食品添加物をめぐる規制
Contents
- 1 はじめに
- 2 食品添加物とは?
- 3 食品添加物の安全性
- 4 食品添加物の使用等に関する規制
- 5 基準や規格に適合しない食品添加物等の使用等の禁止
- 6 輸入における届出、衛生管理が十分でないものの輸入の禁止
- 7 製造・加工施設への食品衛生管理者の設置
- 8 製造等の管理における基準の遵守
- 9 添加物製造業の営業の許可
- 10 自主回収(リコール)情報の報告義務
- 11 食品衛生法による検査等や違反に対する措置
- 12 食品添加物の表示に関する規制
- 13 おわりに
はじめに
食品添加物は、私たちの食生活を豊かにしてくれます。しかし、時に食品添加物は、人の健康に悪影響を及ぼす要因の1つにもなり得るのです。そのため、食品添加物の使用等や表示について、食品衛生法や食品表示基準で各種規制が設けられています。
そこで、本コラムでは、食品添加物の概要に触れた上で、食品添加物の使用等や表示に関する規制について概説していきます。
食品添加物とは?
食品添加物の定義については、食品衛生法4条2項において、「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物」と規定されています。
具体的には、下記表の上欄のような役割を期待して、下欄のような食品添加物が使用されます(※)。
上欄(役割) |
下欄(食品添加物) |
食品の風味や外観を良くする |
甘味料、着色料、香料 |
食品の食感を良くする |
糊料(増粘剤、安定剤、ゲル化剤)、膨張剤 |
食品の品質を保つ |
保存料、酸化防止剤 |
食材を加工しやすくする |
乳化剤、イーストフード |
食品を製造する(製造に不可欠) |
豆腐用凝固剤、かんすい |
[参考]
※ 経済産業省ホームページ「食品添加物とは何だろう?」
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/chemical_wondertown/conveni/page01.html
食品添加物の安全性
食品添加物に潜むリスクと安全性評価
食品添加物は、私たちが日々口にする食品の味や香り、食感などを良くしたり、食品を長持ちさせ、食品の無駄を減らしたりすることに役立てられています。その一方で、人の健康に悪影響を及ぼさないと認められた物質以外のものが食品に使用されたり、悪影響が生じないと考えられる量を超えて摂取されたりした場合、食品添加物は私たちの健康を脅かすリスクとなるおそれがあります。
そのため、食品の安全性を確保するためには、これに使用される食品添加物の安全性について適切なリスク分析を行うことが不可欠です。
厚生労働省では、食品安全委員会によって実施される食品添加物の安全性評価(食品健康影響評価)の結果に基づいて、薬事・食品衛生審議会で審議・評価を行い、その意見を踏まえて、人の健康を損なうおそれがないと認められる食品添加物の指定(食品衛生法12条)や、食品ごとの使用量・使用基準の設定などが行われています(※)。
[参考]
※ 厚生労働省ホームページ「よくある質問(消費者向け) Q3. 食品添加物は食べても安全なのですかhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/qa_shohisya.html
使用できる食品添加物の分類・リスト等
日本で使用が認められている食品添加物は、以下の4つに分類されます(※)。
【原則として使用が認められるもの】
指定添加物 |
食品衛生法12条に基づき、厚生労働大臣が定めたもの。 例)ソルビン酸、キシリトールなど |
【例外的に使用が認められるもの】
既存添加物 |
日本において長年広く使用されてきたものとして、リスト化された添加物。 例)クチナシ色素、タンニンなど |
天然香料 |
動植物から得られる天然の物質(食品衛生法4条3項)。食品の香りづけに使用され、その使用量は僅少にとどまるのが通常である。 例)バニラ香料、カニ香料など |
一般飲食物添加物 |
通常食品として飲食の用に供されるものが、食品添加物として使用される場合の当該食品(食品衛生法12条括弧書き)。 例)イチゴジュース、寒天など |
[参考]
※ 厚生労働省ホームページ「食品添加物 添加物のリスト等」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html
※ 厚生労働省「厚生労働省の取り組み 8 食品添加物の安全確保」https://www.mhlw.go.jp/content/000798511.pdf
食品添加物の使用等に関する規制
ここまで、食品添加物の概要を見てきましたが、ここからは、上記Ⅲ1のような食品添加物に潜むリスクを回避するために、どのような規制が設けられているのかについて概観していきます。
以下では、食品衛生法が定める食品添加物の使用等に関する規制についてご紹介します。
衛生的な取扱い
販売の用に供する食品添加物の採取や製造、加工、使用、調理、貯蔵、運搬、陳列、授受は、清潔で衛生的に行わなければなりません(食品衛生法5条)。
不衛生な食品添加物の使用等の禁止
次のような食品添加物については、販売、又は販売の用に供するために採取や製造、輸入、加工、使用、調理、貯蔵、陳列することが認められていません(食品衛生法6条柱書)。
① 腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの(同条1号。ただし、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りではありません)。
② 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの(同条2号。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合(※)においては、この限りではありません)。
③ 病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの(同条3号)。
④ 不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの(同条4号)。
※ 食品衛生法6条2号の「人の健康を損なうおそれがない場合」として、同法施行規則1条は、以下のとおり定めています。
ⅰ. 有毒な又は有害な物質であっても、自然に食品又は添加物に含まれ又は附着しているものであって、その程度又は処理により一般に人の健康を損なうおそれがないと認められる場合(同条1号)
ⅱ. 食品又は添加物の生産上有毒な又は有害な物質を混入し又は添加することがやむを得ない場合であって、かつ、一般に人の健康を損なうおそれがないと認められる場合(同条2号)
特定の地域・人により製造等された食品添加物等の使用等の禁止
特定の国若しくは地域において、又は特定人により採取、製造、加工、調理又は貯蔵される食品添加物について、食品衛生法26条及び28条の検査(下記11⑴及び⑵)の結果、以下のいずれかに該当するものが相当数発見されたこと、生産地における食品衛生上の管理状況その他の厚生労働省令で定める事由(※)からみて、以下のいずれかに該当する食品添加物が相当数含まれるおそれがある場合において、食品衛生上の危害を防止するために特に必要があると認めるときは、厚生労働大臣は、当該特定の食品添加物を販売し、又は販売の用に供するために採取や製造、輸入、加工、使用、調理することを禁止することができます(食品衛生法9条1項柱書)。
① 食品衛生法6条各号(上記2)に掲げる食品添加物(同項1号)
② 同法13条1項(下記4⑶)に基づき定められた規格に合わない食品添加物(同項3号)
また、同法12条(下記4⑴及び⑵)で禁止されている食品添加物を含む食品(同項2号)、同法13条1項(下記⑶)により定められた基準に合わない方法により食品添加物を使用した食品(同項4号)についても同様です。
※ 食品衛生法9条1項柱書の「その他の事由」として、同法施行規則3条1項は、以下のとおり定めています。
ⅰ 特定の国若しくは地域において採取、製造、加工、調理若しくは貯蔵され、又は特定の者により採取、製造、加工、調理若しくは貯蔵される特定の食品添加物(特定食品添加物)につき、同法26条又は28条の検査等の結果、同法9条1項各号に掲げる食品又は添加物に該当するものの総数が検査対象となった食品又は添加物の総数のおおむね5%以上であること(同項1号)
ⅱ 特定食品添加物が採取、製造、加工、調理又は貯蔵される国又は地域における当該特定食品添加物等に係る食品衛生上の管理体制等(同項2号)
ⅲ 特定食品添加物に起因し、又は起因すると疑われる健康被害が生じたこと(同項3号)
ⅳ 特定食品添加物を汚染し、又は汚染するおそれがある事態を生じたこと(同項4号)
指定添加物以外の使用等の禁止
食品添加物の指定制度
上記Ⅲ2のとおり、人の健康を損なうおそれのないものとして厚生労働大臣の指定を受けた食品添加物以外のものを販売し、又は販売の用に供するために製造や輸入、加工、使用、貯蔵、陳列することは、原則として許されません(食品衛生法12条)。
食品添加物の指定については一定の指針が示されており、以下のような点を科学的に評価し、人の健康を損なうおそれがなく、その使用が消費者に何らかの利点を与えるものであるか検討されます(※)。
安全性 |
食品添加物の安全性が、要請された使用方法において、確認されること |
有効性 |
|
また、実際に指定を受けた食品添加物の一覧については、食品衛生法施行規則12条に基づき、同法施行規則別表第1から確認することができます。
[引用]
※ 厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官「『食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針』の一部改正について」(令和4年9月29日生食発0929第3号)の別添のⅡ、2-3頁https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001000749.pdf
適用除外
他方、食品衛生法12条は、販売等が禁止される食品添加物から、「天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるもの」を明示的に除外しており(食品衛生法12条括弧書き)、厚生労働大臣の指定を受けない食品添加物であっても、それが天然香料又は一般飲食物添加物のいずれかに該当する場合には、例外的に販売等が認められます(上記Ⅲ2参照)。
また、平成7年の食品衛生法改正に伴う附則(平成7年5月24日法律第101号)3条は、既存添加物について、食品添加物の指定制度は適用されないとしています。
注意事項-食品衛生法13条1項による基準・規格への準拠の必要性
ここで注意しなければならないのは、リスト化された食品添加物であれば、いかなるものをいかようにも使用することが許されるわけではない点です。食品衛生法13条1項は、厚生労働大臣において、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品又は食品添加物の使用等に関する基準や、食品又は食品添加物の成分に関する規格を定めることができる旨規定しており、実際に、多くの指定添加物について成分規格が定められています(※1。一部の既存添加物や一般飲食物添加物についても同様です。)。そして、食品添加物に関する使用基準等や成分規格をまとめて収載したものとして、食品添加物公定書も作成されています(食品衛生法21条。※2)。リスト化された食品添加物を使用等する場合は、これら基準や規格に沿ったものでなければなりません(下記5参照)。
なお、成分規格が定められていない食品添加物については、製造者による責任ある品質管理が求められますが、(一社)日本食品添加物協会によって自主規格が定められ、公表されています(「第5版 既存添加物自主規格」として刊行)。
[参考]
※1 厚生労働省「食品 添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)の第2 添加物
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186592.html
※2 厚生労働省「第9版 食品添加物公定書」(2018)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/kouteisho9e.html
基準や規格に適合しない食品添加物等の使用等の禁止
厚生労働大臣によって定められた食品添加物の製造基準や使用基準、保存基準、成分規格等(上記4⑶)に適合しない食品や食品添加物を、製造、輸入、加工、使用、調理、保存又は販売してはいけません(食品衛生法13条2項)。これら基準又は規格の詳細については、上記4⑶の注(※1及び※2)より参照可能です。
なお、成分に関する規格が定められた食品添加物のうち、政令で定めるもの(タール色素。同法施行令4条1項)については、登録検査機関の検査を受け、これに合格した旨の表示が付されたものでなければ、これを販売し、販売の用に供するために陳列又は営業上使用することができません(同法25条1項)。
輸入における届出、衛生管理が十分でないものの輸入の禁止
輸入における届出、衛生管理が十分でないものの輸入の禁止
輸入の届出
輸入食品等については、規格基準や使用が許される食品添加物の種類が国によって異なり、また、製造過程の状況等が分かり難いなどの特殊事情があります。そこで、輸入食品等の実態を把握し、食品衛生を確保するため、販売又は営業上使用する食品や食品添加物等を輸入する場合は、輸入者に対して輸入届出の義務が課せられています(食品衛生法27条。手続等については、同法施行規則32条・33条、及び※参照)。届出は検疫所で受け付けており、食品衛生監視員が適法な食品等であるかの審査や、検査の要否の判断を行います。
[参考]
※ 厚生労働省「食品衛生法に基づく輸入手続」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144562.html
衛生管理が十分でない食品添加物の輸入の禁止
HACCP(※1)に基づく衛生管理措置を講じる必要のあるものとして厚生労働省令で定める食品添加物等は(※2)、厚生労働大臣において、当該措置が確実に講じられていると定められた国や地域、施設で製造又は加工されたものでなければ、販売の用に供するために輸入することが認められません(食品衛生法11 条1項、同法施行規則11条の2第1項)。
また、同法6条各号(上記2)に該当しないこと等を確認するために、食品衛生上の管理状況の証明が必要であるものとして厚生労働省で定める食品添加物等については(※3)、輸出国の政府機関の発行に係る、当該事項が記載された証明書又はその写しの添付がなければ、販売の用に供するために輸入することが認められません(同法11 条2項、同法施行規則11条の2第2項・3項)。
