経口補水液について
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はじめに
食品の中には、「乳児の発育や、妊産婦、授乳婦、えん下困難者、病者などの健康の保持・回復などに適するという特別の用途について表示を行う食品」(※)があり、「特別用途食品」といいます(健康増進法43条1項、6項)。
※ 消費者庁「特別用途食品について」(最終閲覧:令和6年5月20日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/ |
特別用途食品には、次のような区分があります(※1)。
【特別用途食品の区分】(令和6年4月現在)
病者用食品 |
許可基準型 |
低たんぱく質食品 |
アレルゲン除去食品 |
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無乳糖食品 |
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糖尿病用組合せ食品 |
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腎臓病用組合せ食品 |
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経口補水液 |
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個別評価型 |
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妊産婦、授乳婦用粉乳 |
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乳児用調整乳 |
乳児用調製粉乳(乳児用粉ミルク) | |
乳児用調整液状乳(乳児用液体ミルク) |
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えん下困難者用食品 |
えん下困難者用食品(狭義) |
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とろみ調整用食品 |
特定保健用食品(※2)
※1 消費者庁「特別用途食品とは」 ※2 特定保健用食品は、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)が定める保険機能食品の一つですが、健康増進法に基づき消費者庁長官の許可を受けることで、特別の用途に適する旨の表示を行うことができるとされています。本記事で説明する「特別用途食品」には、特定保健用食品は含まれません。 |
特別用途食品全般については、別に「特別用途食品について」として記事にまとめていますので、ご参照ください。
本記事では、令和5年5月に、特別用途食品の新たな許可区分として設けられた「経口補水液」について、その内容を確認した後、いかなる基準を満たした場合に、経口補水液としての表示を行うことが認められるかについて説明していきます。
なお、本記事では、
・ 「健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令」(平成21年内閣府令第57号)を、「内閣府令」
・ 特別用途食品の表示許可等の運用基準を定めた消費者庁次長通知「特別用途食品の表示許可等について」(令和元年9月9日付け消食表第296号)を、「特別用途食品の表示許可等通知」
といいます。
「経口補水液」とは - 令和5年5月に許可区分が新設
経口補水液とは、「感染症胃腸炎による下痢・嘔吐に伴う脱水状態の際に、水と電解質の補給のために利用できる食品」をいいます(※1)。水・電解質・ブドウ糖の組成が、小腸で素早く吸収できるように決められており、脱水状態にある身体に、水や電解質を経口的に補うことができます(※2)。
※1、2 消費者庁「許可基準型病者用食品の経口補水液ってなに?」1頁 |
上記1「はじめに」の【特別用途食品の区分】のとおり、経口補水液は、特別用途食品に含まれ、中でも病者用食品に分類されます。病者用食品には、許可基準型と個別評価型があり、特別用途表示の許可にあたり、許可基準型については許可基準への適合性が審査され、個別評価型については、個別に、特定の疾病に適する食品であるか否かについて科学的な評価が行われます。
経口補水液については、従前、個別評価型病者用食品として許可されたものに限り、その旨の表示が許可されてきました。他方で、個別評価型病者用食品としての許可を得ずに、電解質組成を調整した清涼飲料水について、「経口補水液」の名称と共に、あたかも病者用食品であるかのように表示している事例が散見されていました。しかし、経口補水液は経口補水療法で用いられる病者用食品であることや、脱水でない状態で大量に摂取した場合にナトリウムの過剰摂取につながる可能性があることなどから(※)、令和5年5月19日、「許可基準型病者用食品」としての規格が定められ、「経口補水液」の区分が新設されました。
※ 消費者庁「『特別用途食品の表示許可等について』の一部改正(令和5年5月19日消食表第237号消費者庁次長通知)の概要①」(下記URL)の「1. 改正の趣旨」の上段 |
許可基準型病者用食品における「経口補水液」の区分で許容される特別用途表示の範囲は、「感染性胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態に適する旨」です(※1)。個別に疾患名等を記載する際には、個別評価型病者用食品として許可を得ることが必要です(※2)。熱中症に適した病者用食品として経口補水液を販売する場合、個別評価型食品としての許可を得なければなりません(※3)。
