遺伝子組換え食品の表示制度について
Contents
- 1 1 はじめに
- 2 2 遺伝子組換え食品表示制度の対象となる食品
- 3 3 一般用加工食品※1の販売における遺伝子組換え食品表示
- 4 4 一般用生鮮食品※1の販売における遺伝子組換え食品表示
- 5 5 食品表示基準違反の効果(行政処分、刑事罰等)
- 6 6 おわりに
1 はじめに
(1)遺伝子組換えとは
遺伝子組換えとは、「生物の細胞から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新たな性質を持たせること」をいいます※1。
従来、異なる品種(例えば、「味の良い品種」と「乾燥に強い品種」)を掛け合わせて農作物の遺伝子の組み合わせを変える品種改良は行われていましたが、品種改良によって求める品種(例えば、「味が良く乾燥に強い品種」)を作るには、品種間の交配を繰り返し、安定した種として確立させる必要があるため、時間を要しました。
しかし、遺伝子組換えであれば、ある品種(例えば、「味の良い品種」)に特定の性質を有した遺伝子(例えば、「乾燥に強くなる遺伝子」)を組み込むことで、効率的に、求める品種(例えば、「味が良く乾燥に強い品種」)を作ることが可能となります。また、人工的に遺伝子を組み換えるため、種類を超えていろいろな生物を品種の開発の材料とすることができ、農作物などの改良の範囲を大幅に拡大することができます※2。
※1 以下、本項について、厚生労働省医薬食品局食品安全部「遺伝子組換え食品の安全性について」(平成24年3月)3頁 https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/dl/h22-00.pdf ※2 厚生労働省医薬食品局食品安全部「遺伝子組換え食品Q&A」(平成23年6月1日改訂第9版)のB-3 |
(2)遺伝子組換え食品の有用性と安全性
遺伝子組換えによって、例えば害虫抵抗性を有する作物を開発すれば、農薬を使用しなくても害虫の繁殖を抑制でき、収穫量の増加も見込め、食糧問題の解決に資するものと考えられます※1。除草剤耐性を有する作物では、雑草を取り除くために土を掘り返さなくてもよく、不耕起栽培を導入することによって環境保全にも貢献するものと考えられます。そして、このような作物の生産によって、農作物生産者は、生産コストや農薬への暴露を減らすことができ、消費者には減農薬食品を提供できるなどの利点があるでしょう。また、遺伝子組換え技術により、特定の成分含有量を高めた作物や、乾燥・塩害に強い作物の開発も行われています※2。
その一方で、遺伝子組換えにおいては、ある作物に本来有しない遺伝子を組み込むことになるので、組み込んだ遺伝子から作られるタンパク質が人体にとって有害なものであったり、当該遺伝子が間接的に作用することで、有害物質を生成したりすることなどが考えられます。そのため、遺伝子組換え食品については、その安全性を確保するため、厚生労働省による安全性審査を受けており、また、輸入される食品に、安全が確認されていない遺伝子組換え食品が含まれていないか、モニタリング検査も行われています※3、※4。
しかし、「遺伝子組換え食品に関する消費者意向調査の概要」によれば、遺伝子組換え食品に対して不安感を抱いている消費者が約4割にものぼります※5。そこで、遺伝子組換え食品については、消費者の自主的・合理的な食品選択を実現するための表示制度が設けられています。
安全性が確認された遺伝子組換え農産物とその加工食品については、平成13年4月以降表示規制が設けられていますが、令和5年4月に、表示制度の内容が改定され、任意表示の内容が厳格化されるに至っております(平成31年4月公布、令和5年4月1日施行)。
本記事では、改定された点も踏まえ、遺伝子組換え食品の表示制度について説明することとします。
※1 消費者庁ホームページ「遺伝子組換え食品」の「遺伝子組換え食品とは」(最終更新:令和5年3月30日) ※2 厚生労働省医薬品局食品安全部「遺伝子組換え食品の安全性について」(平成24年3月)5頁(コラム) https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/dl/h22-00.pdf ※3 ※2の9~14頁(「4 日本ではどのように安全性のチェックをしているのですか?」) ※4 令和5年7月4日現在、安全性審査の手続を経た遺伝子組換え食品及び添加物として、9作物(333品種)の食品及び80品目の添加物が公表されています(厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課「安全性審査の手続を経た旨の公表がなされた遺伝子組換え食品及び添加物一覧」)。 ※5 第1回遺伝子組換え表示制度に関する検討会「資料5 遺伝子組換え食品に関する消費者意向調査の概要」(平成29年4月26日)1頁 |
2 遺伝子組換え食品表示制度の対象となる食品
食品表示法4条1項に基づいて定められた「食品表示基準」では、「遺伝子組換え食品に関する事項」(加工食品)や「遺伝子組換え農産物に関する事項」(生鮮食品)の表示(義務表示・任意表示)に関する規定が置かれています(食品表示基準3条2項、18条2項)。
これらの規定が定める遺伝子組換え食品※1の表示制度が対象としている食品の概要は、次のとおりです(各々の詳細については、後述します)。
なお、以下で引用する「別表」は、食品表示基準のものをいいます。
① 対象農産物
組換えDNA技術を用いて生産された農産物の属する作目であって、別表第16が掲げる9作物(大豆(枝豆及び大豆もやしを含む。)、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしな)(食品表示基準2条1項14号、18条2項「対象農産物」の欄1項の一、別表第16)。
② 別表第17下欄の加工食品(33食品群)
①を原材料とし、加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたたんぱく質が残存する加工食品として別表第17下欄に掲げるもの(同3条2項「別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる加工食品」の欄1項、別表第17下欄)。
③ 別表第18に掲げる形質を有する特定遺伝子組換え農産物
別表第18上段の形質を有する特定遺伝子組換え農産物を含む同表の下欄に掲げる対象農産物(ステアドリン酸産生大豆、高リシンとうもろこし、EPA・DHA産生なたね)(同18条2項「対象農産物」の欄1項の二、別表第18上欄・下欄)
④ 別表第18の特定遺伝子組換え農産物加工食品
③を原材料とする加工食品(これを原材料とする加工食品を含む。)であって、別表第18中欄に掲げるもの(同3条2項「別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる加工食品」の欄2項、別表第18中欄)
