特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の届出制度等について~改正食品衛生法③~

はじめに

 食を巡る環境の変化等に応じて食品の安全を確保すべく、食品衛生法が平成30年に大きく改正され、令和3年6月に完全施行されました。そのため、食品等事業者の皆様は、改正法に対応した体制を整えることが求められます。

 そこで、本ページでは、食品衛生法の平成30年に改正された事項の内、特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の報告制度等(食品衛生法8条等)について解説していきます。

 

改正の経緯

 いわゆる「健康食品」については、法律上の定義が存在せず、日本においては、一定の基準を満たしたものについては「保健機能食品」(1)と称することができるとされています(2の「いわゆる『健康食品』とは」参照)。

 これまで、「健康食品」のうち、ホルモン様の作用を持つ成分等を含有する食品による健康被害を訴える事例が、平成297月までの5年間で223件報告された過去があります。このことから、「健康食品」は、健康増進効果等を宣伝するものの、摂取することにより、かえって重大な健康被害に繋がるおそれも孕んでいることが見てとれます。

 そこで、食品衛生法改正の一環として、特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の報告制度等を創設することで、かかる食品に関する健康被害情報の収集体制の構築や、健康被害の発生・拡大の防止が図られました。

 施行期日は、公布日(平成30年6月13日)から2年以内(食品衛生法等の一部を改正する法律(平成30年法律第46条)附則1条柱書本文)とされ、政令(令和元年政令第121号)により、令和2年6月1日と定められました。

1 国が安全性や有効性等を考慮して設定した基準等を満たしている場合、「保健機能食品」と称することが認められており、それ以外の食品にあっては「保健機能食品」と紛らわしい名称や栄養成分の機能及び保険の目的が期待できる用語の表示は禁止されています(食品表示基準9110号、同2318号参照)。

 「保健機能食品」は、食品の目的や機能等の違いにより、「機能性表示食品」(食品表示基準210号、同32項、同182項)、「栄養機能食品」(食品表示基準211号、同7条、同21条)、「特定保健用食品」(食品表示基準29号、同32項、同182項)」の3つに分けられます。

2 厚生労働省「いわゆる『健康食品』のホームページ」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/index.html

 

「健康食品」による健康被害への対応(改正前)

 現行制度における「健康食品」による健康被害への対応手段を、具体的事案も踏まえつつ概観しておきます。

(1)不衛生食品等の販売等の禁止(食品衛生法6条各号)

 腐敗等した食品又は添加物(1号)や有毒・有害物質を含む食品又は添加物(2号本文)などの販売、製造等は禁止されています(食品衛生法6条柱書)。

 具体例として、長寿・滋養強壮を宣伝文句として販売されていたコンフリー及びこれを含む食品について、海外での健康被害が多数報告されたことから、平成16年に食品衛生法62項に該当するものとして販売が禁止されました()。

「シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の取扱いについて」(平成16年6月18日付け食安発0618002号) 

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/dl/anzenkakuho-1a.pdf

(2)新開発食品等の販売禁止(食品衛生法7条)

 厚生労働大臣は、以下に掲げる場合について、食品衛生上の危害の発生を防止するために必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いた上で(食品安全基本法24条1項1号)、当該食品の販売を禁止することができます(食品衛生法7条1項ないし3項)。

① 一般に飲食に供されることがなかった物であって人の健康を損なうおそれがない旨の確証がないもの又はこれを含む物が新たに食品として販売され、又は販売されることとなった場合(1項)

② 一般に食品として飲食に供される物であって当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されているものについて、人の健康を損なうおそれがない旨の確証がない場合(2項)

③ 食品によるものと疑われる人の健康に係る重大な被害が生じた場合において、当該被害の態様からみて当該食品に当該被害を生ずるおそれのある一般に飲食に供されることがなかった物が含まれていることが疑われる場合(3項)