[参考]
※1 HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point;ハサップ)
国際的に認められた製品の安全性を確保するための衛生管理手法のこと。食品等事業者において、自ら危害要因(食中毒菌汚染や異物混入等)を把握し、原材料の入荷から製品の出荷に至る一連の工程の中で、当該危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理する。詳しくは、下記URL(厚生労働省「HACCP (ハサップ)」)参照。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html
※2 食品衛生法施行規則11条の2第1項は、同法11条1項に規定する厚生労働省令で定める食品又は添加物を、獣畜及び家きんの肉及び臓器としています。これらについてHACCPに基づく衛生管理措置が確実に講じられていると定められた国若しくは地域、又は施設は、下記URL(「食品衛生法第十一条第一項の規定により厚生労働大臣が定める国若しくは地域又は施設」(厚生労働省告示第二百二十六号)(令和2年5月29日))より確認できます。https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78ab7642&dataType=0&pageNo=1
※3 食品衛生法施行規則11条の2第2項は、同法11条2項に規定する厚生労働省令で定める食品又は添加物を、生食用のかき及びふぐとしています。
製造・加工施設への食品衛生管理者の設置
食品衛生法13条1項の規定により規格が定められた食品添加物(上記4、⑶参照)を製造又は加工する営業者は、その製造又は加工を衛生的に管理させるため、施設ごとに専任の食品衛生管理者を置かなければなりません(食品衛生法48条1項本文、同法施行令13条)。
食品衛生管理者になるには一定の要件を充足する者であることを要し(同法48条6項)、食品衛生管理者を置いた場合には、営業者は、当該者の氏名等の事項を、15日以内に、施設の所在地の都道府県知事に届け出なければなりません(同条8項前段)。
なお、営業者が自ら食品衛生管理者になることもでき、その場合には、当該施設に別途食品衛生管理者を置く必要はありません(同条1項ただし書)。営業者は、自ら食品営業者となった旨等の事項を、当該施設の所在地の都道府県知事に届け出る必要があります(同条8項前段)。
製造等の管理における基準の遵守
製造等の管理における基準の遵守
有毒、有害物質の混入防止措置に関する基準
厚生労働大臣は、食品添加物の製造又は加工の過程で有毒又は有害な物質が混入することを防止するための措置について基準を定めることができ(食品衛生法50条1項、※)、かかる基準が定められた場合には、営業者は、これを遵守しなければなりません(同条50条2項)。
[参考]
※ 食品衛生法19条の18第1項(食品衛生法の一部を改正する法律(昭和47年6月30日法律第108号)によって新設。現50条1項)に基づき、「食品又は添加物の製造又は加工の過程における有毒な又は有害な熱媒体の混入防止のための措置に関する基準」(昭和49年12月4日厚生省告示第339号)が告示されています。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78344000&dataType=0&pageNo=1
衛生管理に関する基準
厚生労働大臣は、営業(業として、食品添加物を採取、製造、輸入、加工、調理、貯蔵、運搬、販売することが含まれています。食品衛生法4条7項)の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置として、以下の事項に関する基準を定めるものとされており(同法51条1項柱書)、営業者はこれを遵守しなければなりません(同条2項)。
① 施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理に関すること(同法51条1項1号、同法施行規則66条の2第1項及び別表第17)
② 食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組に関すること(同法51条1項2号、同法施行規則66条の2第2項及び別表第18各号)
これにより、原則(※1)として全ての営業者に、「HACCPに沿った衛生管理基準」(HACCPについて、上記6⑵の※1参照)の遵守が求められます。
営業者は、HACCP7原則に基づき、自らが、使用する原材料や製造方法等に応じ、計画を作成し、管理を行う衛生管理(HACCPに基づく衛生管理)を実施するのが基本ですが、小規模事業者等については、取り扱う食品等の特性や規模に応じた弾力的な衛生管理(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)によることができます(※2)。
この「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に取り組む際の参考として、各食品関係団体が作成し、厚生労働省が内容を確認した「手引書」が厚生労働省のWeb サイトに掲載されており、(一社)日本食品添加物協会が作成した「食品添加物製造における HACCP 導入の手引書~HACCP を取り入れた衛生管理~」も同サイトから閲覧可能です(※3)。
なお、「公衆衛生上必要な措置」について、都道府県知事等は、条例で規制を付加することができますので(同法51条3項)、営業地域の条例にも留意する必要があります。
[参考]
※1 営業者であっても、食品衛生法施行規則66条の2第4項で定める者については、「公衆衛生に与える影響が少ない営業」を行う者として、HACCP に沿った衛生管理(衛生管理計画の作成並びに衛生管理の実施状況の記録及び保存)は、「必要に応じて」行うこととされており、義務ではありません。
同法施行規則 66 条の2第4項が定める者は次の通りです。
ⅰ 食品又は食品添加物の輸入をする営業を行う者(同項1号)
ⅱ 食品又は食品添加物の貯蔵のみ又は運搬のみをする営業を行う者(食品の冷凍又は冷蔵業を営む者を除く)(同項2号)
ⅲ 容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品又は食品添加物のうち、冷凍又は冷蔵によらない方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化により食品衛生上の危害の発生のおそれのないものの販売をする営業を行う者(同項3号)
ⅳ 器具又は容器包装の輸入をし、又は販売をする営業を行う者(同項4号)
※2 「HACCPに基づく衛生管理」及び「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の詳細については、厚生労働省ホームページ「HACCPに基づく衛生管理」「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」参照https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/01_00020.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/01_00019.html
「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」の対象となる小規模事業者等の要件は政令及び省令で定められており(食品衛生法施行令34条の2、同施行規則66条の3及び4)、例えば、「食品」の製造等をする営業を行う者のうち、「食品」の取扱いに従事する者の数が50人未満の事業場を有する営業者がこれに該当しますが(同法施行規則 66 条の4第2号)、同等の規模を有する「添加物」を製造する営業者もこれに含まれるとされています(「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政省令の制定について」(最終改正:令和3年8月5日生食発 0805 第1号)の別添2-8⑴)。https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000816176.pdf
※3 厚生労働省ホームページ「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の「食品等事業者団体が作成した業種別手引書」参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/01_00019.html
添加物製造業の営業の許可
食品衛生法13条1項の規定により規格が定められた食品添加物(上記4⑶参照)の製造(小分けを含みます。)をする場合には、「添加物製造業」としての施設基準を満たし同法54条、同法施行規則66条の7)、都道府県知事の営業許可を得なければなりません(同法55条1項・2項柱書本文、同法施行令35条32号)。
自主回収(リコール)情報の報告義務
消費者への情報提供や行政による的確な監視指導を実現するため、営業者が、食品衛生法6条(上記2)、9条1項(上記3)、11条(上記6⑵)、12条(上記4⑴及び⑵)、13条2項(上記5第1段落)、20条(下記Ⅴ2⑴:公衆に危害を及ぼすおそれがある虚偽・誇大な表示・広告の禁止)等の規定に違反し、又は違反するおそれがある場合に、その食品・食品添加物等を回収するときは、遅滞なく回収に着手した旨及び回収の状況を都道府県知事等に届け出なければなりません(食品衛生法58条1項)。ただし、食品衛生法59条の命令を受けて回収をするとき、及び食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合として厚生労働省令・内閣府令で定めるときには、届出をする必要はありません(同法58条1項柱書括弧書き、※)。
[参考]
※ 「食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合として厚生労働省令・内閣府令で定めるとき」について、「食品衛生法第58条第1項に規定する食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合等を定める命令」(令和元年内閣府・厚生労働省令第 11 号)1条は以下の場合を規定しています。
ⅰ 回収対象の食品添加物等が不特定かつ多数の者に対して販売されたものでなく、容易に回収できることが明らかな場合ⅱ 回収対象の食品添加物等を消費者が飲食の用に供しないことが明らかな場合
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=501M60000102011_20210601_000000000000000&keyword
食品衛生法による検査等や違反に対する措置
食品衛生法による検査等や違反に対する措置
命令検査
食品衛生法6条2号・3号(上記2)に掲げる食品添加物や、同法13条1項(上記4⑶)に基づき定められた規格に合わない食品添加物などを発見した場合において、食品衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認められるとき、都道府県知事又は厚生労働大臣は、当該食品添加物等について検査を受けるべきことを命ずることができるとされています同法26条1項ないし3項)。そして、これらの命令を受けた者は、当該検査を受け、その結果についての通知を受けた後でなければ、当該食品添加物等を販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはなりません(同法26条4項)。
報告の要求、検査、収去
厚生労働大臣、内閣総理大臣、又は、都道府県知事等が必要と認めた場合、営業者その他の関係者は必要な報告を求められたり、営業の場所、事務所、倉庫その他の場所の臨検、販売・営業用の食品・食品添加物等、営業の施設、帳簿書類その他の物件検査試験の用に供するのに必要な限度における、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品・食品添加物等の無償で収去を受けたりする可能性があります(食品衛生法28条1項)。
廃棄等の処置命令
営業者が、食品衛生法6条(上記2)、9条1項(上記3)、11条(上記6⑵)、12条(上記4⑴及び⑵)、13条2項(上記5第1段落)等に違反した場合、厚生労働大臣又は都道府県知事により、営業者若しくは当該職員に対し当該違反に係る食品添加物等の廃棄、又はその他営業者に対し食品衛生上の危害を除去するために必要な処置の実施がじられる可能性があります(同法59条1項)。
また、営業者が同法20条(下記Ⅴ2⑴)に違反した場合においては、営業者らに対し当該違反に係る食品添加物等の廃棄、又はその他営業者に対し虚偽の若しくは誇大な表示若しくは広告による食品衛生上の危害を除去するために必要な処置の実施が命じられる可能性があります(同法59条2項)。
営業の許可取消、禁停止等
食品衛生法60条1項
営業者が、以下の場合に該当するとき、営業許可が取り消され、又は営業の全部若しくは一部が禁止され、若しくは期間を定めて停止されるおそれがあります。
①同法6条(上記2)、9条1項(上記3)、11条(上記6⑵)、12条(上記4⑴及び⑵)、13条2項(上記5第1段落)、20条(下記Ⅴ2⑴)、25条1項(上記5第2段落)、26条4項(上記⑴)、48条1項(上記7)、50条2項(上記8⑴)、51条2項(上記8⑵)等の規定に違反した場合
② 同法55条1項若しくは3項に該当する場合
③ 同法55条3項によって営業の許可(上記9)に付せられた条件に違反した場合
実際に、昨年12月、店頭販売されていた味付けゆで卵の製造過程で、指定外の食品添加物が使用されていたことが明らかになり、製造者に対して、食品衛生法60条1項に基づく無期限の営業停止処分がなされました。
食品衛生法60条2項
輸入を行う営業者が、同法6条(上記2)、9条1項(上記3)、11条(上記6⑵)、12条(上記4⑴及び⑵)、13条2項(上記5第1段落)、26条4項(上記⑴)、50条2項(上記8⑴)、51条2項(上記8⑵)等の規定に違反した場合、営業の全部若しくは一部を禁止され、又は期間を定めて停止されるおそれがあります。
食品衛生法61条
営業者が、その営業の施設につき、同法54条の規定による施設基準(上記9)に違反した場合、当該施設の整備改善を命じられ、又は営業の許可を取り消され、若しくはその営業の全部若しくは一部を禁止され、若しくは期間を定めて停止されるおそれがあります。
罰則
食品衛生法は、第11章において、同法における諸規定に違反した場合の罰則について定めています。具体的には、刑の軽重の別により、以下のように定めています。