以上のように、厚生労働省により安全性が確認された9つの遺伝子組換え農産物とその加工食品について、食品表示基準により表示ルールが定められています。それ以外の農産物(例えば、米や小麦など)及びその加工食品については、当該農産物に遺伝子が組み換えられたものが存在すると誤解させ、優良誤認を招く可能性もあるため、「遺伝子組換えでない」などの表示はできません※2。
また、添加物については、遺伝子組換え表示は義務付けられていません※2。
※1 遺伝子組換え食品とゲノム編集技術応用食品との関係については、消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「別添 ゲノム編集技術応用食品に関する事項」をご覧ください。ゲノム編集技術応用食品には、食品表示基準上の遺伝子組換え食品に該当するものと該当しないものがあり、前者については、食品表示基準に基づく遺伝子組換え食品表示制度に従い表示を行うことになります。 ※2 ※1「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-1)の5項。また、食品表示基準9条及び23条における表示禁止事項について、下記3(4)及び4(3)を参照。 ※3 ※2の(GM―3)。 |
以下では、食品表示基準の規定の順番に従い、加工食品についての表示のルールからみていきましょう。
3 一般用加工食品※1の販売における遺伝子組換え食品表示
食品関連事業者※2の皆様が、別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる一般用加工食品を販売※3する際には(設備を設けて飲食させる場合※4を除く。)、遺伝子組換え食品に関する事項を、以下のとおり表示しなければなりません(食品表示基準3条2項「別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる加工食品」の欄)※5。
※1 「加工食品」とは、製造又は加工された食品として、別表第1に掲げられるものをいいます(食品表示基準2条1項1号)。そのうち「一般用加工食品」とは、業務用加工食品(加工食品のうち、消費者に販売される形態となっているもの以外のもの。同2条1項3号)以外の容器包装に入れられた加工食品(同3条1項柱書本文)をいいます。主に業務用の食品として販売されるものであっても、消費者に販売される形態となっており、消費者に販売される可能性のあるものについては、一般用加工食品として表示する必要があります(消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「第1章 総則」の(総則-18))。 「容器包装」の考え方については、同「食品表示基準Q&A」の「第2章 加工食品」の(加工-2)を参照。 ※2 食品関連事業者以外の販売者が容器包装に入れられた加工食品を販売する際の表示義務、表示事項については食品表示基準15条が定めています(遺伝子組換え食品に関する事項については、同条8号)。「食品関連事業者以外の販売者」とは、反復継続性のない販売を行う者を指します。具体例については、※1「食品表示基準Q&A」の「第1章 総則」の(総則-10)を参照。 ※3 ここでの「販売」とは、有償での譲渡及び不特定又は多数の者に対する無償での譲渡を意味します(消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日付け消食表第139号、最終改正:令和5年11月7日)の(総則関係)の1(1))。 ※4 「設備を設けて飲食させる場合」については、※1「食品表示基準Q&A」の「第1章 総則」の(総則-4)を参照。 ※5 表示の方式等については、他の義務的表示事項と同様に、食品表示基準8条の適用があります。同8条の解釈については、※1「「食品表示基準Q&A」の「第2章 加工食品」の(加工-235~247)を参照。 |
(1)別表第17下欄の加工食品についての表示ルール
ア 別表第17下欄の加工食品(33食品群)とは
対象農産物(上記2①)を原材料とし、加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたたんぱく質が残存するものとして食品表示基準別表第17下欄が掲げる加工食品は、次のとおりです。
対象農産物 | 加工食品 |
大豆(枝豆及び大豆もやしを含む。) |
① 豆腐・油揚げ類 ② 凍り豆腐、おから及びゆば ③ 納豆 ④ 豆乳類 ⑤ みそ ⑥ 大豆煮豆 ⑦ 大豆缶詰及び大豆瓶詰 ⑧ きなこ ⑨ 大豆いり豆 ⑩ ①から⑨までに掲げるものを主な原材料とするもの(弁当、惣菜、みそ汁など)※1 ⑪ 調理用※2の大豆を主な原材料とするもの(五目豆(ひたし豆等)など)※3 ⑫ 大豆粉を主な原材料とするもの(大豆粉そのものや、大豆粉にほかの粉類を混合した製品など)※4 ⑬ 大豆たんぱくを主な原材料とするもの(ハンバーグ、ハムなどの食肉加工製品、かまぼこなどの魚肉ねり製品、プロテインパウダー、脱脂大豆を主な原材料とするものなど)※5 ⑭ 枝豆を主な原材料とするもの(弁当、惣菜、枝豆を使用したスナック菓子など)※6 ⑮ 大豆もやしを主な原材料とするもの(弁当、惣菜、漬物など)※7 |
とうもろこし |
⑯ コーンスナック菓子 ⑰ コーンスターチ ⑱ ポップコーン ⑲ 冷凍とうもろこし ⑳ とうもろこし缶詰及びとうもろこし瓶詰 ㉑ コーンフラワーを主な原材料とするもの(コーンフラワーそのもの、ミックス粉(ケーキミックスなど)、菓子など)※8 ㉒ コーングリッツを主な原材料とするもの(コーンフレークを除く。)(菓子、コーンミールを主な原材料とするもの(パン、ケーキ等)など)※9 ㉓ 調理用※2のとうもろこしを主な原材料とするもの(とうもろこしをカットし、盛り合わせ野菜として販売されるもの、「とうもろこしを乾燥して販売しているものなど)※10 ㉔ ⑯から⑳までに掲げるものを主な原材料とするもの(スナック菓子の詰め合わせ、ミックス粉(天ぷら粉など)、菓子(ビスケットなど)、弁当、惣菜など)※11 |
ばれいしょ (「じゃがいも」と表示可)※12 |
㉕ ポテトスナック菓子 ㉖ 乾燥ばれいしょ(乾燥マッシュポテトの素など)※13 ㉗ 冷凍ばれいしょ(冷凍フレンチフライドポテト、冷凍マッシュポテトなど)※14 ㉘ ばれいしょでん粉 ㉙ 調理用※2のばれいしょを主な原材料とするもの(ばれいしょを調理し、ポテトサラダとして販売されるもの、真空パックの焼きいもなど)※15 ㉚ ㉕から㉘までに掲げるものを主な原材料とするもの(乾燥マッシュポテトを使用したベビーフード、ばれいしょでん粉を使用した食品、弁当、惣菜など)※16 |
なたね |
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綿実 |