 具体例として、痩身効果や便秘解消を宣伝文句として販売されていたアマメシバについて、海外での健康被害が多数報告され、また、日本においても健康被害が報告されたことから、平成15年に当時の食品衛生法4条の2第2項(現72項)を適用し、暫定流通禁止とされました()。なお、これまでの健康被害については「我が国におけるアマメシバ加工品による健康被害報告事例」として2件報告されており(の(参考)のQ9参照)、そのうち1つの事例については訴訟にもなりました。雑誌を通じて購入したアマメシバ含有食品により、閉塞性細気管支炎を発症した親子(70代女性、50代女性)が雑誌会社、雑誌の特集記事を執筆した医学博士、製造会社、販売会社を被告として不法行為及び製造物責任に基づく損害賠償請求を行い、その結果、雑誌会社以外の被告に対する責任が認められました(名古屋地判平成191130日判タ1281237頁:その後、控訴審たる名古屋高判平成21年2月26日は、被害者の体質や素因等の関与を理由に、損害額を減額しました。)。

「食品衛生法第4条の2第2項の規定に基づく「サウロパス・アンドロジナス(別名アマメシバ)を含む粉末剤、錠剤等の剤型の加工食品」の販売禁止について」(平成15年9月12日付け食安発第0912001号)

https://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/09/dl/h0905-1a.pdf

(3)行政指導

 健康食品によって健康被害が発生したと疑われる場合には、被害情報の報告や製造及び原材料の製造・品質管理等について、行政指導が行われることがあります。もっとも、行政指導は相手方の任意の協力を前提とするものなので、実効性に欠けるという問題点があります。

 行政指導が行われた代表的な具体例として、以下の三つの類型があります。

 第1に、被害情報の収集と報告についてです。健康食品等による健康被害発生時については、被害拡大防止のための対応手順をまとめた「健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領について」という通知が出されており(1)、この通知に則った対応がなされる中で、平成18年にはコエンザイムQ102)、平成29年にはプエラリア・ミリフィカ(※3)について、事業者等は、行政指導により、健康被害情報等の収集や報告を求められました。

 第2に、食品表示に関するものです。平成14年にはガルシニア(4)、平成19年にはスギ花粉(治療又は予防のための製品は、薬事法(現・薬機法)に基づき医薬品として販売停止、回収)(5)について、これらを含む製品は、過剰摂取を控えることやアレルギー反応を起こす可能性について表示をし、消費者に注意喚起するよう指導が行われました。

 第3に、製造管理についてのものです。健康食品のうち、錠剤やカプセル状等の成分が濃縮された形状の食品については、製造工程管理による品質の確保、食品の原材料の安全性の確保のために、「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について」及び 「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」について」という通知が出されており(6)、これに基づき、平成29年に、プエラリア・ミリフィカを含む食品の製造管理について、事業者に対して指導が行われました(※3及び※7)。

1「健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領について」(平成14104日付け医薬発第1004001号)

https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/10/h1004-3.html

2「コエンザイムQ10を含む食品の取扱いについて」(平成18年8月23日付け食安新発第0823001号)

https://www.wam.go.jp/wamappl/bb11GS20.nsf/0/e098ce95a9a756ee492571f80018ad1c/$FILE/20060928sankou5-15-2.pdf

3「ブエラリア・ミリフィカを含む健康食品の取扱いについて」(平成29年7月13日付け薬生食基発0713第1号・薬生食監発07132号)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/pueraria-letter_4.pdf

4「ガルシニア抽出物を継続的に摂取する健康食品に関する情報提供について」(平成14年3月17日付け食発第0307001号)

https://www.mhlw.go.jp/topics/2002/03/tp0307-1.html

5「スギ花粉を含む製品の薬事法上の措置等について」(平成19年4月19日付け薬食監麻発第0419003号・食安新発第0419001号)

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3619&dataType=1&pageNo=1

6「「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について」及び「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」について」(平成 17 年2月1日付け食安発第 0201003 号)

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/dl/kankeihourei_01.pdf

7「プエラリア・ミリフィカを原材料に含む「健康食品」を製造・販売する食品等事業者について(監視指導)」(平成29年9月22日付け事務連絡)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000180221.pdf

(4)消費者への注意喚起

 苦情・相談等のあった健康食品等と健康被害の因果関係が疑われる場合、因果関係が完全に解明されていなくても、調査の結果からその可能性が疑われるなど、健康被害拡大防止のために必要であると認められたときは、消費者に対して注意を喚起するため、健康被害の原因と考えられる健康食品等の製品名等が公表されます(上記(3)の1の別添第4、1(4)参照)。