なお、同法48条1項(上記7)に基づき食品衛生管理者の置かれている施設において食品衛生法違反があった場合には、その食品衛生管理者が直接違反行為を行っていなくても、その職務を怠ったものとして罰金刑が科され得ます(食品衛生法87条)。また、法人の代表者、法人又は人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し違反行為を行ったときには、その法人又は人に対しても罰金刑が科されます(同法88条:両罰規定)。
食品衛生法81条1項
以下に掲げる者等は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます(併科の可能性もあり。同条2項)。
① 同法6条(上記2)、12条(上記4、⑴及び⑵)に違反した者
② 同法59条1項・2項(上記⑶)による命令、60条(上記⑷)の処分に違反して営業を行った者同法81条1項3号)
食品衛生法82条1項
次の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられます(併科の可能性もあり。同条2項)
:同法13条2項(上記5第1段落)、20条(下記Ⅴ2⑴)、55条第1項(上記9)等
食品衛生法83条
以下に掲げる者等は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
① 11条(上記6⑵)、25条1項(上記5第2段落)、26条4項(上記⑴)に違反した者(同法83条1項1号)
② 9条1項(上記3)の禁止に違反した者(同法83条1項2号)
③ 54条による施設基準(上記9参照)、55条3項によって営業の許可(上記9)に付せられた条件に違反した者(同法83条1項4号)
④ 61条(上記⑷ウ)による命令・処分に違反して営業を行った者(同法83条1項5号)
食品衛生法85条
以下に掲げる者等は、50万円以下の罰金に処せられます。
① 同法28条1項(上記⑵)による臨検検査又は収去を拒み、妨げ、又は忌避した者(同法85条1号)
② 同法28条1項(上記⑵)による報告をせず、又は虚偽の報告をした者(同法85条2号)
③ 同法27条(上記6、⑴)、48条8項(上記7)、58条1項(上記10)による届出をせず、又は虚偽の届出をした者(同法85条3号)
食品添加物の表示に関する規制
食品衛生法は、上記Ⅳのように、食品添加物の使用等について幅広い規制を設けています。しかし、一方で、販売の用に供する食品添加物の表示については、基準の設定を食品表示法に委ねています(食品衛生法19条3項)。
そこで、以下では、食品表示法(及び同法4条1項に基づいて定められた食品表示基準)による食品添加物に関する表示規制を中心的にご紹介します。
食品表示法による表示の規制
食品表示法及び食品表示基準の概要
食品表示法は、食品表示に関する基準を定める法律で、食品衛生法・JAS法・健康増進法の三法の食品表示に関する規定を一元化した法律として平成27年4月に施行されました(※)。
食品表示法は、食品の安全確保や消費者による自主的・合理的な選択の確保のため、4条1項において、食品関連事業者等が食品の販売をする際に表示すべき事項及び表示をする際に遵守すべき事項を内容とする表示の基準の策定を内閣総理大臣に委任しており、それによって制定されたのが「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)です。そして、食品関連事業者等は、食品表示基準に従った表示をすることが義務付けられています(食品表示法5条)。
食品表示基準は、食品関連事業者等が食品を販売する場合を適用の対象としており、レストラン等で「設備を設けて飲食させる場合」は、同基準40条(生食用牛肉の注意喚起の表示)を除き、適用されません(食品表示基準1条)。
食品表示基準では、食品を「加工食品」「生鮮食品」「添加物」に区分し、それぞれの表示についてのルールを規定しています。さらに加工食品と生鮮食品では、消費者向けに販売する「一般用」と、加工食品の原材料となるなど消費者向けに販売される以外の「業務用」の区分があり、これらの区分ごとに、義務表示事項、任意表示事項、表示の方式、表示禁止事項等が定められています。
[参考]
※ 消費者庁「食品表示法の概要」平成25年6月https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/130621_gaiyo.pdf
食品関連事業者が一般用加工食品を販売する場合(食品添加物を使用している場合)
表示義務と表記方法
食品関連事業者(※1)が容器包装に入れられた(※2)一般用加工食品(※3)を販売する場合、当該食品に含まれるすべての食品添加物について表示を行わなければならないのが原則です(食品表示基準3条1項、同項の表の「添加物」の項)。
食品添加物は、用途や物質等の別により、次の①ないし③のように表記します(※4)。
[参考]
※1 食品の製造、加工(調整及び選別を含む。)若しくは輸入を業とする者(当該食品の販売をしない者を除く。)又は食品の販売を業とする者のこと(食品表示法2条3項1号)。
※2 容器包装に入れないで販売される食品であっても、消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第1 39号)の別添 添加物1-6に掲げる添加物を使用した食品については、当該添加物を使用した旨の表示をするよう指導されています(同通知本体(加工食品)1⑷③キ(7頁)、及び別添 添加物 1-6(25頁)参照)。
(本体)
(別添 添加物)
※3 加工食品とは、製造又は加工された食品として、食品表示基準別表第1に掲げられているものをいいます(食品表示基準2条1項1号)。中でも、消費者に販売される形態となっているもの以外の加工食品を業務用加工食品といい(同基準2条1項3号)、業務用加工食品以外の加工食品を一般用加工食品と言います(同基準3条1項柱書本文)。
※4 ただし、食品表示基準別表第4の上欄に掲げる食品にあっては、同表の中欄に掲げる表示事項について、同表の下欄に定める表示の方法に従い表示されなければなりません。同表において、「添加物」についての表示方法が規定されている食品がありますので、注意が必要です。
①「物質名」と「用途名」の併記による表示
食品添加物は様々な目的で使用されますが(上記Ⅱ参照)、使用目的を表示した方が消費者の購入の判断に役立つと考えられるものは、「用途名」という使用目的を表す名称も併記します(食品表示基準3条1項の、同項表の「添加物」の項の下欄1項柱書。※1)。
具体的には、食品表示基準別表第6の上欄に掲げるものとして使用される食品添加物については、「物質名」(下記③参照)及び同表下欄に掲げる「用途名」の表示をします。
【食品表示基準別表第6】
上欄(用途) |
下欄(用途名) |
甘味料 |
甘味料 |
着色料 |
着色料 |
保存料 |
保存料 |
増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料 |
|
酸化防止剤 |
酸化防止剤 |
発色剤 |
発色剤 |
漂白剤 |
漂白剤 |
防かび剤又は防ばい剤 |
防かび剤又は防ばい剤 |
食品表示基準別表6の上欄に掲げるものとしての使用が主たる用途と考えられる食品添加物について、消費者庁から出された通知に例示されていますので、ご参照ください(※)。ただし、同通知にリスト化された食品添加物であっても、食品表示基準別表第6の上欄に掲げる用途以外の目的で使用したことが明らかな場合は、下欄に掲げる用途名の表示は不要です。逆に、同通知にリスト化されていない食品添加物であっても、食品表示基準別表第6の上欄に掲げる用途で使用された場合は、下欄に掲げる用途名の表示が必要となります。
なお、併記しなくても使用目的がわかる場合は、用途名を省略できます。具体的には、次の場合です(食品表示基準3条1項、同項の表の「添加物」の項の下欄4項)。
用途名の表示がなくても使用目的がわかる場合 | 省略可能な用途名 |
添加物を含む旨の表示中に、「色」の文字を含む場合 |
着色料 |
添加物を含む旨の表示中に「増粘」の文字を含む場合 |
増粘剤又は糊料 |
[参考]
※1 具体的な表示例については、東京都保健医療局「食品衛生の窓 一般用加工食品(添加物)」の「添加物の表示方法 ②用途名表示」参照https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/shokuhyouhou_kakou_additives.html
※2 消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号)の別添 添加物1-3(指定添加物について)、」(11頁以下)「別添 添加物2-1」及び「同2-3」(指定添加物以外について)(26頁以下、及び55頁以下)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230726_02.pdf
② 用途別の「一括名」による表示
食品添加物は複数の組み合わせで効果を発揮することが多く、それゆえに個々の成分を表示する必要性の低いと考えられる食品添加物や、食品中に通常存在する成分と同様の食品添加物については、使用目的を分かり易く一括名で表示することも認められています(食品表示基準3条1項の表の「添加物」の項の下欄3項後段)。
具体的には、食品表示基準別表第7上欄に掲げる目的で使用される食品添加物について、同表下欄に掲げる表示でもって代えることができます(各一括名の定義及びその添加物の範囲について、※参照)。
【食品表示基準別表第7】
上欄(使用目的) |
下欄(一括名) |
イーストフード |
イーストフード |
ガムベース |
ガムベース |
かんすい |
かんすい |
酵素 |
酵素 |
光沢剤 |
光沢剤 |
香料 |
香料 |
酸味料 |
酸味料 |
チューインガム軟化剤 |
軟化剤 |
調味料(甘味料及び酸味料に該当するものを除く。) |
アミノ酸から構成される場合にあっては、調味料(アミノ酸) 主としてアミノ酸から構成される場合(アミノ酸のみから構成される場合を除く。)にあっては、調味料(アミノ酸等) 核酸のみから構成される場合にあっては、調味料(核酸) 主として核酸から構成される場合(核酸のみから構成される場合を除く。)にあっては、調味料(核酸等) 有機酸のみから構成される場合にあっては、調味料(有機酸) 主として有機酸から構成される場合(有機酸のみから構成される場合を除く。)にあっては、調味料(有機酸等) 無機塩のみから構成される場合にあっては、調味料(無機塩) 主として無機塩から構成される場合(無機塩のみから構成される場合を除く。)にあっては、調味料(無機塩等) |
豆腐用凝固剤 |
豆腐用凝固剤又は凝固剤 |
苦味料 |
苦味料 |
乳化剤 |
乳化剤 |
水素イオン濃度調整剤 |
水素イオン濃度調整剤又はpH調整剤 |
膨張剤 |
膨張剤、膨脹剤、ベーキングパウダー又はふくらし粉 |
[参考]
※ 消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号)の別添 添加物1-4(各一括名の定義及びその添加物の範囲)」、14頁https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230726_02.pdf
③ 「物質名」による表示
①、②以外の場合は物質名を表示します(物質名の表示における名称について、※1参照)。
ただし、一部の食品添加物については、一般に広く使用されている名称を有し、化学名では馴染みがなく、わかりにくいものがあります。そこで、通知で示された食品添加物については、一般に広く使用されている名称(簡略名又は類別名)を表示することもできます(食品表示基準3条1項、同項の表の「添加物」の項の下欄3項前段。※2)。
[参考] ※1 消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号)の本体の(加工食品)1⑷①、5頁https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230726_01.pdf
※2 ※1の通知の別添 添加物1-1(指定添加物について)」(1頁以下)、「別添 添加物2-1」及び「同2-3」(指定添加物以外について)(26頁以下、及び55頁以下)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230726_02.pdf
表示義務の例外
以下のように使用される食品添加物については、表示義務の対象に含まれません(食品表示基準3条1項、同項の表の「添加物」の項の下欄1項)。ただし、当該食品添加物に由来する特定原材料についてのアレルギー表示は免除の対象とならないので、注意が必要です。
食品添加物 |
内容及び具体例 |
栄養強化の目的で使用されるもの(特別用途食品及び機能性表示食品を除く。1号) |
例)ビタミンA、L-メチオニン、L-アスコルビン酸 (栄養強化の目的が考えられる添加物の範囲について、※1) |
加工助剤(2号) |
食品の加工の際に添加されるが、当該食品の完成前に除去されたり、中和されたりし、その成分による影響を当該食品にほとんど及ぼさないもの(※2)。 例)活性炭、ヘキサン、水酸化ナトリウム |
キャリーオーバー(3号) |
食品の原材料の製造又は加工の過程において使用されるが、当該食品の製造又は加工の過程では使用されず、当該食品中には効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないもの。 例)せんべいに使用されるしょうゆに含まれる保存料 |
このうち、栄養強化の目的で使用される食品添加物に係る表示の省略規定については、食品表示基準別表第4で、適用除外されている食品があります(食品表示基準3条1項ただし書)。
さらに、一般用加工食品に用いられる容器包装の表示可能面積が概ね30cm2以下である場合、上述の食品添加物に関する表示を省略することが認められています(特定保健用食品及び機能性表示食品を除きます。同基準3条3項の表「添加物」の項)。食品には、食品添加物の他にも様々な表示事項が定められており、表示可能面積との関係でその全てを記載することが難しいためです。
[参考]
※1 消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号)の本体の(加工食品)1⑷③、オ、7頁参照https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230726_01.pdf
※2 加工助剤として用いられていても、クエン酸一カリウム及びクエン酸三カリウム、L―グルタミン酸カリウム、L―グルタミン酸カルシウム、L―グルタミン酸マグネシウム並びに水酸化カリウムについては、物質名を表示するよう、指導されています(※1の通知の本体の(加工食品)1⑷③ケ、7頁参照)。