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アルファルファ | ㉛ アルファルファを主な原材料とするもの(スプラウト(もやし)、乾燥させて茶にしたものなど)※17 |
てん菜 | ㉜ 調理用※2のてん菜を主な原材料とするもの(てんぷら、チップスなど)※18 |
パパイヤ | ㉝ パパイヤを主な原材料とするもの(缶詰、漬物、乾燥パパイヤ、ジャム、ピューレ、ジュース、シャーベット、パパイヤ茶(葉を含む。)」など)※19 |
からしな |
この上欄の対象農産物又はこれを原材料とする加工食品が、下欄に掲げる加工食品の主な原材料(原材料※20の重量に占める割合の高い原材料の上位3位までのもので、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合が5%以上であるもの。である場合に、次のイの義務表示の対象となります(食品表示基準3条2項「別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる加工食品」の欄5項本文)。上欄の対象農産物又はこれを原材料とする加工食品が下欄に掲げる加工食品の主な原材料でない場合であっても、当該原材料について遺伝子組換えに関する表示を行うことは可能ですが、その場合には、主な原材料である場合と同様の表示を行う必要があります(同5項ただし書)。
なお、この別表第17については、新たな遺伝子組換え農産物の商品化や、遺伝子組換え農産物の流通及び原料としての使用の実態、組み換えられたDNA又はこれによって生じたたんぱく質の除去並びに分解の実態、検出方法の進歩等に関する知見、消費者の関心等を踏まえ、必要に応じて見直しを行うこととされています※21。これまでも以下のとおり義務表示の対象品目の追加が行われてきました。
- 平成13年度 ばれいしょ加工品6食品群
- 平成17年度 アルファルファを主な原材料とするもの
- 平成18年度 調理用のてん菜を主な原材料とするもの
- 平成23年度 パパイヤを主な原材料とするもの
※1 消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-19)。
※2 「調理用」とは、消費者向けに販売され、購入後、調理して食すようなものをいいます(※1の(GM-20)、(GM-28)、(GM-33))。
※3 ※1の(GM-20)。
※4 ※1の(GM-21)。
※5 ※1の(GM-22)。
※6 ※1の(GM-23)。
※7 ※1の(GM-24)。
※8 ※1の(GM-26)。
※9 ※1の(GM-27)。
※10 ※1の(GM-28)。
※11 ※1の(GM-29)。
※12 対象農産物の表示にあたっては、「ばれいしょ」を「じゃがいも」と表示するなど、同一性を容易に認識できる形で表記することも認められています(消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日付け消食表第139号、最終改正:令和5年11月7日)の(加工食品)の1(11)④のア)。
※13 ※1の(GM-30)。
※14 ※1の(GM-31)。
※15 ※1の(GM-33)。
※16 ※1の(GM-32)。
※17 ※1の(GM-34)。
※18 ※1の(GM-35)。てん菜を原材料として製造される砂糖については、てん菜由来のDNAの残存が確認されていないことから」、表示制度の対象には含まれていません。
※19 ※1の(GM-36)。
※20 製造時に水を添加した場合は、添加した水は原材料として換算しません(※1の(GM-13))。
※21 以下、※1の(GM-12)。
イ 義務表示
アの別表第17下欄の加工食品(下記(2)アの別表第18の特定遺伝子組換え農産物加工食品を除く。)については、遺伝子組換え食品に関する事項を、以下のとおり表示しなければなりません(食品表示基準3条2項「別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる加工食品」の欄1項一及び二)。
a. 分別生産流通管理※1が行われたことを確認した遺伝子組換え農産物である対象農産物を原材料とする場合
当該原材料名※2の次に括弧を付して「遺伝子組換えのものを分別」、「遺伝子組換え」等分別生産流通管理が行われた遺伝子組換え農産物である旨を表示
例)※3
「大豆(遺伝子組換え)」など
b. 生産、流通又は加工のいずれかの段階で遺伝子組換え農産物及び非遺伝子組換え農産物が分別されていない対象農産物を原材料とする場合
当該原材料名の次に括弧を付して「遺伝子組換え不分別」等遺伝子組換え農産物及び非遺伝子組換え農産物が分別されていない旨を表示
例)※4
「大豆(遺伝子組換え不分別)」など
なお、「不分別」という表現は消費者にとって分かりにくいとの指摘もあり、消費者の正しい理解を促す観点から、枠外に、「不分別」とは遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物を分別していないことを意味している旨の説明を付記することが推奨されています※5。
※1 分別生産流通管理とは、遺伝子組換え農産物及び非遺伝子組換え農産物を生産、流通及び加工の各段階で善良なる管理者の注意をもって分別管理すること(その旨が書類により証明されたものに限る。)をいいます(食品表示基準2条1項19号)。分別生産流通管理の方法については、産地や作目、加工食品の種類等により様々ですが、標準的なケースとして、バルク輸送される北米産の大豆及びデント種のとうもろこしについて、「指針」や「流通マニュアル」((財)食品産業センター、平成13年12月改訂)が作成されています。また、同様のマニュアルは、ばれいしょ加工品((財)食品産業センター、平成14年3月)、パパイヤ及びその加工品(消費者庁食品表示課、平成23年年11月)についても作成されており、これらのマニュアルによる分別生産流通管理と同等又は同等以上の信頼性及び追跡可能性のある方法で管理されることが必要であるとされています(「分別生産流通管理」について、消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-45~47)、「分別生産流通管理証明書」について、同(GM-49~51))。
バルク輸送される北米産の大豆及びデント種のとうもろこしについての指針として、消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日付け消食表第139号、最終改正:令和5年11月7日)の「別添 バルク輸送される北米産の非遺伝子組換え大豆及びデント種の非遺伝子組換えとうもろこしの分別生産流通管理の指針」。
上記のマニュアルについては、消費者庁のWEBサイトで入手することができます。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/guideline/