※1 「特別用途食品の表示許可等通知」の別添1(下記URL)の第2の3の「食品群別許可基準」の「(7)経口補水液」の表の「許容される特別用途表示の範囲」の欄 ※2 ※1の別添1の第2の3の「食品群別許可基準」の「(7)経口補水液」の表下の※2のただし書き参照 ※3 消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品たる経口補水液と誤解されるおそれのある表示について」(令和5年5月19日消食表第245号)(下記URL)の周知事項2 |
なお、「経口補水液」の許可基準の新設により、従来、特別用途食品の許可を得ずに「経口補水液」と表示している清涼飲料水については、許可基準型の表示許可を取得するなどの速やかな対応が求められています。許可手続きや包装資材の切替えに一定程度の期間が必要であること等を考慮し、令和7年5月末までに対応を終えるよう指導が行われていますので、ご注意ください(※)。
※ 消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品たる経口補水液と誤解されるおそれのある表示について」(令和5年5月19日消食表第245号)(下記URL)の周知事項6 |
特別用途表示の許可の申請手続
健康増進法43条1項は、「販売に供する食品につき、乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用その他内閣府令で定める特別の用途に適する旨の表示」(特別用途表示)をしようとする者は、消費者庁長官(※)の許可を受けなければならないと規定しています。
そのため、ある食品について、経口補水液として特別用途表示を行うことを考えている食品関連事業者の皆様におかれましては、消費者庁長官の許可を得ることが必要です。
そこで、許可基準型病者用食品における「経口補水液」として特別用途表示の許可を得るための申請手続について概説します。
※ 健康増進法69条3項により、同法による内閣総理大臣の権限は、消費者庁長官に委任されています。 |
(1) 申請書の提出
特別用途表示の許可を受けるには、次の事項を記載した申請書を、製品見本(※1)を添えた上で消費者庁長官に提出しなければなりません(健康増進法43条2項、内閣府令2条1項各号)。
申請書の記載事項 | 営業所の名称及び所在地 |
申請者の氏名、住所及び生年月日(法人の場合は、その名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名) | |
営業所の名称及び所在地 | 申請する営業所の名称及び所在地を記載し、併せて製造所の名称及び所在地を付記します。 |
商品名 | 同一食品でも、商品名が異なる場合、個別に許可の申請を行わなくてはなりません(※3)。 |
消費期限又は賞味期限 | 定められた方法により保存した場合において、品質が急速に劣化しやすい食品にあっては消費期限である旨、それ以外の食品にあっては賞味期限である旨を明記し、その設定方法についても記載します。 |
原材料及び添加物の配合割合 | 製造に使用する全ての原材料及び添加物並びにそれらの配合割合について、それぞれ配合割合の高いものから順に記載し、その配合割合によって製造される製品の重量を記載します。配合順と、原材料及び添加物の表示内容が異なる場合には、その理由を明記します。 商品名ではなく一般的な名称を使います(添加物については食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)に定める方法による)。 栄養強化の目的で使用した添加物についても記載し、食品衛生法(昭和22年法律第233号)で使用基準が定められている添加物については純度等も記載します。 |
製造方法 | 製造方法を具体的に記載します。特に加工工程においてビタミン類を添加する時期、添加後の加熱温度その他の製造条件を詳細に記載します。 |
許可を受けようとする理由 | 特別の用途に適する理由を具体的に記載します。 |
許可を受けようとする表示の内容 | 許可基準型病者用食品の「経口補水液」の区分において許容される特別用途表示の範囲は、「感染性胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態に適する旨」です。個別に疾病名等を記載する場合は、個別評価型病者用食品として申請しなければなりません。 |
栄養成分の量及び熱量 | 栄養成分の量及び熱量の表示は、食品表示基準に基づくとともに、試験検査機関の分析した結果を基に適切に表示しなければなりません。 |
摂取、調理又は保存の方法に関し、特に注意を必要とするものについては、その注意事項 | |
表示方法 | 消費期限又は賞味期限、製造所の製造地及び製造者の氏名又は名称等は、食品表示基準に基づく表示をします。 |
※1 製品見本については、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL)の4、(4)を参照。実際に商品として販売する際に行う原料の配合、製造方法等に従って製造し、市販される包装容器に収められたものを製品見本とします。製品見本は、試験検査のため、申請後、許可等申請書の写しを添付して、申請者が直接、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所又は消費者庁長官から登録を受けた試験機関に持ち込みます。 ※2 申請書の記載事項及び備考その他の留意事項については、※1の別添3の4、(1)の各項目を参照 ※3 許可基準型病者用食品における「経口補水液」の申請については、製品の同等性があると認められる複数の製品を1製品群として申請しても差し支えないとされています(『特別用途食品の表示許可等通知」の別添1(下記URL)の1の3の「食品群別許可基準」の「(7)経口補水液」の表下の※1の記載参照』 |
この申請書の様式は、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(特別用途食品の取扱い及び指導要領)(※1)の別紙様式1のとおりです。申請書は日本語で記載する必要があります(内閣府令2条3項)。