表示の方法等
食品添加物の表示は、使用された食品添加物に占める重量の割合の高いものから順に表示する必要があります(食品表示基準3条1項、同項の表の「添加物」の項の下欄1項柱書)。また、一般用加工食品が複数の加工食品によって構成される場合には、構成要素ごとに、各構成要素を示す一般名称の次に括弧を付して、上述の重量順表示を行うことができます(同項の表の「添加物」の項の下欄2項)。
食品表示基準別記様式一のように添加物の項目を設けるか、同事項欄を設けず、原材料名の欄で「/」で区切る、改行する、別欄にするなどして原材料と明確に区分し、表示することもできます(食品表示基準8条3号、同基準別記様式1の備考2、食品表示基準Q&Aの加工-248(※))。
そして、これらの表示は、容器包装を開かないでも容易に見ることができるような箇所に、消費者が読みやすく理解しやすい用語で正確に行わなければなりません(同基準8条1号・2号)。その他、消費者にとって分かり易い表示を行わせるため、文字の色や大きさ等についても規制があります(同基準8条8号・9号)。
なお、食品表示基準別表第4の上欄に掲げる食品にあっては、同表の中欄に掲げる表示事項について、同表の下欄に定める表示の方法に従い表示されなければなりません(同基準3項1項ただし書)。同表において、「添加物」についての表示方法が規定されている食品がありますので、注意が必要です。
[参考]
※ 消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」平成27年3月(最終改正:令和5年6月29日消食表第334号)、143頁https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230629_07.pdf
表示例
以上の表示規制を踏まえると、具体的には、以下のような食品添加物の表示が考えられます(※より引用)。
名称 |
菓子 |
原材料名 |
小麦粉(国内製造)、砂糖、植物油脂(大豆を含む)、鶏卵、アーモンド、バター、異性化液糖、洋酒、でん粉 |
添加物① |
ソルビトール②、膨張剤、香料、乳化剤③、着色料(カラメル、カロテン)、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC)④ |
①…「添加物」の項目を設ける場合の表示例です(上記ウ参照)。
②…物質名は「D-ソルビトール」ですが、「簡略名」の「ソルビトール」で表示されています(上記ア③参照)。
③…「一括名」で表示されています(上記ア②参照)。
④…「用途名」が併記されています(上記ア①参照)。
[引用] ※ 消費者庁「食品添加物表示に関するマメ知識」5頁下線及び①ないし④につき、作成者付記)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/food_additive/assets/food_labeling_cms204_210408_01.pdf
表示禁止事項
食品関連事業者は、食品表示基準3条、4条、6条及び7条で掲げられた一般用加工食品の表示事項(「添加物」に関する事項が含まれます。上記ア参照)に関連して、次に掲げるような事項を容器包装に表示してはいけません(同基準9条1項)。
【食品表示基準9条1項】
条項 |
規定内容 |
1号 |
実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる表示 |
2号 |
義務表示事項(食品表示基準3条及び4条)の内容と矛盾する表示 |
13号 |
内容物を誤認させるような表示 |
例えば、次のようなものが該当すると考えられます(食品表示基準Q&A(上記⑵、ウの※)の加工-277。※)。
・ 添加物を使用した加工食品に「無添加」と表示
・ 原材料名及び添加物に使用していない原材料及び添加物を表示
[引用] ※ 消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」平成27年3月(最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)、161頁https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230629_07.pdf
食品関連事業者が一般用加工食品を販売する場合(食品添加物を使用していない場合)
「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」制定の経緯
「平成29年度食品表示に関する消費者意向調査報告書」によれば、食品を購入する際、常に「添加物不使用」等の表示があるものを購入している、又は同じ種類の食品の中では「添加物不使用」等の表示があるものを購入していると回答した方が回答者全体の半数以上にのぼります(※1)。それほど、食品添加物が使用されているか否かは、消費者にとって関心度の高い事柄であると言えるでしょう。一方で、食品添加物の表示に関する規制を巡っては、食品表示法4条1項1号及び食品表示基準3条1項等で、食品添加物の不使用表示に関する規制が特段設けられておらず、「無添加」等の表示が許される場合について定めた「食品表示基準Q&A」(※2)も曖昧であるなど、多数の問題が指摘されてきました。
そこで、食品添加物の使用の有無について消費者の誤認を招き得る不使用表示を類型化し、これらが食品表示基準の定める表示禁止事項(同基準9条1項1号、2号及び13号。上記⑵オ参照)に該当するかを判断した「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(※3。以下、本項⑶において「ガイドライン」といいます。)が制定されました。
[参考]
※1 消費者庁食品表示企画課、株式会社オノフ「平成29年度食品表示に関する消費者意向調査報告書」(平成30年3月)の72頁https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2017/pdf/information_research_2017_180531_0002.pdf
※2 消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」平成27年3月(最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の(加工 – 90)、56頁https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230629_07.pdf
※3 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(令和4年3月30日)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf
イラストで確認したい方は、消費者庁食品表示企画課「表示を作成する際に注意すべき10類型」https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/food_additive/assets/food_labeling_cms204_220701_03.pdf
適用範囲
本ガイドラインは、食品表示基準9条1項(上記⑵オ)の解釈を示すもので、同条項の適用対象である一般用加工食品の容器包装における食品添加物の不使用表示について適用されます。ただし、同基準14条(業務用加工食品)及び17条(食品関連事業者以外の販売者が加工食品を販売する場合)に基づき、同基準9条1項の規定を準用する場合においても、本ガイドラインが準用されます。
なお、本ガイドラインは、加工食品の容器包装における表示を対象とする一方、ウェブサイトや広告等の表示については対象としていません。しかし、本ガイドライン を参考とした景品表示法等の適用により、容器包装外における消費者を誤認させる食品添加物の不使用表示が縮減される(作成者付記)ことが期待されます(※)。
[引用]
※ 第8回食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会(2022年3月1日)の資料3「パブリックコメントにおける御意見」の3「広告等」の欄、36-40頁https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms204_20220225_05.pdf
ガイドラインの内容
本ガイドラインの制定後も、食品表示基準そのものは食品添加物の不使用表示について何ら規定していないので、これまでと同様、各食品関連事業者の任意に委ねられるのが原則です。しかし、任意といえども、同基準9条1項(上記⑵オ)で禁止されているような表示を行うことは許されません。そこで、本ガイドラインは、食品添加物の不使用表示に関し、このような表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示について取りまとめています。
以下では、本ガイドラインにおいて、かかる表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示方法について、類型(①~⑩)ごとに概観していきます。ただし、実際に表示禁止事項に該当するとして違法となるかは、「商品の性質、一般消費者の知識水準、取引の実態、表示の方法、表示の対象となる内容など」を基に個別に判断されるものであり、下記類型の一に該当したことをもって直ちに違法とはならないことに注意が必要です(ガイドラインの3⑵第2段落、3頁参照)。
① 単なる「無添加」の表示
「無添加」とだけ表示され、添加されていないものが何であるか消費者にとって不明瞭である表示については、消費者において推察した無添加の対象と事業者が意図する対象とで食い違いが生じるおそれがあります。
そのため、消費者に内容物を誤認させる表示として、食品表示基準9条1項13号に違反する可能性があります。
② 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
食品表示基準では、化学的合成品であるか天然物であるかを問わず、食品添加物を原則として全て表示することとしており、「人工」「合成」「化学」「天然」といった表現の使用は認められていません。にもかかわらず、「無添加」や「不使用」等と共にかかる表現が用いられた場合、消費者において、当該食品が実際のものよりも優良又は有利であると誤認するおそれがあります。
そのため、このような表示は、食品表示基準9条1項1号に違反する可能性があります。
例:「人工甘味料不使用」など、「不使用」表示とともに「人工」の用語を使用する場合
③ 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
法令上、ある食品との関係で使用が禁止されている食品添加物が存在するとしても、消費者がその事実を認識しているとは限りません。にもかかわらず、当該食品添加物について「不使用」等の表示がなされた場合、消費者は、当該表示のなされていない商品に比して優れた商品であると誤認するおそれがあります。
そのため、このような表示は、食品表示基準9条1項1号に違反する可能性があります。
例:使用基準においてソルビン酸の使用が認められていない清涼飲料水に、「ソルビン酸不使用」等の表示を行う場合
④ 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
ある食品添加物について「無添加」や「不使用」等の表示がなされている場合、当該食品添加物の摂取を控えたいと考える消費者において、その商品はより優れたものと認識されるでしょう。しかし、表示自体からわからないだけで、当該食品添加物と同一機能、類似機能を持った他の食品添加物がその商品に使用されていたとすれば、当該消費者において、商品の品質につき、実際よりも優良であると誤認することになりかねません。
そのため、このような表示は、食品表示基準9条1項1号に違反する可能性があります。
例:日持ち向上の目的で、保存料以外の食品添加物を使用しているにもかかわらず、「保存料不使用」との表示を行う場合
⑤ 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
上記④は、ある食品添加物と同一機能、類似機能を有する食品添加物が使用された場合ですが、ある食品添加物と同一機能、類似機能を有する原材料が使用されている場合にも同様の問題を生じさせるおそれがあります。すなわち、食品添加物の摂取を控えたいと考える消費者にとって、ある食品添加物の代替品としてある原材料が用いられていることを認識できない場合、当該食品添加物について「無添加」や「不使用」等の表示がなされた商品が、食品添加物を使用した商品よりも優れたものと判断するおそれがあります。また、ある食品添加物の「無添加」や「不使用」等の表示とともに代替品として用いられた原材料が明示されていない場合、消費者において、当該原材料によって果たされている機能が当該原材料以外の他の原材料によるものであると誤認することも考えられます。
そのため、このような表示は、食品表示基準9条1項1号又は13号に違反する可能性があります。
例:乳化作用を持つ原材料を高度に加工して使用した食品に、「乳化剤不使用」との表示を行う場合
⑥ 健康、安全と関連付ける表示
本来、食品添加物は、人の健康を損なうおそれのないものとして国によって認められたものに限り使用を許されています。にもかかわらず、各食品関連事業者が独自に行った検証に基づいて、「無添加」や「不使用」等と「健康」や「安全」といった用語を関連付けた場合、消費者において、当該商品につき、実際よりも優れたものであると誤認しかねません。あるいは、当該商品の内容物に関する誤認を招く危険性もあります。
そのため、このような表示は、食品表示基準9条1項1号又は13号に違反する可能性があります。
例:当該商品が体に良い、又は安全であることの理由として、「無添加」あるいは「不使用」の表示を行う場合
⑦ 健康、安全以外と関連付ける表示
食品添加物の不使用と、おいしさや賞味期限・消費期限などの事項との因果関係をきちんと説明することができないにもかかわらず、「無添加」や「不使用」等とこれら事項を関連付けて表示した場合、消費者において、当該商品につき、実際よりも優れたものであると誤認するおそれがあります。
例:おいしい理由として、「無添加」あるいは「不使用」の表示を行う場合
また、「開封後」に言及することなく、「保存料不使用なので、お早めにお召し上がりください。」といった表示を行う場合、商品に表示された期限よりも早く食べなければならないという印象を消費者に与えかねず、食品表示基準3条1項の表の「消費期限又は賞味期限」の項の下欄1項に係る表示と矛盾する危険性があります。