※2 原材料名として、対象農産物を明確に示す必要がありますが、例えば「大豆油」や「ばれいしょでん粉」の場合、当該対象農産物から製造されていることが原材料名から明らかに分かるので、原材料名について「大豆油(遺伝子組換え)」「ばれいしょでん粉(遺伝子組換えでない)」等と表示しても差し支えないとされています(※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-42))。
※3 消費者庁「知っていますか?遺伝子組換え表示制度」2頁の「表示方法」の上欄
※4 ※1の 「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-52)(大豆について1の①、とうもろこしについて2項の①、ばれいしょ(ばれいしょでん粉)の場合について3項の①ア及び①イ。なお、「ばれいしょでん粉」(遺伝子組換え不分別))のように、対象農産物以外の原材料名に括弧を付した表示方法の可否ついて、同(GM-42)を参照)、※3の2頁の「表示方法」の下欄。
※5 ※1の 「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-55)の2項、※3の2頁の「表示方法」の下欄、消費者庁「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」(平成31年4月25日)の3項。
ウ 任意表示
遺伝子組換え表示制度における任意表示について、以前は、分別生産流通管理をした対象農産物及びそれらを原材料とする加工食品であれば「遺伝子組換えでない」旨の表示が可能でしたが、平成31年4月25日公布の食品表示基準の一部を改正する内閣府令(平成31年内閣府令第24号)の改正により、令和5年4月からは、以下のとおり、分別生産流通管理をし、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる場合のみ、非遺伝子組換え農産物である旨の表示が可能となりました。
a. 遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことを確認した対象農産物を原料とする場合
当該原材料名を表示するか、又は、当該原材料名の次に括弧を付して、若しくは容器包装の見やすい箇所に当該原材料名に対応させて※1、遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨を表示することができます(食品表示基準3条2項「別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる加工食品」の欄1項の三前段)。
例)※2
・一括表示事項欄に表示する場合
「大豆」
「大豆(遺伝子組換えが混入しないよう分別)」
「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」
「大豆(IP管理品)」※3など
・一括表示事項欄外に表示する場合
また、一括表示事項欄外の容器包装の見やすい箇所に、原材料名と対応させて表示することも認められています。
「大豆は、遺伝子組換えのものと分けて管理したものを使用しています。」
「原料に使用している大豆は、遺伝子組換え大豆の混入を5%以下になるよう管理しています。」
「原材料に使用している大豆は、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を行っています。」など※4
なお、分別生産流通管理を行ったにもかかわらず、「意図せざる遺伝子組換え農産物の一定の混入」があった場合においても、遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことの確認が適切に行われている場合には、同様の表示ができます(食品表示基準3条2項「別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる加工食品」の欄3項)。
この「意図せざる遺伝子組換え農産物の一定の混入」については、大豆及びとうもろこしについては5%以下が目安とされています※5。混入率が5%以下であっても、分別生産流通管理を確認していない場合や、意図的に遺伝子組換え農産物を混入した場合は該当せず、「分別生産流通管理済み」という表示は不適正な表示となります。
このような場合には、生産・流通の過程を遡って証明書、伝票、分別管理の実際の取扱い等がチェックされ、不十分な場合には、その結果に応じて、食品表示法に基づき指示、命令、罰則等の措置が講じられることになります※6。
b. 遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨を表示しようとする場合において、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる対象農産物を原材料とする場合
遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨の表示に代えて、「遺伝子組換えでない」、「非遺伝子組換え」等遺伝子組換え農産物の混入がない非遺伝子組換え農産物である旨を示す文言を表示することができます(食品表示基準3条2項「別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる加工食品」の欄1項の三後段)。
例)※7
・一括表示事項欄に表示する場合
「大豆」
「大豆(遺伝子組換えでない)」
「大豆(非遺伝子組換え)」など
・一括表示事項欄外に表示する場合
「原材料に使用した大豆は、非遺伝子組換えのものです。」
ただし、このような表示をするためには、遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことを確認することが前提であり、原材料農産物に遺伝子組換え農産物が混入していないことが必要です。遺伝子組換え農産物の混入がないことの確認方法としては、第三者分析機関等による分析結果は有効ですが、任意表示の必須条件ではなく、以下の事項を証明する書類等を備えておくことなどが考えられます※8。
・ 生産地で遺伝子組換えのものとの混入がないことを確認した農産物を袋等又は専用コンテナに詰めて輸送し、製造者の下で初めて開封していること。
・ 国産品又は遺伝子組換え農産物の非商業栽培国で栽培されたものであり、生産、流通過程で、遺伝子組換え農産物の栽培国からの輸入品と混ざらないことを確認していること。
・ 生産、流通過程で、各事業者において遺伝子組換え農産物が含まれていないことが証明されており、遺伝子組換え農産物が含まれない旨が記載された分別生産流通管理証明書を用いて取引を行っていること。
そして、行政の行う科学的検証・社会的検証において、使用された原材料に遺伝子組換え農産物が含まれていることが確認された場合は、不適正な表示となり、食品表示法に基づき、指示、命令、罰則等の措置が講ぜられることになります※9。