なお、令和5年11月の運用の改正により、特別用途食品に関する手続についても、e-Gov電子申請サービス(https://shinsei.e-gov.go.jp/)による受付が可能となっています(※2)。
※1 「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL) ※2 消費者庁次長「『特別用途食品の表示許可等について』の一部改正について」(令和5年11月13日消食表第672号) |
また、特別用途表示の許可の申請については、随時事前相談の機会が設けられていますので、申請にあたってご不明点等がありましたら、予め消費者庁食品表示課(※1)に照会することが望ましいでしょう(※2)。
※1 従前は「食品表示企画課」でしたが、消費者庁組織令の一部を改正する政令(令和6年政令第85号)により名称が「食品表示課」に変更されました(消費者庁次長「『特別用途食品の表示許可等について』の一部改正について」(令和6年1月1日消食表第220号))。 (別紙)「特別用途食品の表示許可等について(新旧対照表)」 ※2 消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品に関する質疑応答集について」(平成31年3月26日消食表第105号)の別添「特別用途食品に関する質疑応答集」(最終改正:令和6年4月1日 消食表第229号)(下記URL)の問34 |
(2)添付書類
特別用途表示の許可申請書の提出にあたっては、以下に掲げる書類の添付が求められます(内閣府令2条4項)(※1)。
添付書類 |
備考 |
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(申請者が法人の場合)定款の写し又は寄附行為の写し |
同一食品でも、商品名が異なる場合、個別に許可の申請を行わなくてはなりません(※3)。 |
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試験検査成績書 (区分ごとに分析項目や試験方法が定められています(※2)。) |
製造日が異なる製品又は別ロットの製品を3包装以上無作為に抽出して、国、地方公共団体等が設置した試験研究機関又は試験成績の信頼性を確保するために必要な施設、機器、職員等を有し、かつ適正に運営管理された外部試験検査機関が行います。それぞれの試験検査成績書には、試験検査機関名、試験者名及び責任者名の記載が必要です。 許可基準型病者用食品については、下記4(2)の「食品群別許可基準」の規格欄の各項目に適合することを証明するものであることが必要です。 |
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表示見本 |
販売に際しての容器包装又は添付文書の表示を図示したものです。一辺の長さ等、表示の実寸が分かる情報を記載します(※3)。複数個入りの商品における外箱も含め、特別用途食品として小売される容器包装の全ての表示見本が必要です(※4)。 |
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当該食品が許可基準又は要件に適合することを客観的に証明する資料 |
許可基準型病者用食品については、下記4(1)の基本的許可基準及び概括的許可基準の各項目に適合することを客観的に証明する資料をいいます。この基本的許可基準及び概括的許可基準の各項目に適合することを証明する資料とは、次に掲げる事項を記載した書類をいいます。 ・ 製造者が設定した許可申請食品の製品規格及びそれを確認するための試験方法 ・ 許可申請食品の製造開始時から現在に至るまでの経緯及びその販売実績(販売実績については、特に販売期間や製造量の定めはありませんが(※5)、販売実績がない製品については、許可申請食品の対象となりません。ただし、販売実績のある製品の風味を変更した製品については、製品の同一性を失わないことを証明でき、かつ許可申請食品の安全性を担保するための資料が提出された場合は、この限りではありません) ・ 施設等における使用成績が報告されている場合は当該報告書類(使用成績に関する書類とは、許可申請食品を日常的かつ継続的に摂取することが可能であることを示す病院等の医療機関における使用実績、患者、医師、管理栄養士等を対象としたアンケート調査結果等の資料をいいます) また、下記4(2)の食品群別許可基準の適用にあたり、同種の食品が存在しない場合は、通常の同種の食品の特定成分の含量との比較規定の適用はなく、許可申請食品が病者用食品として許可するにふさわしいものであるかどうかを個別に判断することから(※6)、当該食品の特性や使用目的及び喫食形態等から、これまで食していたものの代替となるものであることを医学的、栄養学的見地から見て証明できる資料を要します(※7)。 |
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当該食品の自家試験実施結果 |
製造者が設定した許可申請食品の製品規格について、その製造者が自らの検査施設で試験をした成績書です。自らの検査施設を有しない場合は外部試験検査機関に依頼して試験を実施してもかまいません。 |
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製造所の構造設備の概要及び品質管理の方法についての説明書 |
製造所の構造設備の概要の説明書として(※8)、製造所所在地を示す地図、製造所内生産設備の配置図(※9)、製造所における申請食品の製造方法、不良品の流通を防止するための品質管理体制等の資料などが考えられます。 品質管理の方法の説明書として、製造者が設定した許可申請食品の規格(許可基準、製品規格、栄養成分表示等)に適合することを確認するための試験方法と試験結果が記載されていることが必要です。 許可基準等を満たすことを確認するため、少なくとも3年に一度、定期的に外部試験検査機関による試験を実施すること等も盛り込みます。 |