加えて、商品の変色と着色料の用途との関係性についてきちんと説明ができないにもかかわらず、商品が変色する可能性がある理由として「着色料不使用」などと表示することは、消費者に内容物に関する誤認を生じさせかねません。
そのため、これらのような表示は、食品表示基準9条1項1号、2号又は13号に違反する可能性があります。
⑧ 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
食品添加物の摂取を控えたいと考える消費者においては、同種の商品で一般的に食品添加物が使用されることがないために食品添加物の使用を予期していない状況においては特に、「無添加」や「不使用」等の表示がなされた商品は、当該表示のなされていない商品に比して優れたものであると誤認してしまうおそれがあります。
そのため、このような表示は、食品表示基準9条1号に違反する可能性があります。
例:同種の商品で一般的に着色料の使用が使用されておらず、食品元来の色を呈している商品について、「着色料不使用」等の表示を行う場合
⑨ 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
食品添加物が加工助剤又はキャリーオーバーとして使用されている場合、上記⑵、イのとおり、食品添加物の表示義務は課されません。しかし、そのような場合でも、食品の原材料の製造等の過程で食品添加物が使用されている以上、当該食品添加物について「無添加」や「不使用」等の表示を行えば、商品の内容物について消費者の誤認を招きかねません。
そのため、このような表示は、食品表示基準9条1項13号に違反する可能性があります。
例:原材料の一部に保存料を使用しているにもかかわらず、最終製品において「保存料不使用」との表示を行う場合
⑩ 過度に強調された表示
「無添加」や「不使用」等の表示に用いられた文字のフォントや大きさ、色、用語などにより、消費者が食品添加物の一括表示を閲覧することを妨げ、あたかも表示上の特定の食品添加物だけでなく他の食品添加物についても一切不使用であるかのような印象を与える場合があります。
このような場合、消費者に承認の内容物を誤認させるおそれがあるとして、食品表示基準9条1項13号に違反する可能性があります。
例:商品の多くの箇所に、過剰に目立つ色で、「〇〇不使用」との表示を行う場合
その他の食品の販売における表示
食品関連事業者が業務用加工食品を販売する場合
(ア) 表示義務
食品関連事業者が、業務用加工食品(加工食品のうち、消費者に販売される形態となっているもの以外のものをいいます。食品表示基準2条1項3号)を販売する場合、以下に掲げる場合を除き、食品添加物について表示を行わなければなりません(同基準10条1項5号)。
①容器包装に入れずに設備を設けて飲食させる施設における飲食の用に供する場合
②容器包装に入れずに食品を製造し若しくは加工した場所における販売の用に供する場合
③容器包装に入れずに不特定若しくは多数の者に対する譲渡(無償譲渡)の用に供する場合
(イ) 表示の方法等
業務用加工食品についても、上記⑵同様、食品表示基準3条で定める表示の方法に従うのが原則です(同基準10条1項5号)。
ただし、業者間取引における食品添加物の表示については、最終製品に適切に表示するための情報が伝達されればよく、必ずしも「割合が高い順」に表示する必要はなく、「割合が高い順が分かる」ように表示すれば十分と考えられています(同条3項2号)。
また、「食品添加物」を含む食品表示基準別表第23 に掲げる事項については、容器包装に表示する必要がありますが、同表に掲げる事項の表示であっても、同基準13条2号の表に掲げる食品について、それぞれ同表の下欄に掲げる場合に該当するものにあっては、送り状、納品書等又は規格書等への表示に代えることができます(同基準13条2号。ただし、当該食品と送り状等との同一性を確認できる識別記号等を表示する必要があります)。
そして、業務用加工食品については、消費者にとって分かりやすい表示を行わせるための規制(同基準8条で定める活字の大きさや文字の色等。上記⑵ウ参照)の適用はなく、邦文をもって、当該食品を一般に購入し、又は使用する者が読みやすく、理解しやすいような用語により正確に表示されることが必要です(同基準13条1号)。
(ウ) 表示禁止事項
業務用加工食品の容器包装、送り状、納品書等又は規格書等への表示について、一般用加工食品の表示禁止事項を定める食品表示基準9条1項(12号を除きます。上記⑵オ参照)が準用されています(同基準14条)。食品添加物を使用していない場合に、不使用表示が同条の表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示方法について取りまとめた「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」についても同様に準用されます(上記⑶イ参照)。
食品関連事業者が生鮮食品を販売する場合
生鮮食品とは、加工食品及び食品添加物以外の食品で、食品表示基準別表第2に掲げるものをいいます同基準2条1項2号)。単に水洗いや切断、冷凍等したものが該当し、加工品との具体的な区別については、食品表示基準Q&Aの(総則-12)に掲載されています(※)。
生鮮食品については、一部のものについて、食品添加物の表示義務があります。
[参考]
※ 消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」平成27年3月(最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)、5頁以下https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230309_12.pdf
(ア) 一般用生鮮食品
食品表示基準19条は、個別的義務表示事項として、一般用生鮮食品のうち別表第24に掲げるものを販売する場合(※1)には、同表の中欄に規定された表示事項が、同表の下欄で規定された表示の方法に従い表示されなければならないとしており、同表の中欄で表示事項として「添加物」が定められている食品については、同表の「表示の方法」に従い食品添加物に関する表示を行う必要があります(※2)。
また、同基準23条1項は、表示の方式等については、同基準22条に規定されています。
そして、表示禁止事項として、一般用加工食品における同基準9条(上記⑵オ)と同様に、同基準19条等に掲げる表示事項に関して、
- 実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語
- 義務表示事項の内容と矛盾する用語
- 製品の品質を誤認させるような文字、絵、写真その他の表示
などの事項を、一般用生鮮食品の容器包装又は製品に近接した掲示その他の見やすい場所に表示することを禁止しています。
[参考]
※1 設備を設けて飲食させる場合、及び容器包装に入れないで販売する場合又は不特定若しくは多数の者に対して譲渡(無数譲渡)する場合を除きます(食品表示基準19条括弧書き)。
※2 食品表示基準別表第24に掲げる食品のうち、「アボカド、あんず、おうとう、かんきつ類、キウィー、ざくろ、すもも、西洋なし、ネクタリン、パイナップル、バナナ、パパイヤ、ばれいしょ、びわ、マルメロ、マンゴー、もも及びりんご」については、防かび剤又は防ばい剤として使用される添加物以外の添加物にあっては、省略することができます(同食品に関する項の中欄の「添加物」に対応する下欄2項)。
(イ) 業務用生鮮食品
業務用生鮮食品とは、生鮮食品のうち、加工食品の原材料となるものをいいます(食品表示基準2条1項4号)。
業務用生鮮食品のうち、同基準別表第24に「添加物」の表示事項が定められている食品については食品添加物の表示義務があります(同基準24条1項5号、※)。
表示の方式等については、同基準27条に規定があります。
食品関連事業者が販売する業務用生鮮食品の容器包装、送り状、納品書等又は規格書等への表示事項が禁止される事項については、一般用生鮮食品の規定(同基準23条1項)が準用されています(同基準28条)。
[参考]
※ 食品表示基準別表第24の中欄に掲げる表示事項については、容器包装に入れないで販売する場合には、省略することができます(同基準25条)。
「食品関連事業者以外の販売者」が食品を販売する場合
(ア) 食品関連事業者以外の販売者とは
食品表示基準は、食品関連事業者以外の販売者が容器包装に入れられた加工食品や生鮮食品を販売する場合の表示についても規定しています(同基準15条ないし17条、29条ないし31条)。
食品関連事業者以外の販売者とは、具体的には、反復継続性のない販売を行う者を指し、例えば、小学校のバザーで袋詰めのクッキーを販売する保護者や、町内会の祭りで瓶詰めの手作りジャムを販売する町内会の役員等が想定されます(食品表示基準Q&Aの(総則-10)、※)。
[引用]
※ 消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」平成27年3月(最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)、4頁https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230309_12.pdf
(イ) 容器包装に入れられた加工食品を販売する場合
食品関連事業者以外の販売者が、容器包装に入れられた加工食品を販売する場合にも、食品表示基準3条が定める表示の方法に従い、食品添加物についての表示がなされなければなりません(同基準15条4号。ただし、同基準1項ただし書の適用はありません)。
また、表示の方式等については、食品関連事業者が一般用加工食品を販売する場合の規定である同基準8条1項(3号を除きます。)(上記⑵ウ参照)に定めるところに従わなければなりません(同基準16条)。
そして、食品関連事業者以外の販売者が販売する加工食品の容器包装への表示禁止事項については、同基準9条1項(上記⑵オ)が準用され(同基準17条)、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」も準用されます(上記⑶イ参照)。
(ウ) 容器包装に入れられた生鮮食品を販売する場合
食品関連事業者以外の販売者が容器包装に入れられた生鮮食品を販売する場合には、個別的義務表示事項として、食品表示基準29条各号に掲げる食品について、別表第24に規定された表示事項が、食品関連事業者が一般用生鮮食品を販売する場合の規定である同基準19条(以下、準用条文について、上記イ(ア)参照)に定める方法に準じて表示されなければなりません(同基準29条)。
また、表示の方式等については、同様に、同基準22条1項(3号を除きます。)に定めるところに準じます(同基準30条)。
そして、食品関連事業者以外の販売者が販売する生鮮食品の容器包装への表示禁止事項についても、同様に、同基準23条1項が準用されます(同基準31条)。
「食品添加物」を販売する場合
食品表示法2条1項は、「食品」に「食品衛生法第4条第2項に規定する添加物…を含む」旨を明記しており、販売の用に供する「食品」に関する表示の基準を定めた食品表示基準は、食品添加物そのものを販売する場合の表示についても規定しています(同基準第4章)。
食品関連事業者の場合
(ア) 義務表示事項
食品関連事業者が容器包装に入れられた一般用添加物、又は業務用添加物を販売する場合、それぞれ以下の事項を表示する必要があります(一般用添加物については食品表示基準32条1項・2項、業務用添加物については同条3項。各項目の表示方法については、各項の表の上欄に掲げる表示事項について、下欄に定める方法に従い表示されなければなりません)。
一般用添加物 |
業務用添加物 |
名称 |
名称 |
添加物である旨 |
添加物である旨 |
保存の方法 |
保存の方法 |
消費期限又は賞味期限 |
消費期限又は賞味期限 |
食品関連事業者の氏名又は名称及び住所 |
食品関連事業者の氏名又は名称及び住所 |
製造所又は加工所の所在地(輸入品にあっては、輸入業者の営業所所在地)及び製造者又は加工者の氏名又は名称(輸入品にあっては、輸入業者の氏名又は名称) |
製造所又は加工所の所在地(輸入品にあっては、輸入業者の営業所所在地)及び製造者又は加工者の氏名又は名称(輸入品にあっては、輸入業者の氏名又は名称) |
[特定原材料(※1)に由来する添加物を販売する場合] アレルゲン |
アレルゲン |
[食品衛生法13条1項に基づき定められた規格に表示量に関する規定がある添加物を販売する場合] その値 |
食品衛生法13条1項に基づき定められた規格に表示量に関する規定がある添加物の値 |
[製剤(※2)である添加物を販売する場合] 成分(着香の目的で使用されるものを除く。)及び重量パーセント |
成分(着香の目的で使用されるものを除く。)及び重量パーセント |
[タール色素の製剤を販売する場合] 実効の色名 |
実効の色名 |
[アスパルテーム又はこれを含む製剤を販売する場合] L-フェニルアラニン化合物である旨又はこれを含む旨 |
L-フェニルアラニン化合物である旨又はこれを含む旨 |
[添加物たるビタミンAの誘導体を販売する場合] ビタミンAとしての重量パーセント |
ビタミンAとしての重量パーセント |
[食品衛生法13条1項に基づき使用方法の基準が定められた添加物を販売する場合] 使用の方法 |
使用の方法 |
内容量 |
|
栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム)の量及び熱量 |
[参考]
※1 食物アレルギーを引き起こすもののうち、症例数や重篤度等に応じて表示する必要性の高い原材料で、食品表示基準別表第14に掲げる食品のこと(食品表示基準3条2項、同項の表の「別表第十四に掲げる食品…」の項の上欄)。
※2 食品添加物本来の効果を期待することができるよう、当該食品添加物を他の食品添加物等と混合又は希釈するなどし、実在状態を変えたもの。バニラエッセンスやベーキングパウダーなど。消費者庁食品表示企画課「販売の用に供する添加物の表示について」(平成26年3月14日)10頁 https://www.cao.go.jp/consumer/history/03/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/s140314_shiryou2.pdf
(イ) 省略規定
次の表の上欄に掲げる表示事項の表示は、下欄の区分に該当する添加物につき、省略することができます(食品表示基準32条5項)。
保存の方法 |
食品衛生法13条1項の規定により保存の方法の基準が定められた添加物以外の添加物 |
消費期限又は賞味期限 |
全ての添加物 |
栄養成分の量及び熱量 |
以下に掲げるもの(栄養表示をしようとする場合を除く。)
|
(ウ) 義務表示の特例
不特定又は多数の者に対して譲渡(無償譲渡)する場合、次に掲げる表示事項の表示は要しません(食品表示基準33条)。
