Food 法務 第14号 フードデリバリーと運送事業に関する規制について
はじめに
2021年8月に、大阪で許可なくバイク・自動車で料理を配達したとして、Uber Eatsの配達員2名が貨物自動車運送事業法違反の疑いで書類送検されました。ニュース記事によると、配達員は、法律上必要な手続きを取らずに、軽自動車・普通自動車等を利用して配達を行っていたとのことです。
料理の配達が、運送事業に関する規制の対象となることは、一般的にあまり知られていないようです。本コラムでは、これらの規制の概要をご紹介します。
自分で配達する場合は規制対象にならない
飲食事業者の方から、「Uber Eats等のサービスを利用するのではなく、自分で配達することは問題ありませんか?」との質問をいただくことがあります。
こちらについては、問題ありません。運送事業の規制は、あくまで「他人」の荷物を運ぶ場合が対象です。飲食店が、従業員等によって自ら料理を配達する場合には、そもそも規制の対象になりません。
具体的な規制内容
Uber Eatsは、個人事業主である配達パートナーと飲食店をマッチングするサービスです。配達パートナーは、貨物自動車運送事業法上、以下の規制を受けることになり、違反した場合には罰金等の刑事罰の対象となります。
<自転車・バイク>
自転車・125cc以下の排気量のバイク(原付・原付二種(125cc)等)であれば、届出は不要です。これに対して、125cc 超の排気量のバイクであれば、届出が必要になります。
<自動車>
軽自動車(排気量660cc以下)については届出が必要です。これに対して、軽自動車以外の自動車については、届出では足りず、法令試験の受験等をした上で許可を受ける必要があります。
ご紹介したニュース記事では、配達員が届出等の手続きをとっていなかったことから、書類送検されたものです。なお、配達員は、Uber Eatsに対しては自転車・原付を利用すると申告しながら、実際には自動車等を利用していたようです。
タクシーによる配達(いわゆる「タク配」)
コロナ禍を契機に、タクシーによる料理の配達も始まりましたが、法律上は特例的なものです。タクシーやバス等の旅客運送事業と料理等を運ぶ貨物運送事業は別ものであり、それぞれ異なる規制があります。そのため、タクシーで運ぶことができるのは、あくまで「人」だけであり、「料理」等の荷物を運ぶことはできないのが原則です。
しかしながら、国土交通省は、タクシー事業者の救済等を目的として、タクシー事業者が道路運送法の許可を受けた上で、飲食物を配送することを認める運用を始めました。Uber Eats等のサービスを利用しにくい地方圏や、自転車・バイクでの配達が難しい高級料理については、タクシーによる配送が活用されています。
この措置は、期間限定の特例措置となる予定でしたが、2020年9月11日に、期間を限定せずに継続されることが決まりました。
おわりに
以上のとおり、本コラムでは料理の配達に関する規制の概要をご紹介しました。
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