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その他当該食品に関する一般的説明資料 |
消費期限又は賞味期限の設定に関する資料や、表示見本に記載されている表示に関する根拠資料(虚偽誇大の表示に該当しないことが確認できる資料等)、許可申請食品に関するウェブサイト情報、パンフレット、広告等が考えられます(※10)。 |
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(申請者が製造者と異なる場合)当該食品の製造委託契約書の写し |
※1 申請書の添付書類及び備考その他の留意事項については、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添2(下記URL)の2の各項目を参照 ※2 区分ごとの分析項目については※1の別添2の別紙1、試験方法については同別添2の別紙2乃至5参照 ※3 「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL)の4、(2)、ウ ※4 消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品に関する質疑応答集について」(平成31年3月26日消食表第105号)の別添「特別用途食品に関する質疑応答集」(最終改正:令和6年4月1日 消食表第229号)(下記URL)の問21 ※5 ※4の「特別用途食品に関する質疑応答集」の問22 ※6 「特別用途食品の表示許可等通知」の別添1(下記URL)の第2、3、(2) ※7 ※1の別添2の2、(4)、イ ※8 ※4の「特別用途食品に関する質疑応答集」の問23 ※9 令和5年5月の運用の見直しにより、製造所在地を示す地図及び製造所生産設備の配置図については、製造所の営業許可等を添付する場合は省略できることになりました(消費者庁「『特別用途食品の表示許可等について』の一部改正(令和5年5月19日消食表第237号消費者庁次長通知)の概要②」(下記URL)の2.(2)⑤)。 ※10 ※4の「特別用途食品に関する質疑応答集」の問24 |
なお、申請食品の試験検査成績書等における栄養成分等の分析値は、成分ごとに定められた表示値からの規定範囲内(※1)で、かつ、各申請区分に定められている許可基準の範囲内である必要があります(※2)。
※1 分析値の表示値からの規定範囲について、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添1(下記URL)の第6 ※2 消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品に関する質疑応答集について」(平成31年3月26日消食表第105号)の別添「特別用途食品に関する質疑応答集」(最終改正:令和6年4月1日 消食表第229号)(下記URL)の問16 |
(3)手数料
表示許可の申請にあたっては、健康増進法施行令(以下、「施行令」といいます。)7条各号に定めるところに従い、手数料を納付しなければなりません(健康増進法43条4項)(※1)。
国に納める手数料(施行令7条1号) |
9800円(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律6条1項の規定により同項に規定する電子情報処理組織を使用する場合にあっては、7600円) |
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国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所又は登録試験機関(※2)が行う許可試験の手数料(施行令7条2号) |
80万円を超えない範囲内において、内閣総理大臣が特別の用途を勘案して定める区分ごとに法43条1項の許可を行うについて必要な試験の項目として内閣総理大臣が定める項目の実費を勘案して内閣総理大臣が定める額(※3)、登録試験機関に納める手数料については、当該登録試験機関が内閣総理代診の許可を受けて定める額 |
※1 納付の方法については、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL)の4、(3)、イ及び同別添3の4、(4)、イ参照 ※2 消費者庁「登録試験機関制度について」(下記URL)の「登録試験機関一覧(令和6年5月13日現在)」参照(最終閲覧:令和6年5月20日) ※3 「健康増進法施行令第7条第2号の規定に基づき内閣総理大臣が定める区分、項目及び額」(平成25年9月18日消費者庁告示第6号、最終改正:令和5年9月14日消費者庁告示第5号) |
以上の申請を踏まえて、消費者庁内での審査、厚生労働省医薬・生活衛生局への意見照会、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所又は登録試験機関における許可試験という一連の許可手続が実施されることになります。そのため、特別用途表示の許可手続には、申請書に不備がなくとも、少なくとも半年程度かかるとされています(※)。
※ 消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品に関する質疑応答集について」(平成31年3月26日消食表第105号)の別添「特別用途食品に関する質疑応答集」(最終改正:令和6年4月1日 消食表第229号)(下記URL)の問30 |
許可基準
許可基準型病者用食品としての特別用途表示の許可を受けるためには、許可基準型病者用食品に共通する「基本的許可基準」及び「概括的許可基準」(下記(1))に加えて、食品群ごとに設けられた「食品群別許可基準」(下記(2))を満たす必要があります。