 具体例として、平成14年にはガルシニアについて、平成18年にはコエンザイムQ10について、平成19年にはスギ花粉について、平成21年にはアガリクスについて、平成29年にはプエラリア・ミリフィカについて、ウェブサイトその他の手段で消費者へ注意喚起がなされています。

被害情報の収集に関する改正について

 上記のとおり、改正前は、食品による健康被害情報の収集が制度化されておらず、行政指導による対応のみによっては、健康被害の発生・拡大を防止するための食品衛生法上の措置を行うための十分な根拠が得られないという問題がありました。そこで、平成30年の改正では、特別の注意を必要とする成分等を含む食品による被害情報の報告を制度化することによって、被害情報の収集等に関する実効性を確保しようとしました。

 以下では、改正食品衛生法8条について説明します。

(1)概要

 食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物であって、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて(食品安全基本法24条1項1号)指定したもの(以下「指定成分等」といいます)を含む食品(以下「指定成分等含有食品」といいます)を取り扱う営業者は、以下のいずれかの情報を得た場合、当該情報を取得した日など特定の事項を記載した届出書により、都道府県知事等に届け出なければなりません(食品衛生法81項、食品衛生法施行規則2条の21項)。

① 取り扱う指定成分等含有食品が人の健康に被害を生じさせた旨の情報

② 取り扱う指定成分等含有食品が人の健康に被害を生じさせるおそれがある旨の情報

 「指定成分等」については、令和4年11月時点で以下のものが指定されており(1)、令和261日から施行されています。なお、これらの指定成分等は、別名で流通していることもありますので注意してください(2の第2参照)。

 指定成分等は、今後追加される可能性があります。

① コレウス・フォルスコリー

 シソ科の植物であり、ダイエット効果等を目的としたサプリメントとして国内外で流通しています。下痢、かゆみ、発疹等の健康被害が国内で報告されています。

② ドオウレン

 ケシ科の植物であり、鎮痛、解毒効果等を目的として流通しています。国内では健康被害情報は報告されていませんが、海外において肝障害等の報告があります。

③ プエラリア・ミリフィカ

 マメ科の植物であり、ホルモン様の作用を含んでおり、豊胸効果、更年期障害の症状緩和等を目的として錠剤等の形態で流通しています。国内において月経不順や、不正出血、かゆみ、発疹、倦怠感等の健康被害が報告されています。

④ ブラックコホシュ

 キンポウゲ科の植物であり、更年期障害の症状緩和等を目的として医薬品や食品として販売されています。国内において、胃痛、月経不順、下痢、嘔吐等の健康被害が報告されています。

1「食品衛生法第8条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する指定成分等」(令和2年厚生労働省告示第119号)

https://www.mhlw.go.jp/content/000614389.pdf

2「食品衛生法等の一部を改正する法律による改正後の食品衛生法第8条の施行に伴う関係法令等の整備について」(令和2年3月27日付け生食発0327第3号)

https://www.mhlw.go.jp/content/000617029.pdf

 なお、健康被害情報の届出や指定成分等含有食品の製造又は加工の基準に関する留意事項については、令和24月に「指定成分等含有食品に関する留意事項について」という通知()(以下、「令和24月通知」といいます)が出されています。以下、同通知を適宜引用しますので、ご参照ください。

「指定成分等含有食品に関する留意事項について」(令和2年4月17日付け薬生食基発0417第1号)

https://www.mhlw.go.jp/content/000622793.pdf

(2) 健康被害情報の収集・評価・対応体制

 指定成分等含有食品を取り扱う営業者は、当該食品による健康被害情報を消費者等から受け付けた上で適切に評価し、都道府県知事等に届け出ることのできる体制を整えることが要求されます(上記「令和24月通知」の別添1、第1、1柱書参照)。

 なお、当該食品の関連事業者が複数ある場合には、具体的な含有成分の種類や量などについては商品の企画・販売を行い、表示責任者となっている営業者の方が把握している実態があることから、表示責任者に健康被害情報を集約させることで効率的・体系的に情報収集が行われることが期待されており、そのため、指定成分等含有食品の表示内容について責任を有する表示責任者は、以下に掲げる要件を満たす安全管理責任者の設置など、健康被害情報の適正な管理を可能とする措置をとることが望ましいとされています(上記「令和24月通知」の別添1、第1、1⑴及び⑵参照)。

