Food 法務 第16号 牛肉に関するメニュー・料理名の表示と景品表示法違反について
はじめに
食品・飲食事業者の皆様がメニューや料理名の表示をするにあたっては、「景品表示法」に違反しないようにする必要があります。
本コラムでは、牛肉のメニュー・料理名等の表示と景品表示法違反が問題となった実例をご紹介しつつ、注意点についてご説明します。
優良誤認表示とは
消費者から魅力的な商品であると感じてもらうために、メニュー・料理名等については、できる限りキャッチ―で美味しそうな名称をつけたいところです。
しかし、メニュー・料理名等から一般消費者が認識するであろう食材が、実際に利用している食材よりも著しく優良なものであるかのような表示といえる等の場合には、「優良誤認表示」として景品表示法に違反することになります。
牛肉では、特に、輸入品ならば原産国はどこか、国産品ならば原産地はどこか、品種・銘柄は何か、どのランク帯にあたるか、加工は施されているか、添加物は入っているか等が問題になりやすいといえます。
優良誤認表示に当たる場合には、行政から措置命令・課徴金納付命令等を出される可能性もあるため、十分な注意が必要です。
問題となりやすい表示例
「ビーフステーキ」という表示
料理名として「ビーフステーキ」等と表示する場合、一般消費者は「この料理は、牛の生肉の切り身を焼いた料理なんだな」と認識すると考えられます。
それにも関わらず、その料理が牛の成形肉や牛脂注入加工肉を利用していた場合には、一般消費者が誤解しないような表示をしなければなりません。
例えば、料理名を記載したすぐ近くに、成形肉の場合は「成形肉使用」「圧着肉使用」等、牛脂注入加工肉の場合は「インジェクション加工肉」等と、明瞭に記載することが必要と考えられています。
景品表示法違反を理由に行政から処分された実例としては、以下のものがあります。
・ 成形肉を利用していたにも関わらず、「成形肉使用」等と明瞭に記載せず、「ビーフステーキ焼肉ソースランチ」とメニューに表示
・ 牛脂その他の添加物を注入した加工肉を利用していたにも関わらず、「インジェクション加工肉」等と明瞭に記載せず、「牛ロース肉のステーキ」とメニューに表示
「国産」・「和牛」という表示
外国産の牛肉を「国産」と表示することは、もちろん認められません。
また、「和牛」については、農水省の「和牛等特色ある食肉の表示に関するガイドライン(和牛・黒豚)」及び「食品の表示に関する公正競争規約」において規格が定められています。
「和牛」という表示をする場合には、上記ガイドライン等の確認が必要です。
景品表示法違反を理由に行政から処分された実例としては、以下のものがあります。
・ ガイドラインに定められた和牛の定義に該当しない牛の頬肉を利用していたにも関わらず、「ヴァン・ルージュで煮込んだ黒毛和牛頬肉の宝石箱見立て野菜のロンドと共に」とメニューに表示
おわりに
以上のとおり、メニュー・料理名等の表示にあたっては、景品表示法に違反しないよう注意する必要があります。消費者庁からは、「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」が公表されています。こちらも是非ご参照ください。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/140328premiums_5.pdf
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