(1)許可基準型病者用食品の食品群に共通の許可基準
基本的許可基準(※1) |
・ 食品の栄養組成を加減し、又は特殊な加工を施したものであって、その食品が医学的、栄養学的見地からみて特別の栄養的配慮を必要とする病者に適当な食品であることが認められるものであること。 ・ 特別の用途を示す表示が、病者用の食品としてふさわしいものであること。 ・ 適正な試験方法によって成分又は特性が確認されるものであること。 |
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概括的許可基準(※2) |
・ 指示された使用方法を遵守したときに効果的であり、その使用方法が簡明であること。 ・ 品質が通常の食品に劣らないものであること。 ・ 利用対象者が相当程度に広範囲のものであるか、又は病者にとって特に必要とされるものであること。 ・ その食品を使用しなければ、食事療法の実施及びその継続が困難なものであること。なお、この場合の「食事療法」とは、疾病の治療並びに再発及び悪化の防止を目的として、医師の指示により医学的及び栄養学的知見に基づき、栄養素等を管理した食事を摂取することをいいます。 |
※1 『特別用途食品の表示許可等通知」の別添1(下記URL)の第2、1 ※2 ※1の別添1の第2、2 |
(2)経口補水液についての食品群別許可基準(※)
規格 | |||||||||
・ 感染症胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態の際に、水・電解質の補給のため利用できる製品であること。 ・ 次の栄養成分等の基準に適合したものであること。
なお、粉末状等の製品にあっては、その指示どおりに調製した後の状態でこれらの規格基準を満たすものであれば足ります。 |
※ 『特別用途食品の表示許可等通知」の別添1(下記URL)の3の「食品群別許可基準」の「(7)経口補水液」の表の「規格」欄 |
特別用途表示の表示事項
上記4の許可基準を満たし、消費者庁長官の許可(※)を受けた場合、当該食品について特別用途表示を行うことができます。その際、当該食品の容器包装又は添付文書に、健康増進法43条6項により内閣府令8条1項各号が定める表示事項(下記(1))のほか、食品群ごとに定められた必要的表示事項(下記(2))を表示しなければなりません。
※ 消費者庁長官から、申請者に、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL)の別紙様式3の表示許可書が交付されます(同別添3の5、(1))。 |
特別用途食品について、表示しなければならない事項を表示しなかった場合、許可の取消し(下記10、(2))の対象となり、取消し後も特別の用途の表示をした者は、健康増進法43条1項の規定に違反した者として、罰金に処せられます(下記10、(4))。
また、食品表示基準3条の規定に基づく表示事項を表示せずに販売した場合には、食品表示法(平成25年法律第70号)6条1項に基づく指示の対象となり、正当な理由がなく指示に従わなかった場合は同条5項に基づく命令の対象となります。この命令に違反した者は、同法20条により懲役又は罰金(法人について両罰規定あり。)に処せられます。
なお、ここでいう表示とは、食品の小売用容器包装に記載された文字、図形等をいい、食品を販売する際の包装紙又は袋、食品の内部包装、広告、パンフレット等に記載された文字、図形等は表示と解されません。ただし、容器包装を透かして容易に見ることができる内部に記載された文字、図形等、食品に添付される説明書等に記載された文字、図形等は表示とみなされます(※)。
※ 「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL)の別添3の3、(1) |
(1)内閣府令8条1項各号が定める表示事項(※1、2)
表示項目 |
備考 |
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商品名 |
表示の許可を受けた商品名どおりに表示します。 |
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消費期限又は賞味期限 |
食品表示基準に基づき表示します。 |
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保存の方法(常温で保存する旨の表示を除く) |
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製造所所在地 |
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製造者の氏名(法人の場合は、その名称) |
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許可証票 |
内閣府令別記様式第2号によります(下記欄外参照)。 |
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許可を受けた表示の内容 |
許可申請書中の「許可を受けようとする表示の内容」の項に記載した内容を表示します。許可の条件として示された事項がある場合はこれに従います。表示項目名を「許可表示」と簡略して記載できます。 |
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栄養成分量、熱量並びに原材料名及び添加物の表示 |
許可申請書中の「許可を受けようとする表示の内容」の項に記載した内容を表示します。許可の条件として示された事項がある場合はこれに従います。表示項目名を「許可表示」と簡略して記載できます。 |
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栄養成分量、熱量並びに原材料名及び添加物の表示 |