※1 分別生産流通管理を行っていない対象農産物を副原料として使用している場合や、義務表示でない油や添加物等の原材料に分別生産流通管理を行っていない対象農産物を使用している場合の表示の対応の考え方について、消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM―44)。 ※2 ※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-37)、(GM―52)(大豆について1項の②、とうもろこしについて2項の②)、消費者庁「知っていますか?遺伝子組換え表示制度」3頁の「現行制度」の上欄、同4頁の「新たな任意表示制度に関するQ&A」のQ1。 また、記載例について、消費者庁「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」(平成31年4月25日)の5項の2。 ※3 「IP」とは、Identity Preservedの略で、「IPハンドリング」「IP管理」など日本語と組み合わせた表現であれば、「分別生産流通管理」の文言に代えて表示に使用することができます(※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-38))、※2の消費者庁「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」の9項)。 ※4 例えば、「遺伝子組換え大豆はほぼ含まれていません。」「大豆の分別管理により、できる限り遺伝子組換えの混入を減らしています。」等の表示は、読み手の主観によって左右され、消費者の正しい選択を妨げるおそれがあるので、適切ではありません(※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-37)の2項、※2の「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」の5項の2)。 ※5 ※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-48)、消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号、最終改正:令和5年11月7日)の(加工食品)の1(11)の②。 ※6 ※2の「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」の11項、12項。 ※7 ※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-39)、(GM―52)(大豆について1項の③、とうもろこしについて2項の③、ばれいしょ(ばれいしょでん粉)の場合について3項の②ア及び②イ)、※2の「知っていますか?遺伝子組換え表示制度」3頁の「現行制度」の下欄。 ※8 ※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-40)、※2の「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」の7項。分析を第三者機関で実施する場合の依頼先について、前者の(GM-41)、後者の8項を参照。 ※9 ※2の「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」の11項、12項。 |
(2)別表第18の特定遺伝子組換え農産物加工食品についての表示ルール
ア 別表第18の特定遺伝子組換え農産物加工食品とは
特定遺伝子組換え農産物とは、対象農産物のうち組換えDNA技術を用いて生産されたことにより、組成、栄養価等が通常の農産物と著しく異なるものをいいます(食品表示基準2条1項17号)。
遺伝子組換え食品表示の対象となる別表第18の特定遺伝子組換え農産物加工食品は、次表の形質を有する特定遺伝子組換え農産物を含む対象農産物を原材料とする加工食品(これを原材料とする加工食品を含む。)です※1。
形質 | 加工食品 | 対象農産物 |
ステアリドン酸産生※2 |
① 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄に掲げる形質を有しなくなったものを除く。) ② ①に掲げるものを主な原材料とするもの |
大豆 |
高リシン※3 |
③ とうもろこしを主な原材料とするもの(上欄に掲げる形質を有しなくなったものを除く。) ④ ③に掲げるものを主な原材料とするもの |
とうもろこし |
エイコサペンタエン酸(EPA)産生※4 |
⑤ なたねを主な原材料とするもの(上欄に掲げる形質を有しなくなったものを除く。) ⑥ ⑤に掲げるものを主な原材料とするもの |
なたね |
ドコサヘキサエン酸(DHA)産生※4 |
これらの遺伝子組換え農産物及び加工食品は、組み換えられたDNAやタンパク質が検出不可能であっても、ステアリドン酸等を分析することで品質上の差を把握することができるものです※5。
この下欄の対象農産物又はこれを原材料とする加工食品が、中欄に掲げる加工食品の主な原材料(原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位までのもので、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合が5%以上であるもの)である場合には、次のイの表示義務の対象となります(食品表示基準3条2項「別表第17の下欄及び第18の中欄に掲げる加工食品」の欄5項本文)。下欄の対象農産物又はこれを原材料とする加工食品が中欄に掲げる加工食品の主な原材料でない場合であっても、当該原材料について遺伝子組換えに関する表示を行うことは可能ですが、その場合には、主な原材料である場合と同様の表示を行う必要があります(同5項ただし書)。
※1 以前は、高オレイン酸遺伝子組換え大豆が特定遺伝子組換え農産物の義務表示の対象となっていましたが、遺伝子組換え技術を用いない高オレイン酸大豆が開発され商業栽培が開始されたことにより、令和4年3月に、特定遺伝子組換え農産物の対象品目から除かれました。ただし、高オレイン酸遺伝子組換え大豆及びこれを原材料とする加工食品であって、加工工程後も組み換えられたDNAやこれによって生じたたんぱく質が検出可能なものとして別表第17に掲げる加工食品については、「遺伝子組換えである」旨の表示の対象となります。また、高オレイン酸形質の大豆が、一般的に流通する大豆と脂肪酸の組成が異なることから、最終製品における栄養成分等が大きく異なる場合には、原材料の大豆が高オレイン酸形質である旨を消費者に対して情報提供することが望ましいとされています(消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM―10))。 ※2 ステアリドン酸産生大豆の表示対象について、※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM―56)の1項、2項。 ※3 高リシンとうもろこしの表示対象について、※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM―57)の1項、2項。 ※4 EPA、DHA産生なたねの表示対象について、※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM―58)の1項、2項。 ※5 ※1の「食品表示基準Q&A」の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-1)。 |