①内容量(1号)
②栄養成分の量及び熱量(2号)
③食品関連事業者の氏名又は名称及び住所(3号)
(エ) 任意表示
食品関連事業者が一般用添加物を販売する際に、「栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウムを除きます。)」及び「ナトリウムの量(ナトリウム塩を添加していない添加物の容器包装に表示される場合に限ります。)」の表示事項が当該添加物の容器包装に表示される場合には、それぞれ食品表示基準34条1項の表の下欄に定める方法に従い表示されなければなりません。
また、食品関連事業者が業務用添加物を販売する際に「栄養成分及び熱量」及び「ナトリウムの量(ナトリウム塩を添加していない添加物の容器包装に表示される場合に限ります。)」の表示事項が当該業務用添加物の容器包装に表示される場合には、それぞれ同基準34条2項の表の下欄に定める方法に従い表示されなければなりません。
(オ) 表示の方式等
上記(ア)及び(エ)の表示事項の表示の方式等については、食品表示基準35条1項に規定されています。
ただし、業務用添加物を販売する場合、食品関連事業者の氏名又は名称及び住所(製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称と同一である場合を除きます。)は、業務用添加物の送り状、納品書等又は規格書等に表示することができます(同基準35条2項)。
(カ) 表示禁止事項
上記(ア)及び(エ)の表示事項に関して、次に掲げる事項を添加物の容器包装に表示してはいけません食品表示基準36条)。
①実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語(1号)
②同基準32条の規定により表示すべき事項の内容と矛盾する用語(2号)
③ナトリウム塩を添加している添加物にあっては、ナトリウムの量(3号)
④その他内容物を誤認させるような文字、絵、写真その他の表示(4号)
食品関連事業者以外の販売者の場合
(ア) 義務表示事項
食品関連事業者以外の販売者が容器包装に入れられた添加物を販売する際には、次に掲げる表示事項が食品表示基準32条に定める方法に準じて表示されなければなりません(同基準37条)。
①名称(1号)
②添加物である旨(2号)
③保存の方法(3号)
④消費期限又は賞味期限(4号)
⑤製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称(5号)
⑥アレルゲン(6号)
⑦使用の方法(7号)
⑧食品衛生法13条1項の規定に基づき定められた規格に表示量に関する規定がある添加物の値(8号)
⑨成分及び重量パーセント(9号)
⑩実効の色名(10号)
⑪L‐フェニルアラニン化合物である旨又はこれを含む旨(11号)
⑫ビタミンAとしての重量パーセント(12号)
(イ) 表示の方式等
上記(ア)の表示事項の表示は、食品関連事業者が販売する場合の規定である食品表示基準35条1項(3号を除きます。)(上記ア(エ))の定めるところに準じてされなければなりません(同基準38条)。
(ウ) 表示禁止事項
食品関連事業者以外の販売者が販売する添加物の容器包装への表示が禁止される事項については、食品関連事業者が販売する場合の規定である食品表示基準36条(上記ア、(オ))の規定が準用されます(同基準39条)。
食品表示法による不適正な表示に対する措置等
指導、指示、措置命令
(ア) 指導
食品表示基準に違反している食品関連事業者に対しては、次に掲げる項目の全てに該当する場合、まず、表示事項を表示するよう、又は遵守事項を遵守するよう指導が行われます(※)。
①食品表示基準違反に常習性がなく過失による一時的なものであること
②違反事業者が直ちに表示の是正(表示の修正・商品の撤去)を行っていること
③事実と異なる表示があった旨を、社告、ウェブサイトの掲示、店舗等内の告知等の方法を的確に選択し、速やかに情報提供しているなどの改善方策を講じていること
また、食品関連事業者が食品の表示に関する情報が記載された書類の整備・保存を怠り、食品表示法8条1項ないし3項に基づく報告徴収・立入検査(後述のエ)に際して、食品の表示を適正に行っていることの根拠となる情報が記載された書類の報告又は開示しない場合には、当該書類を整備・保存するよう指導が行われます(※2)。
[参考]
※1 消 費 者 庁 ・国 税 庁・農林水産省「食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針」(平成27年3月20日)の1
https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/attach/pdf/t0000924-1.pdf
※2 上記※1の指針の2。なお、食品表示基準41条2項は、食品関連事業者等が食品表示基準に基づく適正な表示を行う上で必要な限度において、食品の表示に関する情報が記載された書類の整備・保存の努力義務を規定しています。そして、整理・保存に努めるべき書類の具体例は、消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」平成27年3月(最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「(雑則 – 2)」、224頁に記載されています。
(イ) 指示
上記ア(ア)の①ないし③の全てに該当して指導が行われる場合を除き、食品表示基準に定められた表示事項が表示されていない食品を販売し、又は遵守事項を遵守しない食品関連事業者に対して、表示事項を表示し、又は遵守事項を遵守すべき旨の指示が出される可能性があります(食品表示法6条1項、3項。※)。
指導を行ったにもかかわらず当該指導に従わなかったことが確認されたような場合も同様です。
[参考]
※ 消 費 者 庁 ・国 税 庁・農林水産省「食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針」(平成27年3月20日)の1
https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/attach/pdf/t0000924-1.pdf
(ウ) 措置命令
上記(イ)の指示を受けた者が、正当な理由なく当該指示に係る措置をとらなかったときは、当該措置をとるべき旨命じられる可能性があります(食品表示法6条5項)。
回収命令等
食品関連事業者等が、食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項として内閣府令(※)で定めるものについて食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をし、又は販売をしようとする場合において、消費者の生命又は身体に対する危害の発生又は拡大の防止を図るため緊急の必要があると認められるときは、当該食品関連事業者等に対し、食品の回収その他必要な措置をとるべき旨の命令、又は期間を定めてその業務の全部若しくは一部を停止すべき旨の命令が出される可能性があります(食品表示法6条8項)。
[参考]
※ 「食品表示法第6条第8項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令」(平成27年内閣府令第11号)の1条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=427M60000002011
公表
食品表示法6条による指示又は命令(上記ア(イ)・(ウ)及びイ)がなされたときは、その旨が公表されます(食品表示法7条、※)。
[参考]
※ 公表に係る指針については、消 費 者 庁 ・国 税 庁・農林水産省「食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針」(平成27年3月20日)の3参照
https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/attach/pdf/t0000924-1.pdf
報告等の要求、検査、収去
販売の用に供する食品に関する表示の適正を確保するため必要があると認められる場合、食品関連事業者等若しくは食品関連事業者とその事業に関して関係のある事業者に対し、販売の用に供する食品に関する表示について必要な報告若しくは帳簿、書類その他の物件の提出の要求、これらの者の事務所、事業所その他の場所にへの立ち入り、販売の用に供する食品に関する表示の状況若しくは食品、その原材料、帳簿、書類その他の物件の検査、従業員その他の関係者への質問、若しくは試験の用に供するのに必要な限度においる食品若しくはその原材料の無償収去がなされる可能性があります(食品表示法8条1項ないし3項)。
食品の自主回収の届出義務
食品関連事業者等が、同法6条8項の内閣府令で定める事項(上記イの※参照)について食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をした場合において、当該食品を自主回収するとき(食品表示法6条8項による命令(上記イ)を受けて回収するとき、及び消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれがない場合として内閣府令(※)で定めるときを除きます。)は、内閣府令で定めるところにより、遅滞なく、回収に着手した旨及び回収の状況を内閣総理大臣に届け出なければなりません(食品表示法10条の2第1項)。
この届出があったときは、その旨が公表されます(食品表示法10条の2第2項)。
[参考]
※ 「食品表示法第6条第8項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令」(平成27年内閣府令第11号)の4条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=427M60000002011
適格消費者団体による差止等の請求
国や地方公共団体以外の民間の団体(消費者契約法2条4項に規定される適格消費者団体)には、食品関連事業者が食品表示基準に違反し、販売の用に供する食品の名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量若しくは熱量又は原産地について著しく事実に相違する表示をする行為を現に行い、又は行うおそれがある場合には、当該食品関連事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該食品に関して著しく事実に相違する表示を行った旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求する権利が与えられています(食品表示法11条)。
国、地方公表団体による執行に加えて、民間の団体による差止等の請求を認めることにより、食品表示違反を重畳的に取り締まるためです。
申出制度
何人も、販売の用に供する食品に関する表示が適正でないため消費者の利益が害されていると認めるときは、その旨を内閣総理大臣(消費者庁長官に権限を委任。食品表示法15条1項)、農林水産大臣、財務大臣らに申し出て、適切な措置をとるべきことを求めることができます(食品表示法12条1項・2項)。
罰則
食品表示法は、第6章において、同法における諸規定に違反した場合の罰則について定めています。具体的には、刑の軽重の別により、以下のように定めています。
なお、法人(人格のない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含みます。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して違反行為をしたときには、行為者のほか、その法人又は人に対する両罰規定があります(食品表示法22条)。
(ア) 食品表示法17条
・同法6条8項の規定による命令(上記イ)に違反した者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます。
(イ) 食品表示法17条
・同法6条8項の内閣府令で定める事項(上記イの※参照)について、食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をした者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます。
(ウ) 食品表示法20条
・同法6条5項の規定による命令(上記ア(ウ))に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。
(エ) 食品表示法21条
・次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処されます。
① 同法8条1項ないし3項(上記エ第1段落)による報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同条1項ないし3項まで若しくは9条1項(上記エ)による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
② 同法8条1項(上記エ第1段落)による収去を拒み、妨げ、又は忌避した者
③ 同法10条の2第1項(上記オ)による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
他法令における表示・広告規制
食品衛生法による虚偽表示等の禁止
食品衛生法20条の趣旨
上記1の食品表示法(及び同法によって定められた食品表示基準)による表示規制は、消費者が食品や食品添加物を安全に摂取し、自主的・合理的に選択するために必要と認められる事項に関する基準を定めたものでした。
しかし、食品や食品添加物等に関する表示としては、この表示の基準に定められる事項に限られるものではなく、同基準に定められる事項以外の事柄を表示することを禁止されているわけではありません。むしろ、食品や食品添加物等の性状・品質等について、より詳細な情報が消費者に与えられるという点では、表示の基準に定められる事項以外の事柄が表示されることは望ましい側面もあり、また、商品として消費者に向けて広告がなされる必要もあります。ただ、これらの表示や広告が、虚偽あるいは誇大なものである場合には、食品衛生上の危害をもたらすおそれが生じ得ます。
そこで、食品衛生法は、20条において、食品・食品添加物等に関し、「公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしてはならない」と規定しています。
対象