食品表示基準に基づき表示します(栄養成分量、熱量については、外部試験検査機関により分析した結果に基づくことも必要です)。同基準別表第9に定めのない成分については、栄養成分表示欄の枠外に記載します。 |
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摂取、調理又は保存の方法に関し、特に必要とするものについては、その注意事項 |
許可申請書に記載した内容を表示します。表示項目名を「摂取、調理又は保存方法の注意」と簡略して記載できます。 |
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(許可を受けた者が、製造者以外の者であるとき)許可を受けた者の営業所の所在地及び氏名(法人の場合は、その名称) |
住所の表示は、住居表示に関する法律(昭和37年法律第119号)に基づく住居表示に従って住居番号まで記載します。申請者が輸入業者である場合にあっては、輸入業者である旨を記載するとともに、申請者の住所及び氏名又は名称を記載します。 表示項目名を、「販売者」又は「許可を受けた者」と簡略して記載できます。 |
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その他 |
食品衛生法や、食品表示基準その他の関係法令を遵守します。 |
特別用途食品の「許可証票」とは、右のマークのことをいいます。 経口補水液を含む病者用食品については、このマークの「区分」の欄に、「病者用食品」と記載されます。 |
(健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令の別記様式第2号) |
※1 表示項目及び備考その他の留意事項については、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL)の3、(2)及び(3)参照 ※2 表示事項は、一括表示するなど読みやすいように表示するのが基本ですが、商品名、特別用途食品である旨及び許可証票の表示は、一括表示以外の見やすい箇所に記載することができます(※1の別添3の3、(3)、エ、(イ))。 |
(2)経口補水液について定められた必要的表示事項(※)
・ 「経口補水液」を意味する文字 ・ 医師から感染性胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態として指示された場合に限り用いる旨 ・ 食事療法の素材として適するものであって、多く摂取することによって疾病が治癒するというものではない旨 ・ 摂取時の使用上の注意等に関する情報 ・ 医師、管理栄養士等の相談、指導を得て使用することが適当である旨 ・ 医師からナトリウム又はカリウム摂取量の制限を指示された場合にあっては、必ず医師の相談、指導を得て使用する旨 ・ 1包装当たり及び100ml当たりのナトリウム(食塩相当量に換算したもの)、カリウム、塩素、ブドウ糖、製品のモル濃度比(ナトリウム:ブドウ糖)及び浸透圧 |
※ 『特別用途食品の表示許可等通知」の別添1(下記URL)の3の「食品群別許可基準」の「(7)経口補水液」の表の「必要的表示事項」欄 |
許可品目の実例
これまで、経口補水液(許可基準型病者用食品)として特別用途表示を許可された品目には次のようなものがあり、それぞれ右欄の表示内容について許可がなされています(※)。
商品名 |
許可を受けた表示内容 |
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明治アクアサポート |
明治アクアサポートは、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐を原因とした脱水状態時に用いることが適しています。 |
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スムーズイオン経口補水液 |
スムーズイオン経口補水液は、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態における水・電解質の補給に適した食事療法(経口補水療法)に用いる病者用食品です。 |
※ 消費者庁「特別用途食品について」(下記URL)の許可品目一覧の「特別用途食品表示許可品目一覧 」の【病者用食品(許可基準型) 経口補水液】の表(通し番号1・4) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/ |
許可後の取扱い
1)食品使用者への適切な情報提供(※)
特別用途表示の許可を受けた者は、容器包装の表示、申請食品に関するウェブサイト情報、パンフレット、広告等により、使用者への適切な情報提供を行うことが求められます。
特に「経口補水液」を含む「病者用食品」については、使用者が当該製品を用いた食事療法の基本的知識を得ることができるよう、適切な情報提供を行うことが求められています。
また、医師、管理栄養士等が特別用途食品に関する適切な栄養指導を行えるよう、必要に応じて実践的な教材、栄養食事指導ツール等を作成することが望ましいとされています。
※ 本項について、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL)の10を参照 |
(2) 品質管理の定期的な報告(※1)
特別用途表示の許可を受けた者は、毎年6月に、許可基準を満たしていることが分かる資料を添付し、品質管理等報告書(「特別用途食品の表示許可等通知」の別紙3(特別用途食品の取扱い及び指導要領)の参考様式3)を消費者庁次長に提出することとされています。
この許可基準を満たしていることが分かる資料について、令和5年5月の運用の改正により、外部試験機関における試験検査は少なくとも3年に1回となり、その他の年は、自家試験結果を提出してもよいことになりました(※2)。
