV-② 沿岸漁場管理について
Q69.沿岸漁場管理団体とは具体的にはどのような団体ですか?
A. 沿岸漁場管理団体とは、保全沿岸漁場(水産動植物の生育環境を保全する必要がある沿岸漁場のこと(法第60条9項))において、保全活動を主体的に行う団体のことです。都道府県知事が海区漁場計画に基づき、保全沿岸漁場ごとに申請のあった団体から指定することとされています(法第109条1項)。
Q70.沿岸漁場管理団体の指定はどのようになされますか?
A. 法第110条規定の適格性を有すること(法第109条1項第1号)、役員又は職員の構成が保全活動の実施に支障を及ぼす恐れがないこと(同項第2号)、保全活動以外の業務を行なっている場合には、その業務を行うことによって保全活動の敵生活確実な実施に支障を及ぼす恐れがないこと(同項第3号)という要件を満たした場合に申請により都道府県知事が沿岸漁場管理団体として指定します。都道府県知事は、上記指定をする際に、海区漁業調整委員会の意見を聞かなければいけません。
Q71.沿岸漁場管理団体の適格性について具体的に教えて下さい?
A. 法第110条に、以下の各号に該当する場合には沿岸漁場管理団体としての適格性を欠くと規定されています。
・その役員又は政令で定める職員のうちに暴力団員等がある者であること(同条第1号)。
・暴力団員等がその事業活動を支配するものであること(同条第2号)。
・適確な経理その他保全活動を適切に実施するために必要な能力を有すると認められないこと(同条第3号)。
Q72.法第111条第1項により沿岸漁場管理団体は沿岸漁場管理規定を作成することとされていますが、かかる規定に記載すべき事項ついて具体的に教えて下さい。
A. 沿岸漁場管理規定には以下の事項を記載することが要請されています。
・水産動植物の生育環境の保全又は改善の目標(同条第2項第1号)
・保全活動を実施する区域及び期間(同項第2号)
・保全活動の内容(同項第3号)
・保全活動の実施に関し遵守すべき事項(同項第4号)
・保全活動に従事する者のうち保全沿岸漁場において漁業を営む者及びその他の者の役割分担その他保全活動の円滑な実施の確保に関する事項(同項第5号)
・保全活動により保全沿岸漁場において漁業を営む者その他の者が受けると見込まれる利益の内容及び程度(同項第6号)
・前号の利益を受けることが見込まれる者の範囲(同項第7号)
・保全活動に要する費用の見込みに関する事項(同項第8号)
・前各号に掲げるもののほか、保全活動に関する事項であって農林水産省令で定めるもの(同項第9号)。
Q73.沿岸漁場管理規定を作成するにあたり必要な手続きについて教えて下さい。
A. 都道府県知事は、上記認可の申請があったとき、海区漁業調整委員会の意見を聞かなければいけません(法第109条第4項)。そして、都道府県知事は沿岸漁場管理規定の内容が次の各号のいずれにも該当するときは、認可をしなければいけません(同条第5項)。
・保全活動を効果的かつ効率的に行う上で的確であると認められるものであること(同項第1号)
・不当に差別的なものでないこと(同項第2号)
・受益者に第2項第8号の協力を求めようとする時は、その額が利益の内容及び程度に照らして妥当なものであること(同項第3号)。
Q74.沿岸漁場管理団体はどのような活動をすることと規定されていますか??
A. 沿岸漁場管理団体は、沿岸漁場管理規定に基づいて保全活動を行います(法第112条第1項)。そして、保全活動の内容、実施状況、収支状況等を1年に1回以上都道府県に報告しなければいけません(第2項、施行規則第33条)。
Q75保全活動の実施にあたり、保全活動従事者以外で保全活動により利益を受けることが見込まれる者(受益者)の協力が得られないときはどうすれば良いでしょうか?
A. 沿岸漁業管理団体の活動は、そこに生息する水産動植物の生育環境の保全など公益性が高く、その水域の漁業生産力の向上に寄与するものであるので、関係者の協力を斡旋する仕組みが漁業法に定められています。
具体的には、沿岸漁場管理団体は受益者の協力が得られない時は都道府県知事に対して斡旋すべきことを要請することができ(法第113条1項)、知事はその受益者の協力が特に必要であると認めるときは斡旋しなければなりません(法第113条2項)。
Q76.受益者が斡旋を受けたにもかかわらず、その協力が得られない場合はどうなりますか?
A. 斡旋を受けたにも関わらず、受益者の協力が得られず、沿岸漁場管理団体が保全活動を実施する上で支障が生じている場合において、第64条第1項の規定により沿岸漁場管理団体がその支障の除去に関する意見を述べたときは、都道府県知事は、海区漁場計画を定め、又は変更するにあたり、当該意見を尊重します。さらに、保全沿岸漁業で漁業を営む受益者の協力が得られず、保全活動に支障を生じていると知事が認める場合には、知事は、そのような受益者の漁業権に対する条件の付与などの措置を講ずることとされています(法114条2項)。
Q77.保全活動を休廃止する場合の手続きについて教えて下さい。
A. 法第115条第1項において、沿岸漁場管理団体は、都道府県知事の認可を受けなければ、沿岸漁場管理規定に基づく保全活動の全部または一部を休止し、又は廃止してはいけないと規定されています。上記認可により、沿岸漁場管理団体の指定はその効力を失います(第2項)。