食品衛生法20条の規制の対象となる表示・広告は、「公衆衛生に危害を及ぼすおそれのある」ものです。例えば、「アレルギーを起こさない牛乳を使用しています」と表示することは、食物アレルギーを有する消費者が口にしてしまうと重大な健康被害を引き起こすおそれがあるため、本条に違反するでしょう。これに対して、外国産のものを国産であると原産地を偽るような表示に関しては、健康被害は生じないため、少なくとも同条の規制対象とはなりません。
違反した場合
食品衛生法20条に違反し、虚偽・誇大表示等を行った場合の食品衛生法上の措置については、上記Ⅳ11⑶ないし⑸(廃棄等の処置命令、営業の許可取消・禁停止等、罰則)のとおりです。
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)による不当な表示の禁止
景品表示法の概要
景品表示法は、一般消費者の利益保護を目的とする法律であり、独占禁止法上のぎまん的顧客誘引や不当な利益による顧客誘引を規制するための特別法にあたります。内容としては、不当景品類の制限・禁止の制度と、不当表示の禁止の制度等が規定されています。景品表示法は、食品表示法のように特定の事項の表示を義務付けてそれに反する表示を禁止するものではなく、対象とする商品・役務の範囲を限定せずに一定の表示を禁止するもので、対象範囲は幅広いものとなっています。
なお、景品表示法については、その一部を改正する法律(令和5年法律第27号)(以下、「令和5年改正法」といいます。)が令和5年5月10日に成立し、同月17日に公布されており、公布の日から1年半を超えない範囲内において施行されることになっています。以下で引用する条文番号は、特に断りのない限り、同改正法施行前のものとなります。
景品表示法が禁止する「不当表示」とは
景品表示法が対象とする「表示」は、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するもの」(※1)です(景品表示法2条4項)。
そして、景品表示法が禁止している不当表示は、優良誤認表示、有利誤認表示、その他の不当表示の3つに大別されます。
① 優良誤認表示(同法5条1号)
商品やサービスの品質について、実際のもの又は他の事業者の供給に係るものよりも著しく優良であると示して、消費者の商品選択に影響を与えるような表示です。
② 有利誤認表示(同法5条2号)
商品やサービスの取引条件について、実際のもの又は他の事業者の供給に係るものよりも著しく有利であると示して、消費者の商品選択に影響を与えるような表示です。
③ その他の不当表示(同法5条3号)
①②に掲げるもののほか、商品・サービスの取引に関する事項について消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるとして内閣総理大臣が指定するものです。
このうち、食品の表示に関して、景品表示法上問題となるのは、通常、自己が供給する商品・役務(食品等)について、一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良 であると示す表示、つまり「優良誤認表示」 に当たる場合であると思われます。
[参考]
※1 「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年公取委告示第3号)により、「広告その他の表示」として、以下の5つが定められています。
ⅰ 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示
ⅱ 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)
ⅲ ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似する物による広告及び陳列物又は実演による広告
ⅳ 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告
ⅴ 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_6.pdf
※2 以前より、「その他の不当表示」として指定されてきたものに、以下の6つがあります。
ⅰ 無果汁の清涼飲料水等についての表示(昭和48年公取委告示第4号)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_15.pdf
ⅱ 商品の原産国に関する不当な表示(昭和48年公取委告示第34号)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_14.pdf
ⅲ 消費者信用の融資費用に関する不当な表示(昭和55年公取委告示第13号)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_16.pdf
ⅳ 不動産のおとり広告に関する表示(昭和55年公取委告示第14号)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_18.pdf
ⅴ おとり広告に関する表示(平成5年公取委告示第17号)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_17.pdf
ⅵ 有料老人ホームに関する不当な表示(平成16年公取委告示第3号)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_19.pdf
さらに、令和5年3月28日、景品表示法第5条第3号の規定に基づき、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が指定されました(令和5年内閣府告示第19号)。これは、近年問題視されている、いわゆる「ステマ」(ステルスマーケティング)を規制するもので、事業者自らが表示を行い、又は事業者が第三者をして表示を行わせているにもかかわらず、中立な第三者によるものであるかのように、当該事業者の供給する商品又は役務について行う表示が対象となります。同日付で、消費者庁長官決定として、運用基準が作成されています。指定告示の施行日は、同年10月1日です。
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_230328_03.pdf(運用基準)
食品の表示に関するガイドライン、公正競争規約等
前述のとおり、景品表示法は、対象とする商品や役務の範囲を限定せずに不当表示を禁止するもので、例えば食品や食品添加物などの特定の分野に関する表示について、どのようなものが不当表示に該当するのかを具体的に規定しているわけではありません。景品表示法で禁止されている不当表示を防止するには、同法の考え方が示されている各種ガイドライン等や過去事例を確認しておく必要があります。そこで、以下、食品添加物に関する表示の不当表示該当性の判断に当たって参考となるガイドライン等を紹介いたします(これまでの違反事例については、下記カ参照)。
(ア) メニュー・料理等の食品表示についてのガイドライン
ホテルや百貨店、レストラン等が提供するメニュー・料理等の表示について、実際に使われていた食材と異なる表示が行われていたという問題が相次ぎ発覚し、社会問題化したことを契機に、平成26年3月、消費者庁において、メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方を示し、具体的な事例についてのQ&Aを掲載した「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について 」(※)が作成されています。
このガイドラインでは、「飲食店で提供される料理において、実際には、その表示から受ける一般消費者の印象・認識と異なる食材を使用しているにもかかわらず、あたかも、当該料理に、実際のものよりも著しく優良である食材を使用しているかのように示す表示といえるか否か」(優良誤認表示)の判断について、次のような考え方を示しています。
① その料理や食材に関する社会常識や、用語等の一般的意味、社会的に定着していると認められる食品表示法等を含めた他法令等における定義・基準・規格などを考慮し、表示された特定の食材(A)と実際に使用されている食材(B)とが異なるといえる場合において、
② その料理の性質、その料理や食材に関する一般消費者の知識水準、その料理や食材の取引の実態、メニュー等における表示の方法、表示の対象となる内容などを考慮し、表示された特定の食材(A)と実際に使用されている食材(B)が異なることを一般消費者が知っていたら、その料理に惹きつけられることは通常ないであろうと認められる程度に達する誇大表示といえるときには、優良誤認表示に該当することになります。」
このガイドラインは、飲食店等において提供される料理等に関するメニューや料理名の表示についてのものですが、広く食品に関連する優良誤認表示について検討する際に参考になるものと思われます。
[参考]
※ 消費者庁「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について 」(平成26年3月28日 、一部改定 平成26年12月1日、一部改定 平成28年4月1日 )
(イ) 健康食品の表示に関するガイドライン
近年、健康食品が広く普及し、インターネット等を利用した広告・宣伝も活発に行われていますが、このような広告・宣伝の中には、健康の保持増進の効果等が必ずしも実証されていないにもかかわらず、当該効果等を期待させるような表示がなされていることがあり、問題化しました。このような広告・宣伝は、健康増進法上の虚偽誇大表示や景品表示法上の不当表示(優良誤認表示)に該当するおそれがあります。
そこで、消費者庁は、平成25年12月、健康食品の広告その他の表示について、どのようなものが虚偽誇大表示等として問題となるおそれがあるかを明らかにするため、景品表示法及び健康増進法の基本的な考え方を示し、具体的な表示例や違反事例をまとめた「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」を作成しています(※)。
このガイドラインは健康食品に関するものですが、健康増進法における虚偽誇大表示や景品表示法における不当表示の考え方を具体的に確認でき、不当表示の防止に有用な資料になるものと思われます。
[参考]
※ 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(平成 25 年 12 月 24 日、一部改定 平成 27 年1月 13 日、全部改定 平成 28 年6月 30 日、一部改定 令和2年4月1日 、一部改定 令和4年 12 月5日)
(ウ) 食品表示基準における「食品添加物の不使用のガイドライン」の考え方
食品表示基準において、食品添加物が不使用である旨の表示については特に規制がなく、消費者に誤認させるような表示が問題となり、食品添加物の使用の有無について消費者の誤認を招き得る不使用表示を類型化し、食品表示基準の定める表示禁止事項への該当性について考え方を示した「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が作成されたということは、上記1⑶アのとおりです。
このガイドラインは、食品表示基準9条1項(上記1⑵オ)の解釈を示すもので、加工食品の容器包装における表示を対象としており、広告・宣伝等の表記は対象ではありません。しかし、上記1⑶イのとおり、容器包装以外の「広告その他の表示」(上記イの※1参照)における食品添加物の不使用表示について、景品表示法の適用の判断にあたり、このガイドラインが参考となるものと考えられています。
(エ) 食品関連業界における公正競争規約
公正競争規約(景品表示法第31条に基づく協定又は規約)とは、景品表示法第31条の規定により、公正取引委員会及び消費者庁長官の認定を受けて、事業者又は事業者団体が表示又は景品類に関する事項について自主的に設定する業界のルールです(※1)。
公正競争規約は、その業界の商品特性や取引の実態に即して、表示又は景品類に関する事項を定め、不当な表示や過大な景品類の提供による過剰な競争を防止する役割を担っています。
公正競争規約は、事業者又は事業者団体が自主的に設定するルールであることから、規約に参加していない事業者には適用されませんが、公正競争規約に参加し、そのルールを守ることが、その事業者、ひいては業界全体に対する消費者の信頼につながります。また、規約に参加する事業者は、規約の内容を遵守している限り、景品表示法の適用において安心して業務を行うことができます。そして、公正競争規約に基づく表示がその業界で一般化すると、それに反する表示が消費者に誤認される表示として問題視される可能性がありますので、規約に参加しない事業者も注意する必要があります。
酒類を除く食品関係についても、表示に関する公正競争規約は35規約存在しています(令和2年6月24日時点。※2)。
[引用]
※1 消費者庁「公正競争規約」の「1. 公正競争規約制度の目的」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/fair_competition_code/#:~:text=公正競争規約(景品表示,する業界のルールです%E3%80%82
[参考]
※2 消費者庁「公正競争規約が設定されている業種」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/fair_competition_code/industries/
表示の管理上の措置を講じる義務について
景品表示法26 条1項は、事業者に対し、自己が供給する商品又は役務の取引について、不当な表示により顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、事業者内部において、不当表示を未然に防止するために必要な措置を講じるよう義務付けており、平成26年12月1日から施行されています。この事業者が講ずべき措置については、同条2項に基づき事業者が適切かつ有効な実施を図るために必要な事項について定めた指針が策定されています(※)。
事業者が正当な理由なく講ずべき措置を講じていないと認められる場合、当該事業者に対し、表示の管理上必要な措置を講ずべき旨の勧告が行われ、当該事業者がその勧告に従わないときはその旨を公表される可能性があります(景品表示法28条)。
[参考]
※「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年内閣府告示第276号、改正 平成28年内閣府告示第125号、改正 令和4年内閣府告示第74号)https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_220629_04.pdf
景品表示法における調査や違反に対する措置
(ア) 報告命令、提出命令、検査、質問