※1 本項について、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL)の8を参照 ※2 消費者庁「『特別用途食品の表示許可等について』の一部改正(令和5年5月19日消食表第237号消費者庁次長通知)の概要②」(下記URL)の2.(2)③ |
(3) 変更事項等の届出(※1)
許可を受けた食品について、次のような変更事項があった場合には、当該変更に関する資料を添付して、消費者庁次長に届出書(「特別用途食品の表示許可等通知」の別紙3(特別用途食品の取扱い及び指導要領)の別紙様式5)を提出しなければなりません。なお、容器包装に表示する義務表示事項に変更がある場合は、表示見本の添付も必要です。
・ 個人、法人の同一性が確保されている範囲内での申請者の氏名又は住所(法人にあっては、その名称、主たる事務所の所在地又は代表者の氏名)
・ 許可を受けた者の変更がない場合における製造所所在地又は製造者氏名
・ 消費期限又は賞味期限
・ 製品の同一性を失わない程度(※2)の原材料及び添加物の配合割合、製造方法、品質管理の方法又は栄養成分表示
・ 内容量、保存の方法
・ 摂取上の注意事項又は摂取、調理若しくは保存の方法に関し、特に注意を必要とするものについての注意事項の変更
※1 本項について、「特別用途食品の表示許可等通知」の別添3(下記URL)の6、(1) ※2 「同一性を失わない程度の変更」について、消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品に関する質疑応答集について」(平成31年3月26日消食表第105号)の別添「特別用途食品に関する質疑応答集」(最終改正:令和6年4月1日 消食表第229号)(下記URL)の問40 |
以上に対し、令和5年5月の運用の改正では、義務表示事項以外のもの(文字色、文字サイズ、背景色又は図案の変更・任意の表示事項やキャッチコピーの追加削除等)については、届出不要と整理し、変更届出の範囲を明確化しました(※)。
※ 消費者庁「『特別用途食品の表示許可等について』の一部改正(令和5年5月19日消食表第237号消費者庁次長通知)の概要②」(下記URL)の2.(2)④ 消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品に関する質疑応答集について」(平成31年3月26日消食表第105号)の別添「特別用途食品に関する質疑応答集」(最終改正:令和6年4月1日 消食表第229号)(下記URL)の問41 |
許可を受けた者が死亡又は許可等を受けた法人が解散したときや、許可を受けた者が当該商品の販売、製造を中止したときは、 失効の届出をします。
健康増進法65条1項による誇大表示の禁止、その他の法規制
健康増進法65条1項は、何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(※1)(健康保持増進効果等)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない、と規定しています(※2)。
したがって、特別用途食品について、許可表示の範囲を超えて特別の用途に適する旨の表示を行うことは健康増進法43条1項の規定に違反しますし、その表示が著しく事実に相違し、又は著しく人を誤認させる表示である場合には、同法65条1項に違反することになります(※3)。
※1 健康増進法65条1項における内閣府令で定める事項として、内閣府令19条は、含有する食品または成分の量(1号)、特定の食品又は成分を含有する旨(2号)、熱量(3号)、人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことに資する効果(4号)を挙げています。 ※2 健康増進法65条1項の表示規制の対象となる「広告その他の表示」や「健康増進効果」、「誇大表示」の解釈等については、次のものが参考になります。 ・ 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(平成25 年12月24日、最終改正:令和4年 12 月5日) ・ 消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品に関する質疑応答集について」(平成31年3月26日消食表第105号)の別添「特別用途食品に関する質疑応答集」(最終改正:令和6年4月1日 消食表第229号)(下記URL)の問47乃至56 ※3 ※2の「特別用途食品に関する質疑応答集」の問48 |
また、医薬品類似の効果・効能の記載をすることは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)(昭和35年法律第145号)違反のおそれがあります。その他、食品の表示や広告等を規制する法律として、食品表示法、食品衛生法、日本農林規格等に関する法律(JAS法)(昭和25年法律第175号)、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)、不正競争防止法(平成5年法律第47号)、特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)等がありますので、関係法令についても注意する必要があります。
経口補水液の販売における注意点
既述(上記2、第2段落)のとおり、従前、電解質組成を調整した清涼飲料水について、特別用途食品の許可を得ているものと消費者に誤認を与え、また、大量摂取による健康への悪影響の懸念されていました。
そこで、消費者庁は、「特別用途食品たる経口補水液と誤認されるおそれのある表示について」(令和5年5月19日消食表第245号)(※)という通知を発出し、電解質組成を調整した清涼飲料水を販売する食品関連事業者に向け、
