Food法務 第7号 年末年始にキャンペーンを行う場合の注意点について
年末年始にキャンペーンを行う場合の注意点について
はじめに
食品・飲食事業者の皆様におかれましては、年末年始の機会に、キャンペーンを計画されることも多いのではないでしょうか。
各種キャンペーンは集客のために効果的な施策ですが、特に景品をプレゼントをする場合等には、景品表示法という法律の規制がかかってきます。
この法律に違反したキャンペーンを行ってしまうと、行政からの補助を受けられなくなることや、行政処分等の対象になることもありますので、十分な注意が必要です。
本コラムでは、食品・飲食事業者の皆様にとって身近なキャンペーンの例と、法律に違反しないための注意点の概要をお伝えいたします。
(スペースの関係から、規制の細かい内容については、適宜省略しております。)
景品規制の3パターン
【例1】
●円以上購入した方の中から、抽選で●名様に景品をプレゼント
景品表示法上、このようなキャンペーンは「一般懸賞」と呼ばれます。
一般懸賞の場合、景品について以下のような規制があります。
①取引価額が5000円未満の場合
景品の最高額:取引価額の20倍まで
景品の総額:懸賞に係る売上予定総額の2%まで
②取引価額が5000円以上の場合
景品の最高額:10万円まで
景品の総額:懸賞に係る売上予定総額の2%まで
つまり、1個500円の商品を販売するキャンペーンで、1万円を超える景品をプレゼントすることはできません。
また、キャンペーン全体で、例えば1000万円の売上が予定されているのであれば、その景品の総額は、20万円までとなり、この金額を超える景品をプレゼントすることはできないのです。
【例2】
商店街のイベントとして、抽選会を開催
景品表示法上、このように複数の事業者(※)が参加して行う懸賞は「共同懸賞」と呼ばれます。
共同懸賞の場合、景品について以下のような規制があります。
①取引価額による区別:なし
②景品の最高額:30万円まで
③景品の総額:懸賞に係る売上予定総額の3%まで
つまり、商店街の歳末キャンペーン等として抽選会を行うような場合には、一般懸賞よりも、やや規制が緩やかになります。
ただし、以下の(※)のとおり、共同懸賞の対象となるか否かについては、要件があります。複数の事業者が集まって行えば、当然に共同懸賞になるわけではありません。
(※)
共同懸賞の対象は、商店街振興組合及びこれに準ずる任意商店会(30会員以上)であり、小規模の任意商店会は一般懸賞の対象となります。規制内容が変わってきますので、ご注意ください。
【例3】
購入したか否かに関係なく、来店者全員にもれなくプレゼント
景品表示法上、このようなキャンペーンは「総付景品」と呼ばれます。
総付景品の場合、景品について、以下のような規制があります。
①取引価額が1000円未満の場合
景品の最高額:200円まで
②取引価額が1000円以上の場合
景品の最高額:取引価額の20%まで
つまり、1個800円の商品を販売するキャンペーンで、200円を超える景品をプレゼントすることはできません。
また、キャンペーンの対象となる商品が1000円の場合、景品の最高額は、200円までとなり、この金額を超える景品をプレゼントすることはできないのです。
規制の対象となる「景品」の内容
以上の規制は、いずれも景品表示法上の「景品」に該当する場合が対象です。
食品・飲食事業者の皆様からは、「何かプレゼントをあげるのではなく、値引きすること(割引券の配布等)も「景品」にあたるのか」というご質問をいただくことがよくあります。
これについては、「正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益」と「正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益」の場合は、景品に該当しないとされています。
どの程度であれば景品に該当しないのかという判断は難しいところですが、具体例として、「コーヒー5杯飲んだらコーヒー1杯無料券をサービス」等であれば、景品には該当せず、値引として認められると考えられています。
まとめ
以上のとおり、キャンペーン等は、景品表示法の規制対象となりますので、注意が必要です。
特に、商店街の歳末キャンペーン等については、都道府県の補助事業として、行政から補助を受けていることも多くあると思います。しかし、キャンペーンが景品表示法に違反すると、最悪の場合、行政からの補助が受けられなくなることがあり得ます。
この点は、特にご注意いただければと存じます。
何かご質問等ありましたら、お気軽にご連絡ください。
食品・飲食事業者の皆様にとっては、何かとお忙しい時節柄とは思いますが、くれぐれもお体にお気をつけくださいませ。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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