Food法務 第2号 従業員のコロナウイルス感染と労災、企業の安全配慮義務について
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従業員のコロナウイルス感染と労災、企業の安全配慮義務について
はじめに
先日、厚生労働省からコロナウイルスに関する労災認定事例が公表されました。
>>参考:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例
飲食業の事例と小売業の事例が含まれていましたので、こちらをご紹介すると共に、以下では、従業員の方がコロナウイルスに感染した場合の労災・企業としての損害賠償責任についてご説明します。
厚労省が発表した労災認定事例
こちらの「事例5」では、飲食店内においてクラスターが発生したと認められた事例において、感染した従業員に労災が認められています。
また、「事例7」では、(業界は不明ですが)店頭での接客業務に従事していた小売店販売員について、感染経路が特定されていないものの、日々数十人と接して商品説明等を行っていたことから、感染リスクが相対的に高いとされる等の理由により、労災が認められています。
コロナウイルスと労災認定
労災認定にあたっては、業務起因性(業務により感染したこと)が認められることが必要であり、通常は、「業務→感染」という感染経路が特定される必要があります。
しかしながら、コロナウイルスについては、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという特性に鑑み、厚生労働省から、「調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合」には、労災として認定されうるという通知が出ています。
食品・飲食業界の場合、「複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務」や、「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」については、「調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる」とされています。
そのため、そのような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、「業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したもの」と認められるか否か、「個々の事案に即して適切に判断する」とされています。
つまり、同じ飲食店舗から複数の感染者が出た場合や、スーパーマーケットの販売員等のように顧客との近接や接触の機会が多い業務にあたっていた場合には、感染経路が特定できなくとも、労災認定がされる可能性があります。
安全配慮義務違反を理由とした損害賠償責任
従業員がコロナウイルスに感染し、労災と認定された場合、従業員は労災保険の給付を受けることができます。それに加えて、従業員は企業に対して、安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求することも考えられます。
企業は、業務起因性(業務により感染したこと)が認められ、安全配慮義務違反がある場合(具体的には「過失」がある場合)、損害賠償責任を負います。これに対して、労災認定がされるかどうかは、企業に過失があるかどうかと関係ありません。
つまり、企業に過失がないとされれば、「労災認定はされたが、安全配慮義務違反を理由とした損害賠償責任は認められなかった」という結論も、あり得るということです。
企業としての対策(飲食店について)
では、具体的にどのような対応をすれば安全配慮義務違反がないといえるのでしょうか。
飲食店については、(皆様すでにご存知かと思いますが)下記の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(改正)に基づく外食業の事業継続のためのガイドライン」(一般社団法人 日本フードサービス協会、一般社団法人 全国生活衛生同業組合中央会)が重要な指標になります。
まずは、上記ガイドラインに沿った衛生管理を行っていれば、仮に業務によりコロナウイルスに感染した従業員が出たとしても、安全配慮義務違反はないとされる可能性が高まるでしょう。ガイドラインを参考にした、十分な衛生管理が求められます。
また、どのような衛生管理の対策をとったのかについて、きちんと記録をとっておくことが重要です。紛争になったときに事案の成否を左右するのは証拠の有無・充実度であるためです。
記録をつけることを徹底することにより、日々の繁忙等を理由とした衛生管理対策の不徹底を防止することが期待できます。従業員の検温や各種消毒の実施、間隔をあけた席の設置等、実施した衛生管理対策について、日々の記録をつけることを習慣とした方がよいでしょう。
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