上記の勧告(上記エ第2段落)や、措置命令(下記(イ))、課徴金納付命令(下記(ウ))を行うために必要があると認められる場合、当該事業者若しくはその者とその事業に関して関係のある事業者は、その業務若しくは財産に関する報告、若しくは帳簿書類その他の物件の提出を求められ、又は事務所、事業所その他その事業を行う場所への立ち入り、帳簿書類その他の物件の検査、若しくは関係者に質問を受ける可能性があります景品表示法29条1項)。
(イ) 措置命令
景品表示5条の不当表示の禁止(上記⑵イ)に違反する行為がある場合、当該事業者は、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命じられる可能性があります(同法7条1項)。かかる措置命令は、当該違反行為が既になくなっている場合でも可能であり。措置命令が行われた際はその内容が公表されます。
この措置命令の行使に関して、同法7条2項は、不実証広告規制を規定しています。これは、消費者庁長官が、事業者がした表示が優良誤認表示(上記⑵イの①)に該当するか否かを判断するために必要がある場合には、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとしたもので、事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は、措置命令との関係で不当表示とみなされます。同項の適用に関して、どのような資料であれば表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものに当たるのか等の考え方が、ガイドラインで示されています(※)
[参考]
※ 公正取引委員会「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 ―不実証広告規制に関する指針―」(平成15年10月28日、一部改正 平成28年 4月 1日 消 費 者 庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_34.pdf
(ウ) 課徴金納付命令
平成 28 年4月1日以降に、事業者が優良誤認表示又は有利誤認表示の禁止(上記⑵イの①及び②)に違反した場合、原則として課徴金納付命令が科され(売上額の3%)、その旨が公表されます(景品表示法8条1項柱書)。また、不実証広告規制に係る表示(上記(イ)第2段落)について、一定の期間内に当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出がない場合には、当該表示を優良誤認表示と推定して課徴金を賦課されます(同条3項)。
他方、違反事業者が相当の注意を怠った者でないと認められる場合、課徴金額が150万円未満となる場合は、賦課されません(同項1項ただし書き)。また、違反行為をやめた日から5年を経過したときは、課徴金は賦課されません(同法12条7項)。
なお、課徴金対象行為に該当する事実を自主的に報告した事業者に対しては、課徴金額の2分の1を減額する制度があります(同法9条)。
また、事業者が所定の手続に沿って消費者に返金措置を実施した場合は、課徴金を減額等するという制度もあります(同法10条、11条)。
そして、令和5年改正法により、課徴金制度が見直され、次のような事項が加えられることになりました。
・課徴金額の推計
課徴金の納付を命ずる場合において、当該事業者が当該課徴金対象行為に係る課徴金の計算の基礎となるべき事実について29条1項(改正後の景品表示法における25条1項)による報告(上記(ア))を求められたにもかかわらずその報告をしないときは、課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握することができない期間における売上額を推計して、課徴金の納付を命ずることができます(改正後景品表示法8条4項)。
・再度の違反行為に対する課徴金額の割増
事業者が、10年以内に課徴金納付命令を受けたことがあり、かつ、当該課徴金納付命令の日以後において課徴金対象行為をしていた者であるときは、課徴金額が売上額の3%から4.5%になります(同条5項・6項)。
・返金措置の弾力化
返金措置に関して、返金方法として金銭による返金に加えて第三者型前払式支払手段(いわゆる電子マネー等)が許容されます(同法10条)。
(エ) 令和5年改正法による確約手続の導入
景品表示法の令和5年改正法により、事業者の自主的な取組の促進するものとして、確約手続が導入されることになりました(改正後景品表示法第2章第6節)。確約手続とは、我が国では既に独占禁止法において導入されているもので、独占禁止法違反の疑いについて、公正取引委員会と事業者との間の合意により自主的に解決するものです。
景品表示法で導入される確約手続は、次のようなものです。
・景品表示法4条(景品類の制限及び禁止)や5条の不当な表示の禁止(上記⑵、イ)に違反する行為があると疑うに足りる事実がある場合、内閣総理大臣(消費者庁長官に権限を委任。景品表示法33条1項)は、その行為について、一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があると認めるときは、当該行為をしている者に対し、当該疑いの理由となった行為の概要等や次項の是正措置計画の認定の申請をすることができる旨を書面により通知することができます(改正後景品表示法26条)。
・当該通知を受けた者は、疑いの理由となった行為及びその影響を是正するために必要な措置を自ら策定し、実施しようとするときは、是正措置計画を作成し、消費者庁長官にその認定を申請します(同法27条1項・2項)。
・認定を受けた場合、その認定の取消しがなされない限り、当該認定に係る疑いの理由となった行為については、措置命令(上記(イ))や課徴金納付命令(上記(ウ))の適用を受けません(同法28条、29条)。
(オ) 適格消費者団体による差止等の請求
景品表示法30条は、行政機関による執行を補完するため、消費者契約法2条4項に規定される適格消費者団体に対し、事業者が、不特定かつ多数の一般消費者に対して不当な表示を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が不当な表示である旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求する権利を与えています。
また、令和5年改正法では、適格消費者団体が、一定の場合に、事業者に対し、当該事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるとともに、事業者は当該要請に応ずる努力義務を負う旨の規定が新設されました(改正後景品表示法35条)。
(カ) 罰則
景品表示法は、第6章において、同法における諸規定に違反した場合の罰則について定めています。具体的には、刑の軽重の別により、以下のように定めています。
なお、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して違反行為をしたとき、法人でない団体の代表者、管理人、代理人、使用人その他の従業者がその団体の業務又は財産に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人、人又は団体に対する両罰規定があります(景品表示法38条)。
ⅰ 景品表示法36条1項
:同法7条1項による命令(上記(イ))に違反した者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に(処されます(情状により、これらが併科される可能性もあります。同条36条2項)。
なお、この同法36条1項の違反があった場合においては、その違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講ぜず、又はその違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた当該法人の代表者、当該事業者団体の理事その他の役員若しくは管理人又はその構成事業者らも、罰金刑が科せられます(景品表示法39条、40条)。
ⅱ 景品表示法37条
:同法29条1項(上記(ア))による報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。
ⅲ 令和5年改正法による罰則規定の拡充
:令和5年改正法により、優良誤認表示と有利誤認表示の禁止(上記⑵イの①及び②)の違反に対し、直罰規定(100万円以下の罰金)が新設されます(改正後景品表示法48条)。また、この点についても、行為者のみならず当該行為者が属する法人や団体をも罰する両罰規定が新設されます(改正後景品表示法49条1項2号)。
食品添加物に関する表示について措置命令が出された事例
景品表示法に基づき措置命令や課徴金納付命令が発出された場合、消費者庁のウェブサイト上でその内容が公表されており、一般社団法人全国公正取引協議会連合会が違反事件をデータベース化しています(※)。そこから、不当表示の内容が食品添加物に関連する事案をいくつかご紹介します。
[参考]
※ 一般社団法人全国公正取引協議会連合会「措置命令/排除命令データベース」
https://www.jfftc.org/ihanDB/ihan-sochi.html#wrapper
(ア) レモン果汁についての優良誤認表示(2008年12月5日、事件番号:H(20)H48)(※)
レモン果汁の商品の容器に、「レモンを収穫後すぐに搾汁するので、収穫後防カビ剤(ポストハーベストは使用しておりません。」と記載することで、あたかも、当該商品にポストハーベストは含まれていないかのように表示されていましたが、当該商品の原材料たるレモン果実には、ポストハーベストのひとつであるイマザリルが使用されていました。
そこで、公正取引委員会は、当該商品の供給事業者に対し、下記内容の措置命令を出しました。
・違反事実の確認
・防止に必要な措置を講じ役員及び従業員に周知徹底すること
・同様広告の繰り返し禁止
・訂正広告の文書による報告
[参考/引用]
※ 一般社団法人全国公正取引協議会連合会「措置命令/排除命令データベース」中のH(20)H48事件に関するページ(容器の表示内容、及び措置命令の内容につき引用)
https://www.jfftc.org/ihanDB/ihan-sochi.html#wrapper
(イ) 食用塩についての優良誤認表示(原材料・製造(加工)方法)(2011年6月14日、事件番号:H(23)S3)(※)
食用塩について、①商品ラベルにおいて「純粋さを追求するため海水を自然蒸発させて製造されます。自然塩ならではのまろやかな旨味をお楽しみください」、「最初から最後まで塩田で天日の力を使い、結晶させた完全天日塩です。」、「本品は凝固防止剤や添加物を一切使用しておりません。」、②ウェブサイトにおいて「純粋さを追求するため海水を自然蒸発させて製造しています。精製塩のとがった辛みとは異なる、自然塩ならではのまろやかな旨味をお楽しみください。」と表示されていました。しかし、実際の商品は、天日蒸発による海塩を溶解して洗浄した後釜で乾燥させたもので、天日塩とはいえないものでした。また、当該商品には、凝固防止剤が添加されていました。
そこで、消費者庁は、当該商品の供給事業者に対し、下記内容の措置命令を出しました。
・一般消費者に対する周知徹底
・再発防止策を講じ、役員及び従業員に周知徹底すること
・同様表示の繰り返し禁止
[参考/引用]
※ 一般社団法人全国公正取引協議会連合会「措置命令/排除命令データベース」中のH(23)S3事件に関するページ(商品ラベル・ウェブサイトにおける表示内容、及び措置命令の内容につき引用)
https://www.jfftc.org/ihanDB/ihan-sochi.html#wrapper
(ウ) ハム・ソーセージについての優良誤認表示(2018年3月27日、事件番号:H(29)S48)(※)
対象事業者は、取扱商品のカタログにおいて、「ハム・ソーセージも、原料は産直豚100%!・・保存料・着色料・添加物・化学調味料など不使用」等と記載し、あたかも、当該商品は、化学的な合成添加物を一切使用することなく製造されたものであるかのように表示していました。しかし、実際には、当該商品に、化学的な合成添加物であるリン酸三ナトリウム溶液に漬けて加工された羊腸が使用されていました。
そこで、消費者庁は、対象事業者に対し、下記内容の措置命令を出しました。
・一般消費者に対する周知徹底
・再発防止策を講じ役員及び従業員に周知
・同様表示の繰り返し禁止
[参考/引用]
※ 一般社団法人全国公正取引協議会連合会「措置命令/排除命令データベース」中のH(29)S48事件に関するページ(カタログにおける表示内容、及び措置命令の内容につき引用)
https://www.jfftc.org/ihanDB/ihan-sochi.html#wrapper
(エ) ごま油、食用油についての優良誤認表示(2019年5月9日、事件番号:R(元)ST1)(※)
対象事業者は、ウェブサイト又は容器包装において、供給しているごま油や食用油につき、あたかも当該商品の原料は国産のものであるかのように表示していましたが、実際には外国産のものが含まれていました。また、「カセイソーダ・修酸等の添加物は使用していない。無精製の原油です。」「添加物や化学薬品等(苛性ソーダ・修酸など)は使用していません。」などと記載し、あたかも、当該商品には添加物や化学薬品等が使用していないかのように表示をしていましたが、実際には、リン酸、水酸化ナトリウム(別名カセイソーダ)、クエン酸、白土が使用されていました。
そこで、鹿児島県は、対象事業者に対し、下記内容の措置命令を出しました。
・一般消費者に対する周知徹底
・再発防止策を講じ役員及び従業員に周知
・同様表示の繰り返し禁止
[参考/引用]
※ 一般社団法人全国公正取引協議会連合会「措置命令/排除命令データベース」中のR(元)ST1事件に関するページ(ウェブサイト・容器包装における表示内容、及び措置命令の内容につき引用)
https://www.jfftc.org/ihanDB/ihan-sochi.html#wrapper
おわりに
以上、食品添加物をめぐる規制の内容や規制違反の効果について概観してきました。法を跨いで詳細かつ複雑な規制が幅広く設けられているため、難しく感じられる部分もあるかもしれませんが、安心安全な食生活を確保するため、食品添加物の使用や表示等に関する理解を深めていただけたら幸いです。
ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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- 輸入食品の安全証明の充実~改正食品衛生法⑦~
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- 食品の表示・広告に関する法律
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