広域的な食中毒事案への対策強化について~改正食品衛生法①~

はじめに

 食を巡る環境の変化等に応じて食品の安全を確保すべく、食品衛生法が平成30年に大きく改正され、令和3年6月に完全施行されました。そのため、食品等事業者にあっては、改正法に対応した体制を整えることが求められます。

 そこで、本ページでは、改正の対象とされた事項の内、広域食中毒対策(食品衛生法21条の2ないし24条)について、解説していきます。

 広域食中毒対策に関する規律の施行期日は、交付日(平成30年6月13日)から1年以内(食品衛生法等の一部を改正する法律附則1条柱書但書、1条2号)とされ、平成31年4月1日と定められました。

制度内容

 都道府県を跨ぐような広域にわたる食中毒への対策として、広域連携協議会の設置(食品衛生法21条の3第1項)等の制度が新設されました。

改正の経緯

 食品製造の集約化・技術革新が進み、特定の食品が広域に流通するようになるに伴い、同一の原因物質による食中毒も広域に拡大するようになっています。このような中で、平成29年7月から9月に関東地方で同一遺伝子型のO157による食中毒事件が起き、死者1名を含む数十名が被害を受けました。ここまで重大な被害が生じた原因には、①国による情報の取りまとめ、各自治体間への共有に時間を要したこと、及び②広域にわたる食中毒事件への対策が整備されておらず、遺伝子型判別の検査手法が異なっていたため、同時多発的に発生した事件相互の関連性が明らかになるのが遅れたことが挙げられます。この事件を契機に、広域食中毒対策の必要性が改めて認識されました。

 そこで、このような状況を解消し、広域にわたる食中毒事件に対処するべく、国−地方自治体間又は地方自治体間の情報共有体制の整備や、食中毒の原因となる細菌の遺伝子検査手法の統一、国民の安全確保に向けた情報提供体制の整備を行うに至りました。

改正内容

 以下では、改正箇所に焦点を当てて広域食中毒対策について解説していきます。

連携協力体制の構築

 国と都道府県等の連携協力義務の規定が創設されました(食品衛生法21条の2)。改正前から、国と自治体や、自治体間での連携・協力がなされてきましたが、今回の改正は、かかる連携・協力を法律上の義務として明文化した点がポイントです。

 その上で、広域連携協議会の設置が定められました(食品衛生法21条の3第1項)。  

 

 広域連携協議会は、厚生労働大臣がその権限でもって、食品衛生に関する監視又は指導に際して設置するものです。広域連携協議会は、地方厚生局の管轄区域ごとに、当該地方厚生局並びに当該地方厚生局の管轄区域内の都道府県、保健所を設置する市及び特別区によって構成されます(食品衛生法21条の3 第1項、食品衛生法施行規則21条)。また、国立感染症研究所などの研究機関も、必要に応じて加わることが想定されています(食品衛生法21条の3第2項)。そして、厚生労働大臣は、広域食中毒発生時又は発生のおそれがあるときで、必要があると認める場合、広域連携協議会を設置するよう努めなければならないとの努力規定が置かれています(食品衛生法66条)。

 なお、広域連携協議会は、地方厚生局のある7ブロック(北海道、東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国四国、九州)ごとに置かれています。ブロックごとの開催状況は厚労省ウェブサイト(※)をご参照下さい。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/05_00002.html

監視指導指針

 食品衛生法22条1項は、厚生労働大臣及び内閣総理大臣は、国及び都道府県等が行う監視指導の実施に関する指針を定める旨規定しています。また、食品衛生法24条1項は、都道府県知事等は指針に基づき監視指導の実施に関する計画を定める旨規定しています。

 そして、上記指針及び計画においては、監視指導の実施に当たっての国、都道府県等その他関係機関相互の連携協力の確保に関する事項を定めることが、今回の改正により明記されました(食品衛生法22条2項4号、24条2項3号)。

 更に、この改正を受けて、「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」(平成15年厚生労働省告示第301号)にも、以下に掲げるような変更が加えられました。

・広域的な食中毒事案発生時の関係機関の連携体制の確保等の明記

 :研究機関である国立感染症研究所や国立医薬品食品衛生研究所、地方衛生研究所等との連絡・連携体制を確保することで、食中毒事案の原因調査等に専門的知見を取り入れるなど(「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」(平成15年厚生労働省告示第301号)第二の二参照)。

・監視指導計画に記載すべき事項として協議会の活用等を明記(「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」(平成15年厚生労働省告示第301号)第二の三参照)

まとめ

 広域食中毒対策に関する食品衛生法の改正内容について紹介してきました。

 今回の改正は、同一感染源の広域食中毒事件の早期探知のため、効果的な原因調査や適切な情報発信等を目的とするものです。そのために、国・都道府県等における早期の調査方針の共有や情報交換を可能とする広域連携協議会を設置し、厚生労働大臣が協議会を活用して広域的な食中毒事件への対応を行うことができるような仕組みづくりがなされました。

 このような形で、食中毒対策において、国・都道府県等が相互に連携・協力することにより、大規模な食中毒事故の発生・拡大防止につながることが期待されます。

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