・ 電解質組成を調整した清涼飲料水を店頭POP、ポスター、説明会等で「熱中症対策」として使用する場合には、「「熱中症対策」表示ガイドラインの改訂について」(平成28年6月16日厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課事務連絡)を参考にすること
・ 販売店舗等において、特別用途食品としての許可を受けたものを清涼飲料水と区別せず同一の棚に陳列して販売する等により、消費者に対して、当該清涼飲料水が特別用途食品としての許可を受けたものと誤認されるような広告その他の表示をした場合、健康増進法第65条1項の規定(上記8)に違反するおそれがあるため、区別して陳列すること
・ 経口補水液は病者用食品であることから、販売店等において、消費者が医師、管理栄養士等への相談、指導を得られる体制を構築することが望ましいこと
などの事項の周知を図っています。
※ 消費者庁食品表示企画課長「特別用途食品たる経口補水液と誤認されるおそれのある表示について」(令和5年5月19日消食表第245号) |
この通知を受け、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会は、次のように経口補水液の販売時における陳列・掲示方法を整理し、会員企業に周知しています(※)。
⇒ 経口補水液と清涼飲料水を誤認させないために、以下のいずれかの方法で陳列。販売を行う。
・ 棚板単位で区別した陳列を行う。
・ 同一棚板で混在した陳列をする場合、区切りを用いて経口補水液の範囲を明確にする。
・ 同一棚板で混在した陳列をする場合、掲示物、プライスPOP等を用いて経口補水液の範囲を明確にする。
※ 消費者庁食品表示企画課「特別用途食品『経口補水液』販売時における陳列・掲示について」(令和5年11月20日、事務連絡)の別添「「特別用途食品『経口補水液』販売時における陳列・掲示について」(令和5年11月15日、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会会長 池野隆光) |
このように、同協会の会員企業はもちろん、経口補水液や電解質組成を調整した清涼飲料水を販売する食品関連事業者の皆様は、これらが誤認されることのないよう陳列・販売方法に注意しなければなりません。
健康増進法の違反行為等に対する措置(行政処分、罰則等)
(1) 食品の検査及び収去
消費者庁長官又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該職員に特別用途食品の製造施設、貯蔵施設又は販売施設に立ち入らせ、販売の用に供する当該特別用途食品を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において当該特別用途食品を収去させることができます(健康増進法61条1項)。
この検査や収去の規定は、特別用途食品以外の、食品として販売に供する物であって健康保持増進効果等についての表示がされたものに対しても準用されています(同法66条3項)。
(2) 特別用途表示の許可の取消し
特別用途表示の許可を受けた者が、次のいずれかに該当する場合、消費者庁長官により、当該許可を取り消される可能性があります(健康増進法62条)。
・ 健康増進法43条6項の規定に違反したとき(特別用途食品につき、必要的表示事項を表示しなかったとき)(62条1号)
・ 許可に係る食品につき虚偽の表示をしたとき(同条2号)
・ 許可を受けた日以降における科学的知見の充実により当該許可に係る食品について当該許可に係る特別用途表示をすることが適切でないことが判明するに至ったとき(同条3号)
(3) 勧告・命令
上記8の健康増進法65条の誇大広告の禁止に違反した表示が行われ、国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときは、消費者庁長官又は都道府県知事より、当該表示を行った者に対して、当該表示に関し必要な措置をとるべき旨の勧告が出される可能性があります(健康増進法66条1項)。
そして、勧告を受けた者が、正当な理由がなく当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告に係る措置をとるべき旨命じられる場合があります(同条2項)。
(4) 刑事罰
同法43条1項の規定に違反し、消費者庁長官の許可を受けることなく特別用途表示を行った者は、50万円以下の罰金に処されます(健康増進法72条2号)。
また、同法61条1項に基づく検査や収去(上記(1))を拒み、妨げ、又は忌避した者は、30万円以下の罰金に処されます(同法74条2号)。
そして、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、これらの違反行為を行った場合には、行為者を罰するほか、当該法人又は人に対しても同様の罰金刑が科されます(同法75条)。
さらに、同法66条2項に基づく命令(上記(3))に違反した者は、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(同法71条)。
おわりに
以上、経口補水液に係る特別用途表示制度について概観してきました。
経口補水液は、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態に適した病者用食品として販売する場合は新設された許可基準型病者用食品として、それ以外の熱中症等に適した病者用食品として販売する場合は個別評価型病者用食品としての許可が必要となります。この区分ごとに、特別用途表示の申請における添付書類や審査の流れ等が異なりますので、申請をご検討されている食品関連事業者の皆様は、事前に適切な確認を行うとともに、わからない点がある場合には、消費者庁食品表示課への照会等を活用していただくことをお勧めします。
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