Food法務 第9号 消費税法の総額表示義務について

はじめに

  令和3年4月1日以降は、事業者が消費者に対してあらかじめ商品・サービスの価格を表示する場合、「税込価格」を表示しなければなりません。
  本コラムでは、この総額表示義務の概要をご案内いたします。

 

認められる表示の例

 総額表示は、税込みの価格がいくらなのかがわかればOKです。財務省の通知によると、例えば1,000円の商品の場合、以下のように表示することが考えられます。 ・1,100円
・1,100 円(税込)
・1,100 円(税抜価格 1,000 円)
・1,100 円(うち消費税額等 100 円)
・1,100 円(税抜価格 1,000 円、消費税額等 100 円)
・1,100 円(税抜価格 1,000 円、消費税率 10%)
・1,000 円(税込価格 1,100 円)
 なお、税抜・税込の両方を表示する場合には、消費者が税抜価格を税込価格と誤解することのないように注意しなければなりません。
 例えば、税抜価格だけ文字サイズを大きくして、税込価格を目立たなくすること等は避けるべきでしょう。

 

総額表示義務を負う場面

(1)相手方
 総額表示義務は、「消費者」が商品やサービスの価格表示を見て、税込価格を一目で判断できるようにするためのものです。
 従って、商品・サービスを専ら事業者に対して販売する場合(例えば、事業者向けの食品原材料の販売等)では、総額表示義務はありません。

(2)媒体
 事業者が不特定かつ多数の者に対し、あらかじめ販売する商品・サービスの価格を表示するためのものであれば、どのような媒体であっても全て対象になります。
 従って、商品の値札、POP、チラシ、ネット広告等の一切について、総額表示義務が課されます。
 これに対して、相手方に交付する請求書や領収書は、「不特定かつ多数の者」に対して交付するものではありませんので、総額表示義務の対象にはなりません。

(3)具体的な表示方法
ア ユニット価格商品(肉などの量り売り商品)の場合
 広告や店内POP、棚札などに表示されるユニット価格商品の「単価」(例えば、お惣菜100グラムあたり税込220円等)は、総額表示義務の対象です。
 ただし、ユニット価格商品があらかじめパッケージされている場合(プリパック商品)は、プリパックされた商品の「販売価格」自体について、総額表示がされていれば足ります。
 例えば、100グラムあたり200円のお惣菜を、300グラムにパッケージされた形で販売していたとします。
 この場合、本体価格として税込の「660円」という総額が表示されていれば、100グラムあたりの単価表示は「200円(税別)」のような税抜表示でも問題ありません

イ 棚札やPOPで税込価格が表示されている場合
 商品を陳列している棚において、棚札・POP等で税込価格が表示されていれば、商品本体の表示が税抜価格であっても、必ずしも総額表示義務には違反しません。
 ただし、この場合も、棚札・POP等により、消費者が税込価格を一目で分かる状態(税抜価格を税込価格と誤解しない状態)である必要があります。

ウ 通信販売の場合
 インターネットやカタログを用いた通信販売の場合、WEB上・カタログ上に税込価格が表示されていれば足ります。  送付される商品自体は税抜価格のみが表示されている場合でも、総額表示義務には違反しません。

軽減税率が適用される場合

 テイクアウトができる飲食店の場合、テイクアウト(軽減税率)と店内飲食(標準税率)で税率が異なります。
 この場合の具体的な表示方法としては、以下のとおりです。

(1)テイクアウトと店内飲食で異なる税込価格を設定する場合
 それぞれの価格を表示すれば、もちろん問題ありませんが、どちらか片方のみの表示をすることも、直ちに総額表示義務に違反することにはなりません。

 ただし、テイクアウトの金額だけを表示する場合は注意が必要です。
 この場合、店内飲食の税率が高い(つまり税込価格が高い)のに、消費者は表示されたテイクアウトの金額を店内飲食の金額と誤解する可能性があるためです。
 例えば、テイクアウトを前提に、サンドイッチ216円(税抜価格200円)と表示したとします。
 この場合、「店内飲食の場合、税率が異なるため、別価格となります」等の記載をする必要があります。

(2)テイクアウトと店内飲食で、同じ税込価格を設定する場合
 事務処理等を考慮して、税率の違いに関わらず、テイクアウトと店内飲食で同じ金額にすることもあるかと思います。
 この場合は、税込価格を一つ表示すれば足りることになります。
 場合によっては、店内飲食の金額を値下げして、テイクアウトの金額に合わせることもあるでしょう。
 ただし、このような場合でも、「当店では店内飲食についても消費税は8%です」等の表示をすることは認められません。
 事業者が納税する場面においては、店内飲食については10%の税率が適用されることになるからです。

まとめ

 以上のとおり、総額表示義務の概要をまとめました。
 総額表示義務に違反した場合においても、直ちにこれを理由とした罰則が科されるわけではありませんが、しっかりと対応していただく必要があるといえるでしょう。
 特に、インターネット通販をされている場合、一部のページについて修正が抜けてしまうことも考えられますので、ご注意いただければと思います。
 何かご質問等がありましたら、お気軽にご連絡ください。

 

 

 

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