イ 義務表示
アの別表第18の特定遺伝子組換え農産物加工食品については、遺伝子組換え食品に関する事項を、以下のとおり表示しなければなりません(食品表示基準3条2項「別表第17の下欄及び別表第18の中欄に掲げる加工食品」の欄2項)。
a. 特定分別生産流通管理※1が行われたことを確認した特定遺伝子組換え農産物である対象農産物を原材料とする場合
当該原材料名の次に括弧を付して「○○○遺伝子組換えのものを分別」、「○○○遺伝子組換え」(○○○は、別表第18の上欄に掲げる形質)等特定分別生産流通管理が行われた特定遺伝子組換え農産物である旨を表示
例)※2
「大豆(ステアリドン酸産生遺伝子組換え)」など
b. 特定遺伝子組換え農産物及び非特定遺伝子組換え農産物が意図的に混合された対象農産物を原材料とする場合
当該原材料名の次に括弧を付して「○○○遺伝子組換えのものを混合」(○○○は、別表第18の上欄に掲げる形質)等特定遺伝子組換え農産物及び非特定遺伝子組換え農産物が意図的に混合された農産物である旨を表示
例)※3
「大豆(ステアリドン酸産生遺伝子組換えのものを混合)」など
この場合、「○○○遺伝子組換えのものを混合」等の文字の次に括弧を付して、当該特定遺伝子組換え農産物が同一の作目に属する対象農産物に占める重量の割合を表示することができます。
※1 特定分別生産流通管理とは、特定遺伝子組換え農産物及び非特定遺伝子組換え農産物を生産、流通及び加工の各段階で善良なる管理者の注意をもって分別管理すること(その旨が書類により証明されたものに限る。)をいいます(食品表示基準2条1項20号)。 ※2 ステアリドン酸産生大豆の表示例について、消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM―56)の3項の①及び②、EPA・DHA産生なたねの表示例について、同(GM-58)の3項。なお、「食用大豆油(ステアリドン酸産生遺伝子組換え)」のように、対象農産物以外の原材料名に括弧を付した表示方法の可否ついて、同(GM-42)を参照。 ※3 ステアリドン酸産生大豆の表示例について、※2の(GM―56)の3項の③。 |
(3)対象農産物を原材料とするその他の加工食品の表示について
対象農産物を原材料とする加工食品であって、別表第17及び別表第18に掲げる加工食品以外のものの対象農産物である原材料については、遺伝子組換えに関する表示は不要です(食品表示基準3条2項「別表第17の下欄及び別表18の中欄に掲げる加工食品」の欄6項)。このような加工食品は、最新の技術によっても組み換えられたDNAやこれによって生じたたんぱく質を検出することができないためです※1。
ただし、当該原材料について遺伝子組換えに関する表示を行うことは可能であり、その場合には、上記(1)及び(2)の規定に従って表示しなければなりません(同項ただし書)。この際、特に、「遺伝子組換えでない」旨を表示する場合には、使用する原材料について、分別生産流通管理の証明書のほか、例えば第三者分析機関による分析結果等、表示の根拠となる資料を有することが望ましいといえます※2。
遺伝子組換えに関する表示を要しない加工食品の例としては、次のものがあります※3。
表示が不要な加工食品 |
対象農産物 |
しょうゆ 大豆油 |
大豆 |
コーンフレーク 水飴 水飴使用食品(ジャム類など) 液糖 液糖使用食品(シロップなど) デキストリン デキストリン使用食品(スープ類など) コーン油 |
とうもろこし |
菜種油 |
菜種 からしな |
綿実油 | 綿実 |
砂糖(てん菜を主な原材料とするもの) | てん菜 |
※1 消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-2)の①。 ※2 消費者庁「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」(平成31年4月25日)の4項。 ※3 ※1の(GM-14)。 |
(4)表示禁止事項
上記(1)~(3)の表示にあたり、次に掲げる用語を一般用加工食品の容器包装に表示してはいけません(食品表示基準9条1項)。これは、食品関連事業者が販売する業務用加工食品の容器包装、送り状、納品等又は規格書等への表示が禁止される事項についても同様です(同14条)。
-
遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことを確認した対象農産物を原材料とする食品(当該食品を原材料とするものを含む。)以外の食品にあっては、当該食品の原材料である別表第17の上欄に掲げる作物に関し遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨(遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる対象農産物である旨を含む。)を示す用語(同9条1項4号)
例)
遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことを確認されていないにもかかわらず、「大豆(遺伝子組換えが混入しないように分別)」などと表示
-
組換えDNA技術を用いて生産された農産物の属する作目以外の作目を原材料とする食品にあっては、当該農産物に関し遺伝子組換えでないことを示す用語(同項5号)
例)※
(遺伝子組換え農産物が存在しない農産物について)「この〇〇は遺伝子組換えと関係ありません。」、「この〇〇は遺伝子組換えの対象となっておりません。」、「この〇〇は遺伝子組換えではありません。」、「遺伝子組換え〇〇を使用していません。」などと表示
※ 消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-60)を参照。なお、例えば「現在のところ、小麦や米については、遺伝子組換えのものは流通していません。」のように、一般に当該農産物については遺伝子組換えのものが存在していないということを表す表示を行うことは許容されます。
