Food法務 第10号 まん延防止等重点措置(まん防)について
はじめに
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、「まん延防止等重点措置」が感染拡大地域で実施されています。
2021年4月22日時点では、大阪・兵庫・京都・愛知・東京・埼玉・千葉・神奈川・宮城・沖縄の計10都府県が対象です。
本コラムでは、先々月のコラムで取り上げた「まん延防止等重点措置」(以下「まん防」といいます。)について、改めて詳しく解説します。
まん防とは
まん防は、新型インフルエンザ等対策特別措置法改正に伴い導入された、新たな感染症対策制度です。
これまで、政府は、緊急事態宣言を発令しない限り、罰則を伴う要請・命令をすることができませんでした。
しかし、まん防が制定されたことにより、緊急事態宣言を発出するには至らない状況であっても、感染拡大地域について罰則を控えた時短要請等をすることができるようになりました。
適用する目安
まん防は、感染状況がステージ3(感染急増段階)相当で適用することとされています。
また、ステージ3に至らなくとも局地的・急速に広がっている場合にはステージ2(感染漸増段階)でも適用される可能性があります。
このように、ステージ4(感染爆発段階)相当で適用される緊急事態宣言と比べて、早い段階で適用される制度となっています。
終了する目安
内閣官房の資料によると、まん防は「措置を実施している区域の感染状況が都道府県全域に感染を拡大させるおそれがない水準か等を踏まえて終了」することになります。
ステージ3相当で解除される緊急事態宣言と比べて、まん防の終了には高いハードルが要求されることになります。
都道府県知事による措置
まん防が公示されると、都道府県知事は次のような措置を執ることができます。
①事業者に対し、感染症拡大防止に必要な措置(※1)を講ずることの要請
②要請に応じない事業者に対する命令
③命令を発するために必要な限度での立入検査
④命令を発出したことの公表
⑤命令に従わない事業者への20万円以下の過料(※2)
※1 「必要な措置」の内容として、(1)営業時間の短縮、(2)酒類提供など、特定の営業形態についての時間短縮、(3)発熱等の症状を呈している者の入場の禁止、(4) 正当な理由がなくマスクの着用等の感染防止措置を講じない者の入場の禁止、(5) 手指の消毒設備/アクリル板の設置、(6) 事業を行う場所の消毒が規定されています。
なお、「必要な措置」については政令で定めることができるため、今後の状況次第では上記以外の内容の要請が認められることになる可能性もあります。
※2 30万円以下の過料が用意されている緊急事態宣言と比べて、過料の金額が低くなっています。
適用地域
まん防は、都道府県単位ではなく、都道府県知事が指定する特定の市町村に発出されます。
そのため、同一都道府県内でも、同措置が適用される地域と適用されない地域に分かれることがあり得ます。
実際に、4月12日から東京都にまん延防止等重点措置が適用されることとなりましたが、その対象地域は23区、立川市、八王子市、武蔵野市、府中市、調布市、町田市に限定されています。
実施期間の延長
政府が定めた期間内に感染状況の改善が認められない場合には、まん防の実施期間を延長することができます。
この延長は6ヶ月を超えない期間ですることができ、延長の回数に制限はありません。したがって、感染状況が改善しない限り、まん防を実施し続けることができることになります。
おわりに
2021年4月22日時点での報道によると、東京・大阪・京都・兵庫については緊急事態宣言を発令する方針であり、東京都においては緊急事態宣言が発令された場合、酒類提供を全面的に禁止する旨の要請を検討しているとのことです。
上記のような要請を行うのであれば、政府に対しては、飲食事業者に対する十分な経済支援策を早急に実施することが強く求められるところです。
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