① 健康被害情報の収集、検討及びその結果に基づく必要な措置に関する業務(以下「安全確保業務」といいます)を、適正かつ円滑に遂行することのできる者 

② 健康被害情報の適正な取扱いを図るため、販売に係る部門に属さない者その他安全確保業務の適正かつ円滑な遂行に支障をきたすおそれのない者 

(3) 届出事項

 指定成分等含有食品による健康被害情報を得た営業者は、以下に掲げる事項を記載した届出書を都道府県知事等に提出しなければなりません(食品衛生法81項、食品衛生法施行規則2条の2第1項柱書本文)。もっとも、健康被害を受けた者がその情報の提供を拒否していること等により当該者の情報を得ることが困難な場合には、④~⑦に掲げる事項の報告は不要です(食品衛生法施行規則2条の2第1項柱書但書)。なお、上記の「令和24月通知」には、別紙様式として、下記事項を網羅した「健康食品の摂取に伴う有害事象情報提供票」が掲載されており、厚生労働省のホームページではこの票のExcelデータも公開されておりますので()、この票を使用して届出を行うこともできます。

① 指定成分等含有食品が人の健康に被害を生じ、又は生じさせるおそれがある旨の情報を得た日(食品衛生法施行規則2条の2第11号)

② 指定成分等含有食品の製品名(同2号)

③ 指定成分等の含有量(同3号)

④ 健康被害を受けた者の性別、年齢、指定成分等含有食品の摂取状況及び健康被害に係る症状(同4号)

⑤ 健康被害を受けた者が医療機関を受診している場合は、当該医療機関の名称及び所在地(同5号)

⑥ 前号の医療機関における診断結果(同6号)

⑦ 指定成分等含有食品の摂取時に使用していた医薬品等がある場合は、当該医薬品等の名称(同7号)

⑧ その他必要な事項(同8号)

「健康食品の摂取に伴う有害事象情報提供票」[Excel形式]

https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fcontent%2F000625476.xlsx&wdOrigin=BROWSELINK

(4) 届出主体

 届出義務が生じる主体は、指定成分等含有食品を取り扱っている営業者です(食品衛生法81項)。ただし、健康被害情報が入った営業者が指定成分等含有食品の表示内容に責任を有する者でない場合は、表示責任者を通じて届け出ることができます(食品衛生法施行規則2条の2第2項)。

(5) 届出先・時期

 届出先は、「都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長」(食品衛生法8条1項)です。東京都を例にとれば、管轄する保健所となります。

 届出時期については、「遅滞なく」(食品衛生法8条1項)となっていますが、これは事実関係や情報の整理を考慮して「遅滞なく」としたもので、具体的な時期については、個別事情によります。もっとも、厚労省の通達によれば、情報を入手した日から起算して概ね30日以内(死亡を含む重篤な場合は15日以内)とされています(上記「令和24月通知」の別添1、第1、4参照)。

(6) 届出後の措置

 営業者から届出を受けた都道府県知事等は、当該届出に係る事項を、厚生労働大臣に報告しなければなりません(食品衛生法8条2項)。これは、指定成分等含有食品が、特定の都道府県を超えて広域に流通することで類似の健康被害が広域的に拡大するおそれから、健康被害情報を厚生労働大臣の元に集約するための規定です。報告を受けた厚生労働大臣は、薬事・食品衛生審議会など、専門家の知見に基づいて対応策を検討し、健康被害を及ぼすおそれのある指定成分等含有食品につき注意喚起を行ったり、食品衛生法6条や7条に基づく販売禁止措置をとったりすることが想定されます。

(7) 医師等の努力義務

 医師・歯科医師・薬剤師等は、指定成分等によるものと疑われる健康被害の把握に努めるとともに、かかる被害に関する都道府県知事等の調査への協力要請に応じるよう努めなければなりません(食品衛生法8条3項)。