(5)遺伝子組換え食品に関する事項の表示を省略できる場合
容器包装の表示可能面積がおおむね30平方センチメートル以下である食品については、遺伝子組換え食品に関する事項の表示を省略することができます(食品表示基準3条3項「遺伝子組換え食品に関する事項」の欄)。
ただし、表示を省略することができる食品についても、表示が可能なものについては、できるだけ表示することが望ましいとされています※。
※ 消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日付け消食表第139号、最終改正:令和5年11月7日)の(加工食品)の2。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_24206_01.pdf
4 一般用生鮮食品※1の販売における遺伝子組換え食品表示
食品関連事業者※2の皆様が、別表第16の対象農産物及び別表第18に掲げる形質を有する特定遺伝子組換え農産物を販売※3する際には(設備を設けて飲食させる場合並びに容器包装に入れないで、かつ、生産した場所で販売する場合及び不特定若しくは多数の者に対して譲渡(販売を除く。)する場合※4を除く。)には、遺伝子組換え農産物に関する事項を、以下のとおり表示しなければなりません(食品表示基準18条2項「対象農産物」の欄)※5。
※1 「生鮮食品」とは、加工食品及び添加物以外の食品として、別表第2に掲げられるものをいいます(食品表示基準2条1項2号)。そのうち「一般用加工食品」とは、業務用生鮮食品(生鮮食品のうち、加工食品の原材料となるもの。同2条1項4号)を除く生鮮食品をいいます(同18条1項柱書本文)。 ※2 食品関連事業者以外の販売者が容器包装に入れられた加工食品を販売する際の表示義務、表示事項については食品表示基準29条が定めています(遺伝子組換え食品に関する事項については、3号)。「食品関連事業者以外の販売者」については、消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「第1章 総則」の(総則-10)を参照。 ※3 「販売」について、消費者庁次長「食品表示基準について」(平成27年3月30日付け消食表第139号、最終改正:令和5年11月7日)の(総則関係)の1(1)。 ※4 生鮮食品を「設備を設けて飲食させる場合」については、※2「食品表示基準Q&A」の「第3章 生鮮食品」の(生鮮-2)を、「生産した場所で販売する場合」については、同(生鮮-1)を参照。 ※5 表示の方式等については、他の義務的表示事項と同様に、食品表示基準22条の適用があります。 |
(1) 対象農産物についての表示のルール
ア 対象農産物とは
既出のとおり、対象農産物とは
- 大豆(枝豆及び大豆もやしを含む。)
- とうもろこし
- ばれいしょ
- なたね
- 綿実
- アルファルファ
- てん菜
- パパイヤ
- からしな
の9種類です(別表第16)。
イ 義務表示
対象農産物(下記(2)アの別表第18に掲げる形質を有する特定遺伝子組換え農産物以外)については、遺伝子組換え農産物に関する事項を、以下のとおり表示しなければなりません(食品表示基準18条2項「特定農産物」の欄1項の一のイ及びロ)。
a. 分別生産流通管理が行われたことを確認した遺伝子組換え農産物である対象農産物の場合
→ 当該対象農産物の名称の次に括弧を付して「遺伝子組換えのものを分別」、「遺伝子組換え」等分別生産流通管理が行われた遺伝子組換え農産物である旨を表示
例)※1
「とうもろこし(遺伝子組換え)」など
b. 生産又は流通のいずれかの段階で遺伝子組換え農産物及び非遺伝子組換え農産物が分別されていない対象農産物の場合
当該対象農産物の名称の次に括弧を付して「遺伝子組換え不分別」等遺伝子組換え農産物及び非遺伝子組換え農産物が分別されていない旨を表示
例)
「パパイヤ(遺伝子組換え不分別)」など※2
ウ 任意表示
一般用生鮮食品に関する任意表示の制度は、一般用加工食品と同様に次のように定められています(食品表示基準18条2項「対象農産物」の欄の1項一のハ)。
a. 遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことを確認した対象農産物の場合
当該対象農産物の名称を表示するか、又は、当該対象農産物の名称の次に括弧を付して、若しくは、容器包装の見やすい箇所に当該対象農産物の名称に対応させて、遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨を表示することができます。
例)※3
「大豆」
「大豆(分別生産流通管理済み)」など
なお、分別生産流通管理を行ったにもかかわらず、「意図せざる遺伝子組換え農産物の一定の混入」があった場合においても、遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことの確認が適切に行われている場合には、同様の表示ができます(食品表示基準18条2項「対象農産物」の欄2項)。「意図せざる遺伝子組換え農産物の一定の混入」については、上記3(1)ウのa.をご参照ください。
b. 遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨を表示しようとする場合において、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる対象農産物である場合
遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨の表示に代えて、「遺伝子組換えでない」、「非遺伝子組換え」等遺伝子組換え農産物の混入がない非遺伝子組換え農産物である旨を示す文言を表示することができます。
例)※4
「大豆(遺伝子組換えでない)」など
(2)別表第18に掲げる形質を有する特定遺伝子組換え農産物についての表示ルール
ア 別表第18に掲げる形質を有する特定遺伝子組換え農産物とは
既出のとおり、別表第18に掲げる形質を有する特定遺伝子組換え農産物とは、
- ステアドリン酸産生大豆
- 高リシンとうもろこし
- EPA、DHA産生なたね
をいいます(別表第18:上記3(2)ア参照)。
イ 義務表示
別表第18に掲げる形質を有する特定遺伝子組換え農産物を含む対象農産物については、遺伝子組換え農産物に関する事項を、以下のとおり表示しなければなりません(食品表示基準18条2項「対象農産物」の欄1項二のイ及びロ)。
a. 特定分別生産流通管理が行われたことを確認した特定遺伝子組換え農産物である対象農産物の場合
当該対象農産物の名称の次に括弧を付して「○○○遺伝子組換えのものを分別」、「○○○遺伝子組換え」(○○○は、別表第18の上欄に掲げる形質)等特定分別生産流通管理が行われた特定遺伝子組換え農産物である旨を表示
例)※5
「大豆(ステアリドン酸産生遺伝子組換え)」など