 この努力義務が明文化された背景には、以下の2点がありました。

① 医師等が有用な情報を有している可能性が高いこと

 指定成分等含有食品との関連が疑われる健康被害が生じた場合、消費者が医療機関を受診する等して医師等が有用な情報を得ている可能性が高いと考えられます。それらの情報を、都道府県知事等が行う健康被害の分析に役立てるために医師等の努力義務が明文化されました。

 なお、改正前においても医師等に対して情報収集への協力を求めることがありましたが、そうした調査活動に対する医師等の協力を努力義務として定めたところに、食品衛生法83項の意義があります。

② 健康被害が「食中毒」と診断されない場合の情報収集の必要性

 従来でも、食中毒患者等を診断し、又はその死体を検案した医師については、食品衛生法631項により保健所長への届出義務が医師に課せられていました。しかし、「健康食品」による健康被害は診断が難しく、必ずしも「食中毒患者等」と診断される訳ではないため、同届出義務だけでは「健康食品」による健康被害情報を十分に集めることができませんでした。そこで、別途「健康食品」から生じる健康被害の情報を集めるために、行政調査に対する医師等の協力の努力義務が規定されました。

(8) 営業の停止等

 営業者が食品衛生法8条1項に反した場合、営業の全部若しくは一部の禁止や期間を定めた停止処分が課される可能性があります(食品衛生法601項)。

 

指定成分等含有食品に関するその他の改正点

(1)指定成分等含有食品の製造又は加工の基準の制定

 食品衛生法8条に明示的に規定はされていませんが、8条1項で定める「指定成分等含有食品」について製造又は加工を行う場合の基準が定められ、営業者による適正製造規範(Good Manufacturing Practice)が制度化されました。

 具体的には、食品衛生法13条1項に基づき定められた「食品、添加物等の規格基準」(1)の「第1 食品の部B 食品一般の製造、加工及び調理基準の項」の10款として、指定成分等含有食品を製造し、又は加工する場合は、厚生労働大臣の定める基準に適合する方法で行わなければならない旨が規定され(2)、当該基準として、「指定成分等含有食品の製造又は加工の基準」()が定められました。

1「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第 370号)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/jigyousya/shokuhin_kikaku/index.html

2「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件」(令和2年厚生労働省告示第120号)

https://www.mhlw.go.jp/content/000616990.pdf

3「指定成分等含有食品の製造又は加工の基準」(令和2年厚生労働省告示第121号)

https://www.mhlw.go.jp/content/000616987.pdf

 なお、同基準の留意事項については、上記「令和24月通知」の別添2参照。

 

(2)食品の表示事項の追加

 食品衛生法8条1項の規定に従って、製造、加工又は輸入された指定成分等含有食品は、これまでの食品表示基準に定められた事項に加え、新たに以下の事項を、各表示方法に従って容器包装に表示する必要があります(食品表示基準3条2項の表の「指定成分等含有食品」の項中欄及び下欄)

表示事項

表示方法

指定成分等含有食品である旨

「指定成分等含有食品(〇〇)」と表示します。(〇〇は、食品衛生法第8条第1項に規定する指定成分等の名称)

食品関連事業者の連絡先

食品関連事業者のうち表示内容に責任を有する者の電話番号を表示します。

指定成分等について食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物である旨

「指定成分等とは、食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物です。」と表示します。

体調に異変を感じた際は速やかに摂取を中止し医師に相談すべき旨及び食品関連事業者に連絡すべき旨

「体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。加えて、体調に異変を感じた旨を表示された連絡先に連絡してください。」と表示します。

 

 表示方法など詳しい点については、第58回消費者委員会食品表示部会資料1-1「食品表示基準の一部改正について」()の9頁をご参照ください。

 第58回消費者委員会食品表示部会資料1-1「食品表示基準の一部改正について」 (消費者庁食品表示企画課作成)

https://www.cao.go.jp/consumer/history/06/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/200123_shiryou1_1.pdf

 

おわりに

 特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の届出制度等について紹介してきました。この制度が新たに導入されることにより、当該食品による健康被害の発生及び拡大が、適正かつ迅速に防止されることが期待されます。

 ご不明点等がある場合には、最寄りの保健所等へお問い合わせください。

 

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