b.特定遺伝子組換え農産物及び非特定遺伝子組換え農産物が意図的に混合された対象農産物の場合
当該対象農産物の名称の次に括弧を付して「○○○遺伝子組換えのものを混合」(○○○は、別表第18の上欄に掲げる形質)等特定遺伝子組換え農産物及び非特定遺伝子組換え農産物が意図的に混合された農産物である旨を表示
例)※6
「大豆(ステアリドン酸産生遺伝子組換えのものを混合)」など
この場合において、「○○○遺伝子組換えのものを混合」等の文字の次に括弧を付して、当該特定遺伝子組換え農産物が同一の作目に属する対象農産物に占める重量の割合を表示することができます。
※1 東京都保健医療局健康安全部食品監視課「大切です!食品表示 食品表示法 食品表示基準手引編」(令和5年10月)の「5 遺伝子組換え食品に関する事項」の「● 生鮮食品【表示方法】(食品表示基準第18条第2項)」(49頁)の1(1)。 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/kyouzai/files/tebiki_tougouban.pdf ※2 ※1の1(2)。 ※3 ※1の1(3)のア。 ※4 ※1の1(3)のイ。 ※5 ※1の2(1)。 ※6 ※1の2(2)。 |
(3)表示禁止事項
上記(1)及び(2)の表示にあたり、次に掲げる用語を一般用生鮮食品の容器包装又は製品に近接した掲示その他の見やすい場所に表示してはいけません(食品表示基準23条1項)。これは、食品関連事業者が販売する業務用生鮮食品の容器包装、送り状、納品等又は規格書等への表示が禁止される事項についても同様です(同28条)。
- 遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことを確認した対象農産物以外の食品にあっては、当該作物である食品に関し遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われた旨(遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる対象農産物である旨を含む。)を示す用語(同23条1項4号)
例)
遺伝子組換え農産物が混入しないように分別生産流通管理が行われたことを確認されていないにもかかわらず、「大豆(遺伝子組換えが混入しないように分別)」などと表示
-
対象農産物以外の作物にあっては、当該農産物に関し遺伝子組換えでないことを示す用語(同項5号)。ただし、生産した場所で販売される食品又は不特定若しくは多数の者に対して譲渡(販売を除く。)される食品にあっては禁止されていません(同23条1項ただし書)。
例)※
(対象農産物以外の作物について)「この〇〇は遺伝子組換えと関係ありません。」、「この〇〇は遺伝子組換えの対象となっておりません。」、「この〇〇は遺伝子組換えではありません。」、「遺伝子組換え〇〇を使用していません。」などと表示
※ 消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(平成27年3月30日消食表第140号、最終改正:令和5年6月29日消食表第344号)の「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」の(GM-60)。
5 食品表示基準違反の効果(行政処分、刑事罰等)
(1)指示等(食品表示法6条関係)
食品表示基準に定められた表示事項が表示されていない食品の販売をし、又は販売の用に供する食品に関して表示事項を表示する際の遵守事項を遵守しない食品関連事業者があるときは、食品表示法6条に基づき、下記①・②の措置がとられ、これらの指示・命令がなされた場合は、その旨が公表されます(同法7条)。
① 表示事項を表示し、又は遵守事項を遵守すべき旨の指示(1項・3項)
② かかる指示を受けた者が、正当な理由がなくてその指示に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、その指示に係る措置をとるべき旨の命令(5項)
(2)立入検査等(食品表示法8条関係)
食品表示法は、販売の用に供する食品に関する表示の適正を確保するため必要があると認められるときは、食品関連事業者等若しくは食品関連事業者とその事業に関して関係のある事業者に対し、販売の用に供する食品に関する表示について必要な報告若しくは帳簿、書類その他の物件の提出を求め、又はその職員に、これらの者の事務所、事業所その他の場所に立ち入り、販売の用に供する食品に関する表示の状況若しくは食品、その原材料、帳簿、書類その他の物件を検査させ、従業員その他の関係者に質問させ、若しくは試験の用に供するのに必要な限度において、食品若しくはその原材料を無償で収去させることができるとしています。
(3)刑事罰(食品表示法20条・21条関係)
上記(1)②の命令に違反した食品関連事業者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(食品表示法20条)。法人(人格のない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、かかる違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して1億円以下の罰金刑、その人に対して100万円以下の罰金刑が科されます(同22条1項2号)。
また、以下に該当する者は、50万円以下の罰金刑に処されます(同21条)。
- 上記(2)の報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同条1項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者(1号)
- 上記(2)の収去を拒み、妨げ、又は忌避した者(2号)
そして、法人(人格のない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、かかる違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又はその人に対して、50万円以下の罰金刑が科されます(同22条1項3号)。
6 おわりに
以上、遺伝子組換え食品の表示制度を概観してきました。
上述のとおり、客観的に安全性は確認されているものの、遺伝子組換え食品に対する消費者の認識は必ずしもポジティブなものではありません。このような現状の下、遺伝子組換え農産物の意図しない混入がある場合にも「遺伝子組換えでない」等の表示を行うことは、消費者に、当該食品はより良い食品であるとの誤解を与えかねません。そのため、食品関連事業者の皆様におかれましては、新たなルールに則り、消費者への正しい情報伝達を行うことが求められています。
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